多数のレア・トラックをリマスター音源で収録。ポール・マッカートニーのシングル・BOXセット「The 7″ Singles Box」

元ビートルズで、ソロ転向後も多数のヒット曲をリリースしているポール・マッカートニー

そんなポールの作品(アルバム)のリマスター盤については、これまでアーカイヴ・コレクションの名のもとに数年毎に自身のキャリアの中から厳選された作品群が最新のリマスタリングを施され発売されてきました。

しかしながら、このアーカイヴ・コレクションによるリリースは、功罪の両方があると個人的には感じています。

功の部分は、もちろん、彼(ポール)の素晴らしい楽曲が、その時々の最新のリマスター音源にて蘇ったことです。


一方の罪の部分はと言うと、以下の2点が挙げられます。

①傑作・名盤と呼ばれるアルバムを厳選して発売したため、すべてのアルバムがリマスターされていないこと

②一部のアルバム(具体的には「Flowers In The Dirt」)にて、バージョン違い(シングル・バージョン)やカップリング曲など、レア・トラックのリマスター音源が入手しずらくなったこと


まず、①についてですが、ポールの2010年以前にリリースされたアルバムで、アーカイヴ・コレクション等による最新リマスター盤が発売されていない作品は以下の通りとなっています。
()はオリジナル盤の発売年

London Town(1978)、Back To The Egg(1979)、
Give My Regards To Broad Street(1984)、Press To Play(1986)、
All The Best!(1987)、Tripping The Live Fantastic(1990)、Unplugged (The Official Bootleg)(1991)、
Off the Ground(1993)、Run Devil Run(1999)、
Wingspan: Hits And History(2001)、Driving Rain(2001)、
Back in the U.S.(2002)、Back in the World(2003)、
Chaos And Creation In The Backyard(2005)、
Memory Almost Full(2007)、Good Evening New York City(2009)

ここで、2010年という年で区切りを入れているのは、最初のアーカイヴ・コレクションとして発売された「Band On The Run」の発売が2010年であることから、それ以降に発売された作品は、アーカイヴ・コレクションと音質面で大差が無いと考えているからです。

現に、ここ最近の作品(具体的に言うと2012年発売の、「Kisses On The Bottom」以降のアルバム)は、リマスタリング時の音源とオリジナルの音源との音質差はほとんどありません。

一方で、上記の作品(正確には2009年以前の作品)については、やはりテクノロジーの進化は著しく、現時点の(肥えた)耳でオリジナルの作品を聴くと、その音質の悪さがどうしても耳についてしまいます。

しかしながら、現時点で、上記の作品群が、アーカイヴ・コレクションとして発売される可能性は極めて低い、と考えた方が妥当です。

それにはいくつか理由がありますが、一つには、上記の作品、とりわけ、オリジナル・アルバムについて、リリース時の評価(チャート・アクションも含む)があまり良く無いこと。

二つ目は、2016年発売のベスト・アルバム「Pure McCartney」に、上記のアルバムに収録の代表曲(シングルを含む)のほとんどが、リマスタリング音源(過去のアーカイヴ・コレクションでの音源を含む)にて収録されてしまったことです。


次に、②についてですが、過去のアーカイヴ・コレクションは、以下の形態(パッケージ)にてリリースされてきました。

(1)通常盤(CD1枚組):オリジナル・アルバムの最新リマスター盤

(2)スペシャル・エディション(CD2枚組):
 上記(1)+ボーナス・オーディオ

(3)デラックス・エディション(CD4枚組):
 上記(1)+(2)+レア・トラック(CD2枚)

通常は、上記(2)に、アルバム未収録のシングルおよびカップリング曲、ライヴ・バージョン等が収録されてきましたが、2017年の「Flowers In The Dirt」発売時だけは、(2)に未発表デモ音源が収録される代わりに、当時の貴重なシングル・バージョン、カップリング曲、12インチ・シングル収録のバージョンが(3)の購入者のみに与えられる、ダウンロード音源として提供されることとなりました。

このリリース形態により、「Flowers In The Dirt」関連のレア・トラックが、デラックス・エディション購入者にしか行き渡らないという事象が生じることとなってしまいました。

このデラックス・エディション(4枚組)は、日本盤だと定価が25,000円以上もする高価なもので、ポール・マニアといえども気軽に手を出すことが厳しいものになっているというのが現実です。

