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ダンスホール


"学校は辞めたわ
 今は働いてるわ
 長いスカート引きずってた
 のんびり気分じゃないわね

 少し酔ったみたいね
 喋り過ぎてしまったわ
 けど金が全てじゃないなんて
 綺麗には言えないわ"


 奇妙礼太郎
 [ダンスホール]




元曲は尾崎豊だが
この歌を聴くと中学時代を思い出す。

世間では
校内暴力が吹き荒れ

暴走族。シンナー。
カツアゲ。根性焼き。腐ったミカン。

そんな物騒な言葉が
流行る時代だった。


うちの中学も放課後になると
校門に他校のヤンキー集団が
待ち伏せてる事があった。

1度下校時に
そいつらに捕まった事がある。

[番格の津◯出せや]

今日来てたっけな?

[居んの分かってんだよ!]

っせえな。ちょっと待ってろ。


相手は総勢15人くらい。
校舎からは当時の彼女も
不安そうに見ている。

彼女やクラスメイトの前で
ボコボコにされるのだけは避けたい。

内心バクバクだったが
悟られないように校舎に
ゆっくり歩いて引き返した。


校舎に入ると番格の居る
教室まで階段をダッシュで駆け上がる。

番格といっても保育園も小学校も
一緒だった幼馴染みだ。

教室に入るなり
おい!津◯!ヤバいぞ!◯校の奴ら来てるぞ!
と伝える。

[マジかよ?!何人くらい居た?]

ざっと15人くらい。

[仕方ねえな。。]そう呟いて
他の不良にも声をかけ集合させた。

やるのか?と聞くと

[まぁ見てろって。
教えてくれてサンキューな。]

そう言い残して
津◯と不良グループは
階段を駆け降りて行った。


が。

いつまで経っても
校門に現れない。


津◯たちは
裏門から逃げて帰った。


いま思うと津◯は
[今日から俺は]の三橋みたいな奴だった。
髪型はパンチパーマだけど。



その様子を見てた
長いスカート引きずってた
"積木くずし軍団"の呆れた顔が
忘れられない。

ついでに言うと軍団の1人が
机の上に胡座をかいて座っており
たまたま見えてしまったパンツが
白地にイチゴ模様だったのも
忘れられない。


痺れを切らした
他校生どもは校門を蹴り始め
駆け着けた体育教師に追っ払われていた。


ちなみに津◯君は卒業式の日。
式が開催される体育館へ向かう時
[卒業したくねえよぉぉ―――!]と
子供が玩具屋で物を強請るように
廊下に寝転がり泣き喚いて暴れた。


その後。二十歳くらいの時
出勤の為チャリを漕いでいると
津◯君に遭遇した。

[悪りぃ!駅まで乗せてくれ!]

そう言う彼の髪型は
相変わらずパンチパーマで
堅気には見えない服装だった。

駅までの道のりを
ニ人乗りで走った。

あれ以来。もう30年以上
津◯君とは会っていない。

それでも。あの時
自分の両肩に乗せた彼の手の感触と
屈託のない笑顔はココロの引き出しに
今も残っている。



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