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Thorn

言葉に溢れていたくない
そんな気分にならないか
鮮やかに錆びた
イロハモミジを見上げる時に

言葉に託したくはない
そんな気分にならないか
夕闇せまる街角で
誰かを深く思い遣る時に

言葉に現されていたくない
そんな気分にならないか
染みだらけのカウンター
アルコールが巡りだした時に

すべてのサイバーよ
目を閉じてしまえよ
耳を削いでしまえよ
鍵をかけてしまえよ
顔もないのに誰もが
わかって欲しいのだ

言葉に縋りたくはない
そんな気分にならないか
筆跡もないその文字が
大仰に慰めようとする時に

言葉を作りたくない
そんな気分にならないか
パズルを組み立てて
目を逸らしていると感じてしまった時に

言葉などでは
本当を表しはしないから
匿名が居心地いいんだろう
匿名こそいまの詩人の姿さ
言葉などでは
暴かれることもないから
泣いていると歌うのだろう
自分語りをされても、しても
そこに自分なんておりゃしない
みな匿名と言う虚構の湖に
すっかり気持ちよく浮かんでいる
便利な詩か

濡れた唇の吐息の方が
言葉よりも信じられる
何も言わない唇のほうが

とても詩的だ

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