2015リミックスで蘇ったポール・マッカートニー『タッグ・オブ・ウォー』
・【前編】USオリ盤で聴くポール・マッカートニー『タッグ・オブ・ウォー』
2015年10月2日、遂に、ポール・マッカートニーのアーカイヴ・コレクション第8&9弾、『タッグ・オブ・ウォー』&『パイプス・オブ・ピース』が発売されました。
今回の最大の目玉は、アルバム『タッグ・オブ・ウォー』がポールの立会いのもとアビイ・ロード・スタジオにてアナログ・マルチ・テープから新たにリミックス~マスタリングされたことです。
今回の記事では、このリミックスによって生まれ変わった『タッグ・オブ・ウォー』の新たな魅力を中心に紹介していきます。
①タッグ・オブ・ウォー
【2015年リミックスの特徴】
イントロの綱引きの掛け声(SE)を聴いた瞬間、ポールのファンの方ならば、このリミックスの成功を疑う人はいないでしょう。
声の響きの美しさ、リアルさが違います。
まず、アルバム全体に言えることですが、ポールのヴォーカルがエコー感とともに前面に出てきています。
このヴォーカルのリミックスがとにかく素晴らしい。
このヴォーカルだけでも、一聴の価値があると言えます。
それに加え、この曲では、ジョージ・マーティンのアレンジしたストリングスの深遠さと、アコースティック・ギターの音色のリアルさに只々驚かされます。
最後に、オリジナル・ミックスでは聴こえないリンダのコーラスは必聴モノです。
②テイク・イット・アウェイ
【2015年リミックスの特徴】
イントロから繰り出されるリンゴ・スターとスティーヴ・ガットのツイン・ドラムに絡みつくポールのベースの粘っこさ。このベースの音はオリジナル・ミックスでは聴けなかった音です。
とにかくポールのヴォーカルのエコー感が素晴らしい!
そして、このリンダのコーラスの透きとおるような美しさときたら…。
もはや、オリジナル・アルバムとは別物です。
③サムバディ・フー・ケアーズ
【2015年リミックスの特徴】
アコースティック・ギターをフィーチャーしたポールお得意のバラードですが、このリミックス版で聴くと、そのサウンドの骨格を担っているのは、むしろリンゴ・スターのドラムスだということがよく分かります。
ハイハットの残響音までくっきりと聴こえるリミックスの音の繊細さ…、素晴らしすぎます。
そして、ポールのベースの地を這うような低音の響き。
アコースティック・ギターの弦の擦れる音まで聴こえる音のリアルさ。
まるで、ポールが目の前で演奏しているかのようです。
④ホワッツ・ザット・ユアー・ドゥーイン
【2015年リミックスの特徴】
ベースとドラムスのコンビネーションがもの凄い迫力で迫ってきます。
軽さというより、粘っこさが際立つ音色。
今回のリミックスによりさらに際立つようになったグルーヴ感!!!