こうして、ポール・マッカートニーの数多くの楽曲のうち、多数のオリジナル・アルバム収録曲およびそれに関連するレア・トラック(上記の「Flowers In The Dirt」関連曲を含む)が、非リマスター音源でしか入手できないという、マニアにとっては、残念な状況が続いていたのです。


しかし、そんな状況に一石を投じる出来事が2022年に起こります。

それが、シングル・BOXセット「The 7″ Singles Box」の発売です。


The 7″ Singles Box

この、「The 7″ Singles Box」は、これまでにリリースされた市販商品/プロモ盤を再現した65枚の7インチ・シングルに、今回新たに制作された15枚の7インチ・シングルを加えた計80枚のシングル・ボックスで、ロンドンのアビー・ロード・スタジオでリマスター/カッティングされた音源を使用した、ポールのシングル曲の集大成と呼ぶべき作品集となっています。(形態はアナログ・シングルだけでなく、デジタル配信としてもリリース)

このボックス・セットのリリースにより、シングル・バージョンやカップリング曲を含む、ポールのレア・トラックの多くが、リマスター音源で新たに聴くことが可能となりました。

そこで、今回の記事では、上記の「The 7″ Singles Box」収録曲のうち、これまでのアーカイヴ・コレクション及び2016年リリースのベスト・アルバム「Pure McCartney」未収録の楽曲を中心に紹介していきます。


ポール・マッカートニー(1971年当時)


2A: Uncle Albert / Admiral Halsey [Mono]

2B: Too Many People [Mono]

1971年発売のポールにとってのソロ転向後2枚目のアルバム「Ram」からアメリカでのシングル・カットされた、ソロ・キャリアとして初の全米No.1シングルとなった楽曲ですが、本ボックス・セットに収録されたのは、プロモーション盤としてリリースされた貴重なモノラル・バージョンになります。

そのため、リマスターされたステレオのシングル・バージョンは、2018年にリマスターのうえ再発されたウイングス時代のベスト・アルバム「Wings Greatest」にしか収録されていません。

なお、アルバム「Ram」には、アレンジ等は同一ですが、本曲のアウトロが次の収録曲「Smile Away」のイントロと被っている(厳密に言うと)アルバム・バージョンにて収録されていることを付け加えておきます。


8B: The Mess [Live at The Hague]

1973年発売のウイングス名義(正確にはポール・マッカートニー&ウイングス名義)での2枚目のアルバム「Red Rose Speedway」からの第1弾シングルで、全米No.1ヒットとなった楽曲「My Love」のカップリング曲。

本ボックス・セットに収録されたのは、ライブ録音時の演奏前のMCも含めたオリジナル・シングル・バージョン(4:59)ですが、2018年にアーカイヴ・コレクションとして発売されたアルバム「Red Rose Speedway」の2CDスペシャル・エディションには、MCをカットして演奏から始まるショート・エディット・バージョン(4:39)が収録されています。


15A: Listen to What the Man Said

意外なことに、この全米No.1ヒットがシングル・バージョンで最新リマスタリング音源にて登場するのは、今回が初めてになります。

1975年発売のアルバム「Venus And Mars」には、イントロの前に男性のナレーションが挿入されており、エンディングも次曲の「Treat Her Gently – Lonely Old People」のイントロと一部被っているクロスフェード仕様のアルバム・バージョンにて収録されています。

一方、シングル・バージョンでは、冒頭のナレーションが丸ごとカットされ、エンディングも次曲のイントロが被らずそのまま自然にフェードアウトしています。

このシングル・バージョンは、1978年発売のウイングス初のベスト・アルバム「Wings Greatest」には未収録で、その後のベスト・アルバム「All The Best!」(1987)、「Wingspan: Hits And History」(2001)にて初登場しています。

しかしながら、「All The Best!」と「Wingspan: Hits And History」は、今となっては音質の悪さが際立っており、2014年発売のアーカイヴ・コレクション版の「Venus And Mars」のボーナス・トラックとしても(理由は定かではありませんが)このシングル・バージョンは未収録であったため、今回のボックス・セットでのリマスター音源での収録はポール・マニアにとっては驚くべき出来事となりました。(それ故に、今回の曲名のリマスター表記が2022ではなく2014なのかは依然として謎なのですが…)


15B: Love in Song

アルバム「Venus And Mars」では、冒頭の「Venus And Mars〜Rock Show」からクロスフェードで繋がっている本曲ですが、今回、本ボックス・セットに収録されたのは同曲(「Venus And Mars〜Rock Show」)のアウトロが被らずピアノの演奏から始まるシングル・バージョン。もちろん、今回が初登場のオリジナル・シングルからの2022年リマスターです。


