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絶対に見るべき!主人公がタイムリープするドラマ・映画一覧

2024年1月〜3月期のTVドラマの中で最大のヒット作と呼べるのは、宮藤官九郎が脚本を書いたTBSドラマ『不適切にもほどがある!』であることに異論を唱える人はおそらくいないでしょう。

世帯視聴率こそ、同じくTBSの日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』の後塵を拝しているものの、民放各社が重視する個人視聴率、とりわけコア視聴率(13歳から49歳の個人視聴率)においては逆転のうえNo.1に輝き、それだけでなく、TverU-NEXTNETFLIXをはじめとする映像配信サービスのランキングにおいても断トツの1位に輝いています。

不適切にもほどがある!』が人気なのはいくつか理由がありますが、その中のひとつは、昭和と令和という二つの時代を主人公がタイムリープすることで起きる騒動の面白さにほかなりません。

実は、『不適切にもほどがある!』のように、主人公がタイムリープする映画やドラマは、過去において(そして、現在に至るまでにも)数多く作られています。

今回のnoteでは、私が実際に視聴して面白かった、主人公が過去と現在、未来をタイムリープするドラマ、映画を紹介していきたいと思います。

テセウスの船(2018年)

2018年、TBSテレビの日曜劇場で放送されたドラマ『テセウスの船』。

日曜劇場「テセウスの船」

私がこのドラマをおすすめする理由は、以下の3つです。①キャスティングが豪華、②ドラマのテーマ(謎解きと家族愛)が秀逸、③エンディングが良い(タイムリープの伏線が見事に回収されている)

まずはじめに、キャスティングからお話すると、本ドラマの主演は竹内涼真ですが、その脇を固める助演俳優のラインナップが豪華すぎる配役となっています。

鈴木亮平榮倉奈々上野樹里など、普通のドラマであれば主役級のキャストを惜しげもなくつぎ込み、脇役として固めただけでなく、ユースケ・サンタマリア麻生祐未など、演技派のベテラン俳優も要所要所にしっかりと配置したことで、ドラマ自体を非常に見応えのある作品となりました。

物語は、主人公の田村心(竹内涼真)が、父・佐野文吾(鈴木亮平)が逮捕されるきっかけとなった殺人事件の発生を防ぐために31年前の平成元年にタイムリープすることで幕を開けます。

当然、その殺人事件の真犯人は誰か?(心は父親の無実を確信している設定です)ということも本作のテーマの一つではあるのですが、本作を構成するもう一つの重要なテーマは「家族愛」です。

父と子の時空を超えた信頼関係、タイムリープ先(殺人事件が起きる前)での父とその家族との家族愛、主人公・心とその妻・由紀(上野樹里)の夫婦愛、あらゆる形で家族の絆・愛情が描かれ、それがドラマを見る視聴者の心を打つ作品となっています。

もちろん、真犯人をめぐる謎解きも、最終回まで視聴者を魅了し続けます。
(平成時代の)登場人物すべてが怪しく描かれる中で、最後に明かされる真犯人とは…?

謎解きの要素とファミリードラマの要素を組み合わせたドラマの展開は、見る者を最後まで飽きさせない作りとなっています。

最後に、タイムリープの伏線についてですが、こちらも見事に回収されます。

タイムリープ先の平成で、主人公・心が行った「ある行動」の答えが最終回のエンディングで明らかになるとともに、大人になった心がタイムリープした先で、若き母・和子(榮倉奈々)がお腹の中に(まだ生まれてこない)心を宿しているという論理的な矛盾(=同じ人間が同じ時空で存在し続けることはできない)も、ある出来事によって見事に回収されます。(そして、その出来事が最終回のエンディングに繋がっていくという脚本も見事です)

日曜劇場「テセウスの船」は、オンエア当時、平均視聴率13.4%を記録。
初回11.1%で始まったドラマは終盤にかけて視聴率を伸ばしていき、犯人が明かされる最終回には番組最高視聴率19.6%を記録して見事有終の美を飾りました。


あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(2023年)

SNS(TikTok)で話題になった汐見夏衛の同名小説を映画化。
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の福原遥と、『ブギウギ』の水上恒司がW主演を務めています。

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』

2023年12月8日に公開された本作は、観客動員数350万人、45億円の興行収入を記録。松竹配給の邦画実写作品では、歴代2位の大ヒットとなっています。

私自身も公開後2ヶ月を経過した2024年2月下旬に実際に映画館で鑑賞しましたが、結論から言うと、前評判通りの素晴らしい作品でした。

実際の客席も公開2ヶ月後であるにもかかわらず、ほぼ満席で、意外なほど若い観客が多かったのが印象的でした。(一人で見ている方やカップルでの鑑賞など、パターンは様々ですが、若者の間で口コミにより本映画がヒットしていることはよくわかりました)

それでは、なぜ、戦争というテーマが比較的重めで、かつ主人公がタイムリープする先の時代設定も戦時中(終戦直近の日本)であるにもかかわらず、本作がこれほどまでにヒットしたのでしょうか?