アナログ・レコードよりはるかにパワーアップしたブラック・コンテンポラリー・サウンドを楽しんで下さい。
この宇宙の果てから聴こえてくるようなシンセサイザーは、オリジナル・ミックスでは聴こえませんでしたし、最後に、フェイドアウトするエンディングで聴こえるボーカルも、もちろん初めて耳にする音になります。
⑤ヒア・トゥデイ
【2015年リミックスの特徴】
アコースティック・ギターとストリングスの弦の響きが、オリジナルとは全く違います。
それは、まるで、クラシックのコンサート・ホールで聴いているかのよう…。
そして、ポールのボーカルの物凄いエコー感…。
このアルバム(2015年リミックス)の中で、最高のヴォーカルです。
何度聞いても鳥肌が立ちます。只々素晴らしい。
ビートルズ・ファンの方で、このリミックスに涙しない方はいないと断言します。
もう何も言うことはありません。
⑥ボールルーム・ダンシング
【2015年リミックスの特徴】
今までの曲(アナログ・レコードのA面に当たります)がオリジナルと別物に生まれ変わっていたのに対して、この曲は比較的オリジナルに近い音像が展開されます。
そんな中で、サビのコーラスのラスト、「big B.D」の所で、オリジナル・ミックスでは聴こえない声(コーラス)が確かに聴こえます。
エンディングのブラスの残響音は、聴いてのお楽しみ。
⑦ザ・パウンド・イズ・シンキング
【2015年リミックスの特徴】
ドラムスの力強さ、エレクトリック・ギターの音色の豊かさ、全てが混然一体となるサウンドの妙が味わえます。
さらに、コーラスがさらに力強くパワーアップ。
コインのSEの音が本当にリアルです。
⑧ワンダーラスト
【2015年リミックスの特徴】
力強いバスドラ、地を這うようなベース、美しいアコースティック・ギター、ブラスとストリングス、オリジナルでは聴こえないパーカッションの響き。
そして、地平線の彼方まで伸びていくようなポールのヴォーカル。
この曲の世界観を見事に表現した素晴らしいリミックスです。
⑨ゲット・イット
【2015年リミックスの特徴】
このアルバムはベースが余り目立たないのですが、この曲では、素晴らしい低音のベースが全開です。このアルバムの中で最高のベースはこの曲で決まりです。
二人のデュエットが本当に楽しそう!
⑩ビー・ホワット・ユー・シー
【2015年リミックスの特徴】
オリジナルと余り違いが見られない唯一の曲です。
⑪ドレス・ミー・アップ・アズ・ア・ラバー
【2015年リミックスの特徴】
全曲のエンディングから怒涛のごとく始まるイントロがもの凄い迫力です。
ヘビーなドラムスと、地を這うような音色のベース、スパニッシュ・ギターのリアルな響き。
オリジナルには無かった力強さとしなやかさが宿っています。
⑫エボニー・アンド・アイボリー
【2015年リミックスの特徴】
最後はお馴染みの大ヒット曲がパワー・アップして登場しました。
ブラスの透きとおるようなエコー感、
ポールとスティーヴィーの完璧なデュエット。
もう何も言うことはありません。
思う存分二人のハーモニーを楽しみましょう!
(エンディングにオリジナル・ミックスでは聴こえない声が入っています)
ここまで読んで頂いた方なら、この「タッグ・オブ・ウォー」の2015年リミックスは絶対に買いだ!ということに疑いの余地がないことはお分かり頂けると思います。
このアルバム、元々ポールのソロ・アルバムの中では『バンド・オン・ザ・ラン』と並ぶ最高傑作なので、オリジナルのままリマスターしても十分素晴らしかったはずですが、この2015年リミックスによって、オリジナルの100倍(決して大げさな表現ではありません)パワーアップして登場しました。
不覚にも、私は、5曲目の「ヒア・トゥディ」の
holding back the tears no more の歌詞のところで涙してしまいました。
それぐらい、今回のリミックスは、原曲の持つコンセプト(特にジョンに捧げたこの曲ではそれがよくわかります)を忠実に音像に反映させています。
今回のリミックスには、ポール本人が立ち会っており、しかも、全てのリミックスを終えるまで1ヶ月も掛けています。
実際にアルバムを聴けば一目瞭然ですが、リミックスしたエンジニアとそれに立ち会ったポールの気持ちが、一つ一つの音に乗り移っており、それ故に、聴く者に勇気とエネルギーを与えてくれるのでしょう。
まさに、今回の『タッグ・オブ・ウォー』(2015リミックス)は、私のような古くからのポール・ファンはもちろん、初めてこのアルバムを聴く方も含めて、全てのリスナー必聴のマスト・アイテムに仕上がっています。
関連記事
USオリ盤で聴くポール・マッカートニー『タッグ・オブ・ウォー』
リンダのコーラスに圧倒される!ハイレゾで聴くポール・マッカートニー・アーカイヴ・コレクション『ラム』
人気記事
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?