19B: Beware My Love

1976年発売のアルバム「Wings At The Speed Of Sound」からリリースされたシングルのうち、2枚目の「Let 'Em In」のカップリング曲である本曲のみが、アルバムとのバージョン違いとなっています。

アルバム・バージョンには冒頭にアコーディオンのフレーズがプラスされており、その後でアコースティック・ギターのカッティングがクロスフェードで入ってくる仕様なのに対し、シングル・バージョンは、いきなりアコースティック・ギターのカッティングから始まります。(ただし、冒頭にわずかながらアコーディオンの最後の音が被っています)
また、アコースティック・ギターのカッティングの部分も、長さが異なり、シングル・バージョンはアルバム・バージョンよりも0:07秒だけ短くなっています。


21AA: Girls’ School

1978年に発売されたシングル「Mull of Kintyre」のカップリング曲。

イギリス・スコットランド地方の楽器であるバグパイプを取り入れた「Mull of Kintyre」は、当時の全英シングルチャートで9週連続1位を獲得。それまでビートルズがイギリスでの最多売上記録を有していた「She Loves You」を抜いて200万枚以上を売り上げる新記録を打ち立てました。(後に1984年、バンド・エイドの「Do They Know It's Christmas?」にその記録を抜かれるまで、歴代の全英シングル・チャートでの最多売上を記録)

「Girls’ School」は、アメリカでのリリース時に先の「Mull of Kintyre」とA、B面を入れ替えてシングルとして発売されましたが、全米33位に止まっています。

2022年時点では、アルバム「London Town」がアーカイヴ・コレクションとしてリリースされる目処が立っていないことから、今回リマスター音源でリリースされた本トラックは、貴重な存在です。


ポール・マッカートニー(1978年当時)


22A: With a Little Luck (DJ Edit)

今回収録されたDJ Edit自体は、2016年に発売されたベスト・アルバム「Pure McCartney」にも収録されているため、初登場というわけではありません。ここで言及しておきたいのは、むしろ、アルバム・バージョンの方です。

前述の通り、アルバム「London Town」がアーカイヴ・コレクションとしてのリリースの可能性が低くなっている現在、「London Town」収録曲を、最新のリマスター音源で聴くことは難しくなってきています。

1978年に全米No.1に輝いた「With a Little Luck」も、アルバムとシングルでバージョン違いが存在し、アルバム・バージョンの長さが5:47であるのに対し、シングル・バージョン(DJ Edit)は、アルバム・バージョンの一部がカットされた(=編集により短くなった)ショート・エディティッド・バージョン(3:14)です。

現時点で、この曲のアルバム・バージョン(リマスター音源)は、同じく1978年発売のウィングス名義のベスト・アルバム「Wings Greatest」の2018年再発盤のみに収録されている貴重なトラックとなっています。


22B: Backwards Traveller/Cuff Link

23A: I’ve Had Enough

23B: Deliver Your Children

24A: London Town

24B: I’m Carrying

アルバム「London Town」収録曲からのリカット・シングルです。
2022年時点において、ソロ・キャリアとしての全盛期である1970年代の作品中、アーカイヴ・コレクションとして未発売のアルバムは、「London Town」(1978年)と「Back To The Egg」(1979年)の2枚です。

アルバム「Back To The Egg」収録曲のうち、シングル・カットされた代表曲の多くが、2016年発売のベスト・アルバム「Pure McCartney」に収録されているのに対して、「London Town」からのシングル曲のうち、「Pure McCartney」に収録されたのは、先に紹介した「With a Little Luck (DJ Edit)」のみであったため、今回のボックス・セットにて、アルバム「London Town」収録曲の多くが、初めてリマスタリング音源としてリリースされました。

ちなみに、ベスト・アルバム「Pure McCartney」に収録されている、その他の(シングル・カットされていない)「London Town」収録曲は、「Girlfriend」(マイケル・ジャクソンへの提供曲)と「Don't Let It Bring You Down」の2曲になります。


25B: Daytime Nightime Suffering

26A: Old Siam, Sir

26B: Spin It On

27A: Getting Closer

London Town」とともに、アーカイヴ・コレクションとしての発売が見送られているアルバム「Back To The Egg」。
リリース当時のセールスが他のアルバムと比較すると低調な(それでも全英6位、全米8位を記録しています)ことから、今後のアーカイヴ・コレクションでのリマスター盤の発売の可能性は極めて低いと言わざるおえません。

