今日はチーズケーキ。

学校帰り。信号待ち。小さな十字路。

ふと右をみたら、数十メートル先にシュークリームの大きな看板があった。

手描き感のあるかわいい絵。

信号が青になって横断歩道を渡りきるまえに右に曲がった。

小さなかわいいスイーツ屋さんだった。新しい感じはなく、古めかしい雰囲気もなく、その場所に馴染んだお店だった。

普段なら気になったお店でも、人が誰もいないと、入るのを躊躇する。

話しかけられるたらめんどくさいなって思っちゃって。

でも今日は、吸い寄せられるように店に入っていった。

透明な押すタイプのドアを開けると、「いらっしゃいませ」と人間ではない声がした。

その声に慌てて店主らしき人が出てくる。30代後半から40代くらいの男性だった。

おしゃれな威圧感も、伝統的な礼儀正しさもなく、入りやすいお店だったから、5、60代の小さくて優しげなおばあちゃんが出てくることを勝手に想像してた。

看板のシュークリームを買おうと思っていたけど、360円。いや、390円だった気がする。貧乏高校生の私には、少し、高い。

通信制高校に通いながら、週5でアルバイトをしてはいるが、それでも、その場のノリで390円を手放せるほどの財力はない。

なんせ、1ヶ月お小遣い3000円というルールを自分に課しているんだから。

要は、単なるケチなんだが。

仕方ないだろ。毎月の歯列矯正の調整費用とか、隣の県にある高校に週1ペースで通ってるとそれなりに交通費もかかるし、今年買ったバイクの借金をちょっとずつパパに返済してたりもするんだ。

そして何より、高校卒業後に進学して、奨学金に頼りすぎないように貯めてたりもしてるんだよ。

というわけで、160円のスティック状のチーズケーキを買った。

おそらく2分ほど悩んでいた気がする。

他にもリーフパイとか、クッキーとか、ケーキもあったんだ。他のスイーツ屋さんに比べてお手頃価格だった。

「これください。」

悩んでいる間スイーツとにらめっこしてた。決めるのが遅くて、嫌な顔されているんじゃないかと思って顔を見上げられずにいたから。

だから、優柔不断な私の注文を黙って待っていてくれたおじさんの優しい声に、嬉しくなった。

自分だけのお店を見つけた気がして少し気分がいい。

学校に来るときは立ち寄るようにしようかな、なんて思った。

今度こそはあのシュークリームを買おうっと。

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