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女性向け漫画の断筆と、そのご説明

先日、筆を折る旨をお知らせさせて頂きました。

どこかでも綴ったような気がするんですが、
僕は元々 女性向け漫画を本命に活動していた人間ではないので
全ては応援して下さった読者さんの為、という名目のもとで色々と動いていた数年間でございました。

一度はTwitter上で端的に綴ろうか…やめようかとぐるぐる迷走していたのですが、このままスーっと居なくなって(いやTwitterには居るんだけど)しまっていいのかな?読者さんに対して失礼じゃないのかな?と…悩み続けておりました。

なので、自分にとってもいい整理になるだろうという思いを込めつつ、
簡単にではありますがお話させて頂きたいと思います。



タイミング的にも
今話題の「少女漫画に男性作家(読者)云々~」にも
少し触れてしまうのですが…

実際、僕が今回 筆を折る決意をしたのも
これらの要素が深く絡んでの事でございました。

固定ツイのブログでも散々触れてますが、
男性〝性〟を描くのがちょっと難しかったんですね。

また過去にも触れておりますが…↓

今やはり求められているのは
手軽さと、消耗しやすい「商品価値」ですので、

編集側が求めるものと、
作家側が表現したいものとの間に
温度差や溝が生まれやすいのは致し方のない部分です。

ただその議論に〝意義〟を求めてしまうのも
面倒臭い作家性分ですので…笑

それが皆無だと価値を感じない。

色々と尽力したつもりではいるんですが、

そもそものコンセプトというか、
企画の段階で「恋愛重視ではない」「女性視点ではない」
「女性の共感だけに始終しない」ものは

結論から言うと全て駄目でした。

僕の他作を知ってる編集さん曰く
純文学寄りの作風が多いので…

これらは現在、
市場で求められるものでは無かったんですね。

勿論、中には恋愛要素をテーマに盛り込んだものもあるのですが、

端的に説明すると、
綺麗に纏まり過ぎているとインパクトも弱い(これは納得)
→不倫とか浮気とか女のドロドロ復讐劇(或いは俗物的要素)の方がウケる

…という、根本的に違う要素を出しても
そっちの話が多く出るようになっちゃうんですね…笑

でも実際 需要は大きく、路線としては〝正しい〟

そしてそれは、
「恋愛以外も読みたい女性読者」に届ける道が
塞がれている様なものでした。

実際やっぱりソレが無いと読者が確保できてないんで…
※色々と見せて貰った

これは嘗ての読者さんが
「男性主人公の人生の物語」を応援してくれていたのが
奇跡の様なものだったのだと…改めて感じました。

勿論、僕もソレに寄せる事で(またそこに別の要素も入れたりして)
トントン拍子にすんなり通ったものもあるのですが、
それが自分らしいか?と言われればそうではなくて…

けれど評価は得られた、
自分でもある程度は評価はしているもの…でした。

…しかし、それを続けて次に繋げられるものが無いんです。
〝次〟という…読者に作家性を見出されるものが。

また「女性への共感」という捉え方も様々ですが、
徹底的な男性〝性〟への排除も少なからずあって、

例えば、
父子家庭と男性達が夫々思う〝親子〟への人生観を捉えたり
虐待や(恋愛要素を過去のものとした)愛情に始終した
男性と子供寄りの企画だと、

そもそもがNGでした。

※某所で作品引き上げの際に弁護士通してるので、
中身読まずに単語だけでビビられている可能性も大いに有り。

(あまりにも雑なものを抜いた)講評による編集者達の創意は、

・たとえ妻が死んだばかりでも男主人公は育児を楽しむべき(それが今風)
・〝男性が〟弱音や価値観を吐露するような描写は不要。男の考えなど女性読者は興味ない
・女性との恋愛要素(不倫・浮気等)が無ければ、女性向けでは価値がない
・男キャラが肌を露出したりBL的な展開がないなら以下略

といったものでした。


実は…上記の作品においては
「実話を元に構成された話」でもあり(表記済)

また厚生労働省や児童虐待防止団体にも既にご協力も頂いていて、

更にはこの先も父子家庭支援団体や、
各企業さんにもご協力を仰ぐつもりで
これまで(過去 色々あった中で)準備していた自分としては、

「これらの発言を平気で出来る人達を連れて取材に行ったところで、
何を失言するか分からない。先方にも迷惑が掛かるのでは…?」

…と思ってしまい、これは致命的でした。

そして実は、BLというよりも
同性愛と自身の性自認・性的指向に関して
(セクシャリティの描写を極力除いた)
極めて現実的でプラトニックな要素は取り扱う予定でおりました。

この人に触れたいと思う罪悪感、
触れるのが怖いという怯え、恐れ…

それを親から否定されるor容認される
夫々の家族の形を描こうとしていました。

でもHが無いので…以下略。

そしてまた僕自身に対する評価も、
「(当時の人気/作品の価値は)どうせ絵だけの評価だったと思う」
といったものですので、

絵の綺麗さだけで行くにはどうすれば…?という自問自答も続き、

実際に評価して貰えた〝分かり易い〟ギャグ要素だけに特化したものも
面白いけれど…この先を思うと筆が止まってしまって…

というのが現実でした。
作品に罪はなく、作家側の問題だと捉えております。

既存の原稿に関しては
縦スクロールで話数分割(5.6P~20P前後)を前提に作ったものなので、

本来の横開きでの見せ方や話の構成を封印された状態で
あくまでも「形式上だけの見開きで纏めたもの」になり、

正直 自分でも描いててヤキモキしてました…笑

まぁ、それでお話を聞いて下さいませんか?というのも
正直…無茶だったかなと…。

(でも当時の編集さんとの努力は否定しない。よく纏めた方だよ)