それでも、2016年発売のベスト・アルバム「Pure McCartney」のコンセプトが『車で長旅に出るときには、このアルバムを旅のサウンドトラックにしよう』(ポール・マッカートニー本人談)であったことから、「Back To The Egg」収録曲の中から、メロウで聴きやすいバラード曲「Arrow Through Me」、「Baby’s Request」が選曲のうえ同アルバムに収録されました。

一方、アルバム(「Back To The Egg」)のコンセプトである、発売当時に流行していたニューウェーヴ、パンク・ハードコアの影響が強い楽曲(「Old Siam, Sir」、「Spin It On」、「Getting Closer」)は、「Pure McCartney」には収録されず、その結果、リマスター音源は、今回の「The 7″ Singles Box」にて初登場となっています。


29B: Rudolph the Red Nosed Reggae

今となっては、ポール・マッカートニーの楽曲の中では最も有名な曲となった「Wonderful Christmastime」。
そのカップリングとしてオリジナル・シングルに収録された「Rudolph the Red Nosed Reggae」は、日本でも、通称「赤鼻のトナカイ」で親しまれた定番のクリスマス・ソングのレゲエ・インストゥルメンタル・バージョンです。


30B: Coming Up (Live at Glasgow)

オリジナル・シングル「Coming Up」は、英米ともに大ヒットを記録していますが、イギリスでは、アルバム「McCartney II」に収録のバージョン(ポールのソロによるテクノポップ風のアレンジ)が使われた(全英2位)のに対して、アメリカでは、イギリス盤のシングルではカップリング(シングルのB面)として収録されていた、ウイングスによる1979年のイギリス・グラスゴーでのライブ・バージョンがA面としてリリースされ、見事全米No.1ヒットに輝いています。

このライブ・バージョンですが、2011年の「McCartney II」(アーカイヴ・コレクション)の発売時のスペシャル・エディションに収録されたのが、編集されていないフル・レングス・バージョン(4:10)であるのに対して、今回は演奏の途中の一部が編集によってカットされているオリジナル・シングル・バージョン(3:50)での収録(演奏後のMCも含む)となったことから、リマスタリング音源としては初登場となります。


32B: Secret Friend

オリジナルでは12インチシングル「Temporary Secretary」のカップリング曲としてフル・レングス・バージョン(10:32)にてシングルのB面に収録。そのフル・レングス・バージョンが2011年発売の「McCartney II」(アーカイヴ・コレクション)のボーナス・トラックとしても収録されました。

今回、「The 7″ Singles Box」に収録されたのは、新たに7インチ用として5:14に編集されたエディット・バージョンになります。


33A: Ebony and Ivory

ポール・マッカートニーの再発プロジェクト、アーカイブ・コレクションの基本的なコンセプトは、ポールの過去の代表作(アルバム)をボーナストラック付き(オリジナル・アルバム単独でのリリースも含む)かつリマスタリングを実施したうえで高音質にてリリースするというものです。

これまでアーカイヴ・コレクションとしてリリースされた作品の大半は、オリジナルのマスター・テープに最新のリマスタリングを行って音質を向上させるというものでしたが、唯一、再発売時にリミックスが行われた作品があります。

その作品が、「Tug Of War」です。

1982年にオリジナル盤が発売されたアルバム「Tug Of War」は、2015年にアーカイヴ・コレクションとして再発売された際に、オリジナル・アルバムの部分がリミックスされました。

したがって、オリジナル・ミックスのリマスター音源は、今回の「The 7″ Singles Box」でのリリースが初登場となります。


ポール・マッカートニー(1982年当時)


34A: Take It Away

35A: Tug of War

35B: Get It

アルバム「Tug of War」収録のシングルには、アルバムに収録された曲とシングル・カットされたものとの間のバージョン違いが存在する楽曲があります。

「Take It Away」、「Get It」は、アルバム・バージョンでは、前後の曲とクロスフェードで曲の一部が被さっているのに対し、シングル・バージョンでは、その被っている(別の曲の)一部分が消去されています。

また、「Tug of War」は、アルバムではイントロの前に効果音(綱引きをする男性の掛け声)が挿入されていますが、シングルでは、その効果音がカットされ、いきなりポールのボーカルから始まる構成になっています。(アウトロも、アルバムでは次曲(「Take It Away」)とのクロスフェードになっているのに対し、シングルではそのままフェードアウトしていきます)


