とりあえずこれだけは聴いとけ、東京事変の刺さる曲15選【MIS.W57代アドカレ企画12月20日】

2003年にソロ活動の一旦停止を宣言した椎名林檎が中心となり結成されたバンド、東京事変。2005年に5人中2人のメンバーチェンジ、2012年のバンド解散、そして2020年の再結成を経たこのバンドの、多種多様であり、かつ骨の通った名曲たちを15曲紹介します。

群青日和

2003年9月8日リリースのデビューシングル表題曲。
新しいバンドの始動とその後の活躍を決定づけた楽曲。圧倒的なエネルギーが込められていて、ギターもベースもキーボードもドラムもボーカルも、全ての音が喜んでいるのが手に取るようにわかる。
春はあけぼの、夏はつとめて、新宿は豪雨である。雨が降る最中の新宿の街並みは、晴れの時と違い人間味があるような気がする。愛にできることがまだあったっていいじゃないんでしょうか。

遭難

2ndシングル表題曲。
イントロの、「テケテケテケテケ…」といったギターフレーズは、邦楽の中でも屈指の魅力を持つ名フレーズであろう。お互いが堕ちていくような危険な恋を、昭和歌謡の世界として表現している緻密なサウンドが、いつ聴いても新鮮に映る。最後にサビを繰り返し、極限まで溜めてからの歌い終わりのギターソロの入り方だけで飯が食える。

修羅場

東京事変の真骨頂。3rdシングル表題曲。
メンバー交代後初シングルということもあってか、それぞれのメンバーのプレイの特徴がモロに出ている作品。うなるベースにはねるドラム、円いピアノに刺すギター、そしてがなるボーカルとピースが嵌り、東京事変ここにあり。
歌詞は古語中心で、字面だけ追っても正直何が何やらという感じだが、メロディに乗って届くことで「わかる…わかるぞ…」となる。リスニングバージョンのムスカ大佐。

キラーチューン

わっち楽曲でバトルロワイヤルしたらこの曲が勝つ。5thシングル表題曲。
初聴時からここまで耳を鷲掴みにする曲は他にないだろう。ハネてハネてハネ倒したリズムはあまりにもお耳の恋人だ。うねうね動きまくるウォーキングベースと、奇才、浮雲による縦横無尽に動き回るギターも必聴。

恐るべき大人達

多分、この曲は都の青少年健全育成条例に引っかかる。出る音出る音全てがジャジーで官能的だ。特に2番のAメロ終わりのエレピソロがどエロい。
ぶっといベースもワウの効いたギターも全部が全部エロエロ。耳が孕みます。

女の子は誰でも

聴いてるだけで美形になったと勘違いできちゃう曲。7thシングル表題曲。
ビッグバンド編成で展開される豪華絢爛なサウンドが素晴らしい。資生堂の化粧品「マキアージュ」のCM曲として書き下ろされた曲でもあり、化粧品のコマーシャルとしてこれ以上ないまでの「美形」力が如実に表れている。
林檎さんの後ろで踊る男性メンバーが可愛すぎるのでMVを是非。

閃光少女

『女の子は誰でも』が午後八時の新宿だとしたら、この曲は午後五時の下北沢。「今」の煌めきを味わい尽くす青春が、たった2分59秒という短い曲の中で表現されている。昨日よりも、明日よりも、今日が一番と言っていたいでしょうそりゃあもちろん。

空が鳴っている

アツいロックは古今東西いろいろあれど、この曲以上に冷たく翳りのある情景が浮かぶロックはない。歌詞は1行16文字でちょうど収まり、歌詞カードでは一番と二番のAメロの一部分が色違いになっていて、つなげると「残響」になるというオシャレ仕様。カッコよすぎ。

選ばれざる国民

2020年1月1日0:00、東京事変再結成の報せとともに公開されたこの楽曲。歌詞は『某都民』の続きとして、都会を漂う人々を描き出している。メインボーカルである椎名林檎ではなく浮雲が歌い出していることで、「東京事変の再始動」が実感できてめちゃめちゃ興奮していたことを覚えています。
コロナウイルスの蔓延がなければ、ライブツアーは大成功、オリパラ開閉会式は担当者の変更もなく、世の中は今よりもうちょっと楽しかったんですよきっと。

永遠の不在証明

『名探偵コナン 緋色の弾丸』の主題歌として書き下ろされた一曲。
初聴時は譜割りも複雑でなかなか魅力に気づけないと思いますが、慣れてくるとヤヴァイ。ど頭からの歌い出し「引き金を引いた」という言葉の裏で鳴るドラムがまんま発砲音で脳天ぶち抜かれる。
歌い終わった後、一瞬の静寂を経てバンドセッションになる構成が見事すぎる。ピアノのうなるような極低音「ゴォォォォォン」から始まるスイングジャズで漏らした。

能動的三分間

6thシングル表題曲。
BPM=120で90小節分だから2秒×90小節=180秒で曲を作るという縛りがあったり、打ち込みで表現されたファンクのジャンルを生演奏でやってみるといつテーマがあったり、何かと制約が多いこの曲。ストイックな彼らっぽいと思えばそうだけれど、作品としてちゃんとポップスになっているのが脅威。

絶体絶命

4thアルバム「スポーツ」で前曲「能動的三分間」から間髪を容れず始まるこの曲。曲調としてはピアノの刻みを基としていて非常にポップでありながら、歌詞はかなしみや絶望に追われながらも必死に生きる様子を描き、まさに絶体絶命そのもの。このギャップにやられる。
ライブ映像では、Ba.亀田師匠が機材トラブルで曲の開始に間に合わず、Gt.の浮雲さんが代わりにフレーズを弾いたり、歌い出しを示すためのフィルインをDr.の刄田さんがアドリブで叩いたり、東京事変のバンドとしての底力が垣間見える。

透明人間

2ndアルバム『大人(アダルト)』収録。
さまざまな媒体で東京事変ファン投票的なのがあるが、その常連曲。最近でも「NONIO」のコマーシャルに使われていたので聞き覚えのある人も多いんじゃないでしょうか。師匠作曲の楽曲らしいまっすぐなメロディとアレンジがすっと心に馴染む。各々のパートのプレイヤーとしての特徴も光る、東京事変の代表曲のひとつである。

2ndシングル『遭難』カップリング曲。
正直なところ今まで挙げてきた中であえて一番を選ぶとしたらこの曲だ。無人島に東京事変の曲を一曲持っていくなら間違いなくこの曲を選ぶ。
すっと沁みるピアノ、歪みを効かせて揺らぐベース、リズムに余韻を残すドラム、ふらふらとしながら合いの手を入れるギターに、内省的な歌詞が乗ることで、落ち葉の散って寒々とした冬の情景がありありと浮かぶ。自分の本当の気持ちとは、「心」とは何なのか。他者との擦れ合いで削れてできたものではないとするなら一体何なのか、どこにあるのか。わからないなりに生きながらえてしまっている自分の中の「大人」な部分に、薬を塗ってくれるような曲だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?