どちらにせよ、
企画そのものにも価値を感じて貰えないのは
プロデュースの面で推しが弱いっていうのは感じてましたね。

(基本的に原稿以外の企画書等は送れない
+場所によっては字数制限でちゃんとした説明すら出来ない)

〝営業〟に至らない部分が凄く多かったので、
もっとこう…最初から「投稿作」って感じじゃないと
向かないんだと思います。

作家性<雑誌の色の方が本来とても重要なので…。


…また、固定ツイのブログにもある様に
「この読者さん達の為なら」と色々と努めてきた何年間という
苦痛ばかりだった月日を全否定するには、これらは充分過ぎるものでした。



勿論、関わった全ての編集者がそうなのでは無く、
中にはそれらを強く否定してくれる編集も(作家も読者も)いるのを
知っています。

僕自身どこかで、
少女(女性)向けの漫画は繊細且つ文学的要素に富んだもの
という認識があり、

それがまた自身の創作体型への理想や羨望にもなっておりました。

でも現実問題として、
市場価値は今そこには無いか…若しくは減っているのかもしれません。

でも、しつこいようですが
「編集が守りたいもの」と
「作家が守りたいもの」が合致しなければ

〝売れる・商品価値のあるもの〟は作れないので、

そこに大事なのは文学性でも芸術性でもなく
正直な〝数字〟に他ならないんだろうと思っています。

「その為になるもの」を捧げたいと思えなければ
無理に続けていても先細りしかありません(と感じました)

念の為 強調しておきますが
相性の問題が非常に大きいので、

これらを端的に受け取って、
言葉尻だけで「編集者不要論」に繋げて欲しくは無いのです。

「自分の個性に自信を持って」
「あなたのファンじゃない、違う種類の人に媚びる必要なんてないんです」
「あなたの得意なところで勝負しましょう」

こう言ってくれる編集さんと出会えたら
確かに、どれだけの作家の心が救われる事でしょう…。

(とても前向きになれる畑中さんのご回答から引用)


…またその一方で、
相互でもお世話になっている他作家さん方のように

作家個人での活動や読者からの支援とかも色々と考えたし
今も多少 思ってはいるんですけど…

「そうする事で何かを否定してしまいそうで怖い」
という気持ちが、今でもどこかにあります。

出版社を介さずに編集者個人と組んだ作家の個人出版や、
クラウドファンディング等で作家と読者だけが対面する

というやり方には、
正直とても魅力を感じているので…。

でも何だろうな…

僕がそれでも商業で
編集さんと関わりたいと思い続けているのは…

上手く言葉に出来ないんですけど、
〝否定〟したくないからだと思います。

編集さんの一方的な理想論や自分語りでも、
僕は基本的にその気持ちに対しては〝肯定〟をするので…

(たとえ逆が無かったとしても)

よく人から「貴方は誰の事も否定しないよね」とも
言われるんですが、

大体は価値観に基づく話ばかりになるので、
一つの話題の側面だけでそれを否定するに至るまでの
思考回路やプロセスを持ちようがない…っていうのもあります。

(※よっぽどの極悪人を除けば、ですが)

同じ事を〝創作〟にも求めているんです。

肯定していないからといって否定した訳ではない、
否定したからといって肯定した訳ではない。

似たような事は沢山あるんですけど、
これらもどうか同じ様に受け取っていて欲しいです。

正しさと面白さが同一の価値ではないように、
編集や作家の夫々の在り方に関しても、
それに対する思いも、

なるべく、
誰もが大事にできる方向で進めていける事を祈っております。



最後になりますが、
現状 僕は今「女性向けに描く」という事をやめて
「自分らしく描く」という事で初心に帰ろうとしています。

正真正銘のリスタートのつもりで
一度全て持つのをやめて、とにかく自分でも大切に扱えるように
作品と向き合っていこうかなと…。

その結果
「女性読者さんに読んで貰える」のであれば
それはまたどんなに素敵な事かと思います。

人様に対して
運や巡り合わせという言葉はあまり使いたくないのですが、

それでもどこかで
それを憂いたり、望んだり、願ったりしている…。

そんな脆い弱さでも、
〝いつか〟へ繋げる活力へ変換できるように
自分に出来ることを今、頑張りたいと思います。

今まで応援して下さった読者の方々へ、
多大なるご心配とご迷惑をおかけした事をお詫び申し上げると共に
これまでの頑張りを否定しないでいてくれた事、頑張れるだけの思いをくださった事に、改めて感謝致します。

時間もお金も労力も、そして自身の心身の健康も
全てを失って、どれだけ苦しかったか…今でもよく分かっていません。

ただ、誰かがそれで救われるなら、誰かがそれで笑顔になるならと、
自分以外の何かを大切にしたかった一心で向き合い続けてきたのは確かです。

そんな中でも唯一、素直に泣けたことは
あの日、数千を超える多くの読者さんから頂いた僕と僕の作品に対する
「大好き」という言葉でした。

今まで頂いたご厚意を胸に抱きつつ、今後も精進して参ります。
本当にありがとうございました。

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