37A: Pipes of Peace

1983年発売のアルバム「Pipes of Peace」のタイトル曲で、シングルとして発売されイギリスでは全英チャートにてNo.1となっています。

イントロの前に効果音がプラスされているアルバム・バージョンが、2015年のアーカイヴ・コレクション発売時にリマスターされましたが(2016年発売のベスト・アルバム「Pure McCartney」にも、このアルバム・バージョンが収録)、シングル・バージョン(効果音なし)でのリマスター音源は、今回の「The 7″ Singles Box」でのリリースで初登場となりました。


38B: No More Lonely Nights (Playout Version)

1984年のヒット・シングル「No More Lonely Nights」(全米6位)のカップリング曲。ヒットしたシングルのA面がお馴染みのバラードなのに対し、カップリング曲である本ナンバーは、同曲のディスコ・バージョンになります。

2001年発売のベスト・アルバム「Wingspan: Hits And History」にて初めてデジタル・フォーマット化(当時の主流はCD盤)されましたが、アーカイヴ・コレクション以降のリマスター音源としては、今回のボックス・セットにて初収録となっています。


39B: We All Stand Together (Humming Version)

シングルA面の「We All Stand Together」は、アニメーション映画「ルパートとカエルの歌」の主題歌としてリリースされ、全英3位のヒットを記録し、2016年発売のベスト・アルバム「Pure McCartney」にリマスター音源にて収録されましたので、今回のボックス・セットでは初登場ではありません。

一方、「 We All Stand Together (Humming Version)」は上記シングルのカップリング曲で、ポールのボーカルが入っていない(アレンジも異なる)バージョンとなります。(今回の「The 7″ Singles Box」で初のリマスター音源での収録となります)


40A: Spies Like Us

ジョン・ランディス監督の映画『スパイ・ライク・アス』(1985年公開)の主題歌で、ポールにとって現時点で単独名義での全米最後のトップ10ヒットとなっています。

本曲は元々シングルのみのリリースであることから、1993年発売の「The Paul McCartney Collection」シリーズにて再発されたアルバム「Press to Play」のボーナス・トラックとして収録されていた貴重なトラック(1993年当時のリマスター音源)でしたが、今回のシングル・ボックスの登場で、2022年最新リマスターによる音源でのリリースが実現しました。


41A: Press [Video Edit]

41B: It’s Not True

42A: Pretty Little Head (Remix)

42B: Write Away

43A: Stranglehold

43B: Angry (Remix)

44A: Only Love Remains

44B: Tough on a Tightrope

1986年発売のアルバム「Press to Play」は、ポリスやフィル・コリンズのアルバム・プロデュースを手掛けた(当時の)新進気鋭のプロデューサーであるヒュー・パジャムを迎えて制作した意欲作でしたが、結果は全米チャートで最高位30位と、ポールの作品の中では、最も商業的に失敗した作品となってしまいました。

このように、ポールの作品の中では、評価の低く、セールス的にも成功したとは言い難いアルバムであることから、「Press to Play」が今後アーカイヴ・コレクションとして発売される可能性はほとんど無いと言っても決して過言ではないでしょう。

The 7″ Singles Box」には、シングルとしてリリースされた作品の(ほとんど)全てが収録されたことで、こうした一見、日の当たらない作品(アルバム)の収録曲についても、最新リマスター音源にて聴くことができます。

ちなみに、上記の「Press to Play」収録曲のうち、「Stranglehold」と「Tough on a Tightrope」は、アルバム収録と同じバージョン、それ以外の楽曲は、シングル・バージョン(=アルバム収録の楽曲とは異なるバージョン)となっています。

なお、2016年発売のベスト・アルバム「Pure McCartney」には、上記の「Press to Play」収録曲のうち、「Good Times Coming / Feel The Sun」が最新(2016年)リマスター音源にて収録されています。


45A: Once Upon a Long Ago

45B: Back on My Feet

1987年に発売されたベスト・アルバム「All The Best!」に収録された(当時の)新曲で、UK(全英)チャートでは最高位10位まで上昇するスマッシュ・ヒットとなりました。

なお、今回のボックス・セット「The 7″ Singles Box」に収録された「Once Upon a Long Ago」は、「All The Best!」収録のバージョンとはエンディングが異なるシングル・バージョンとなります。

(つづく)


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