私は、その要因は大きく分けて3つあると思っています。

まず、一つ目の理由ですが、本作のテーマを単なるラブストーリーにしなかったことです。

当初、私自身もこの映画の宣伝ポスター等の表記から、主人公二人(福原が演じる女子高生・百合と水上が演じる特攻隊員・(あきら)の間に芽生える時空を超えたラブ・ストーリーが物語の主軸になると予想して映画鑑賞に臨みました。

結果、良い意味でその期待は裏切られることになります。

映画のネタバレになることからここでは詳しくは書きませんが、この映画での主要なテーマは、決して主人公二人の間の恋愛ではありません。

それよりももっと深いところに本作のテーマはあります。

映画を最後まで見続けていくにつれてそのことは明らかになっていくのですが、それこそが、本作がこれほどまでのヒット作になった要因の一つであると思われます。

二つ目に挙げたいのが、昭和と令和との間の異なる価値観の提示の仕方です。

これは、TVドラマ『不適切にもほどがある!』と共通する要素ですが、未来(または過去)にタイムリープした主人公が、時代間の価値観の違いをその発言や行動によって浮き彫りにする手法が取られており、本作では、主人公の百合にその役目を負わせています。

令和に生きている主人公・百合(福原遥)は、太平洋戦争の結末(=アメリカに敗戦したという事実)を知っており、その前提条件のもとで戦時中の1945年(終戦の年)にタイムリープします。

当然、(水上恒司)たちが従事する零戦による特攻に対して否定的な発言(=どうせ負けるから意味が無い)を(戦時中という時代背景の中でも臆することなく)繰り返します。

実は、この、異なる時代から戦時中の日本にタイムリープするという百合の設定が、映画を鑑賞する観客が、自分達の知らない戦時中の日本という特殊な時代背景を理解するために必要な役割を果たしているのです。

百合と同じく平和で効率的な現代社会に生きる私たちは、当然、非合理的で貧しく、戦争に疑問を持たない戦時中の日本には違和感を持つに違いありません。
異なる時代(=我々が住む令和)からタイムリープして来た百合に、当時(=戦時中)の誰もが疑問を抱くことなく従っている価値観に対する疑問や批判をさせることで、我々観客がこの映画にすんなりと入っていくことができていると言えます。

不適切にもほどがある!』と同様、時代間のギャップが大きければ大きいほど、その(=百合と同様に映画の鑑賞者である私たちが感じる)衝撃やインパクトは大きくなります。

平和で何不自由無い時代に生きながらも現状に不満だらけだった百合も、タイムリープした先での今とは正反対の世界で懸命に生きている(戦前の)人達に姿に触れるについて、段々とその意識が変わっていきます。

そして、それこそが、この映画の重要なテーマの一つになっているのです。(私が先に、この映画のテーマは恋愛だけではないと言及したのはこのことを指しています)

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』

上記の通り、昭和と令和との時代間の異なる価値観(特に戦争に対する考え方の)違いをクローズアップしておきながら、この映画では戦争そのものの是非(思想的な評価)については一切言及していません。

そして、このことが、本映画を爆発的なヒットに導いた三つ目の理由であると筆者は考えています。

前述した通り、令和の時代からタイムリープした百合は、戦争の無意味さを訴え、憲兵に暴力をふるわれそうになったところをに助けられます。しかしながら、百合が戦争に反対の意を唱えた理由は、決して、戦争が人道的に間違っている、というものではありません。

百合が戦争が無意味だと力説するのは、自身がその結末がわかっている未来(令和)から来ており、かつその手法(=特攻)が(敵を壊滅させるという目的に照らした時に)全く意味をなさないという厳然とした事実を(恐らく歴史の教科書から)学んでいるからです。

一方で、たちも戦争を当然のものとして受入れていますが、決して戦争そのものを美化しているわけではないことは、そのセリフや表情から明らかです。

彼らは、当時の常識・価値観の中で日々の生活を送っているに過ぎず、(私たちが現代社会で当たり前に仕事に行っているのと同様に)疑うことなく当然の使命として特攻隊に従事しているに過ぎません。(それ以上でもそれ以下でもないのです)

この戦争に対するフラット(公平)な視点によって、私たち観客は、物語にすんなりと感情移入し、かつ映画のテーマに深く共感することができるのです。

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』

そして、この映画を語るうえで、主人公二人の演技の素晴らしさにも触れておかずにはいられません。

百合を演じる福原遥の実力は、数々の出演するテレビドラマ(『正直不動産』、『舞いあがれ!』など)で証明済みしょう。

今回の作品でも、目的を失い、うまくいかない人生を他人のせいにしながら無気力に生きていた主人公・百合が、タイムリープした先の異世界(=戦時中の日本)で、毎日を必死に生きている人達の姿に触れることで変わっていく様(=その変化)を見事に演じ切っています。

また、相手役のを演じた水上恒司ですが、百合への秘めた思い、自らの(教師になりたいという)夢と現実(彼は数日後には特攻隊として飛び立つ運命にありました)とのギャップへの葛藤、それらを決してあからさまに表面に出すことなく、静かな佇まいの中で体現していくその演技力には脱帽せざるを得ませんでした。

水上恒司

最後に、タイムリープの伏線回収ですが、それこそが、この映画のクライマックスであり、最大の見どころとなっています。(ネタバレになるため、ここで詳しくは書くことは出来ませんが)

このたび、2024年4月26日より、動画配信サービス「U‐NEXT」で独占先行レンタル配信が開始されました。

また、本作のBlu-ray&DVDの発売が2024年6月14日(金)に決定しています。



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