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初心者からマニア向けまで、ポール・マッカートニーのおすすめのベスト・アルバムを徹底解説

元ビートルズのメンバーであるポール・マッカートニーが、今年の4月28日から6月16日にかけて、全米13都市で14公演を行なう北米アリーナ/スタジアム・ツアー「Got Back」を発表しました。

本日の記事では、ポール・マッカートニーのおすすめのベスト・アルバムについて、初心者からマニア向けまで、音質、収録曲のバージョン違いにも言及しながら徹底的に解説していきます。


ポール・マッカートニーのベスト・アルバムは、これまでに以下の4枚が発売されています。

①「Wings Greatest」(1978年)

②「All the Best!」(1987年)

③「Wingspan: Hits and History」(2001年)

④「Pure McCartney」(2016年)


結論から言うと、初心者におすすめなのが①と④、マニアならば揃えておきたいのが③。そして、②は不要ということになります。

ここからは、各アルバムごとにその理由を説明します。


ポール全盛期(1970年代)のヒット曲が満載の「Wings Greatest」

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Wings Greatest

ビートルズ解散(1970年)と同時に、ポールはソロ活動を開始します。

その後、自らのパーマネント・バンドであるウイングスを結成し、79年の解散まで、文字通り、70年代をほぼウイングスとして駆け抜けていきました。

そのウイングス時代を総括するのが、この78年発売のポール初のベスト・アルバム「Wings Greatest」です。

このアルバムの最大の売りは、ビートルズ解散後のポールのソロ活動の中で、最も脂の乗りきった、正に全盛期のヒット曲がほぼ収録されている点です。(「もれなく」ではなく「ほぼ」という表現にしている理由については後述します)

ソロ転向後初のシングル「Another Day」(71年)から、78年発売の全米ナンバーワン・ヒットの「With a Little Luck」まで、収録曲全12曲中半数の6曲が全米・全英No.1獲得曲で、残りの6曲中5曲が全米・全英の両方でトップ10ヒットとなっています。

残念なのが、ポールの代表曲の一つであり、かつ75年の全米ナンバーワン・ソング「Listen to What the Man Said」が収録時間の関係でオミットされている(=収録が見送られている)ことです。(当時の主流フォーマットであるアナログ・レコードでは、その物理的な限界から、一定レベル以上の音質を担保するためには、収録時間に制限(約45分)をかけざる負えませんでした。)

また、70年代のウイングス時代のベスト盤であることから、80年代以降のヒット曲は収録されておらず、ポールの全キャリアを網羅したものとは言えません。

しかし、前述した通りポール全盛期のヒット・シングルをほぼ網羅していること、2018年最新リマスターが施され音質がアップ(CD、ストリーミングとも)していることを考慮すると、ポール初心者にはおすすめのベスト盤であることは間違いありません。


今となっては存在価値がなくなってしまった「All the Best!」

ポールにとっての2枚目のベスト・アルバムは、1987年に発売された「All the Best!」です。

このアルバムは、70年代のウイングス時代のヒット曲に、ウイングス解散後の80年代の楽曲を加えた、ポールの全キャリアの中でのヒット・シングルをほぼ網羅した選曲になっています。(このベスト・アルバムに収録の(当時の)最新シングル「Once Upon a Long Ago」を最後に、ポールは全米・全英トップ10シングルを出せていません。(コラボ・シングルを除く))

しかし、このベスト・アルバムは、現在では不要となってしまいました。

理由の一つは、現在の基準では、80年代半ばにリリースされた本作は、音質があまりにも悪いからです。

また、リリース当初は、貴重なシングル・バージョンがいくつか収録されていたことで価値があったこの「All the Best!」でしたが、後述する「Wingspan: Hits and History」にその(貴重なシングル・バージョンの)ほとんどが収録されたことで、音源の希少性としての価値も喪失してしまっています。


貴重なシングル・バージョンが多数収録された「Wingspan: Hits and History」

2001年に発売された3枚目のベスト・アルバム「Wingspan: Hits and History」のコンセプトを一言で言い表すなら、故リンダ・マッカートニー(ポールの最初の妻であり、ウイングスのキーボード・プレイヤー)への鎮魂歌(レクイエム)です。

その証拠に、名だたるヒット・チューンに並んで、故リンダに向けた極めて私的なラヴ・ソング「The Lovely Linda」をはじめとする、リンダとの思い出の(シングルではなくアルバム収録の)曲が多数収録されているのです。

また、発売当時は最新であった24bitデジタル・マスタリングの音質も、その後発売されたアーカイヴ・コレクションや後述する最新ベスト「Pure McCartney」のリマスタリング音質に比べればどうしても見劣りしてしまうことは否めません。

しかしながら、そんな「Wingspan: Hits and History」も、マニアにとっては、決して見逃すことのできないマスト・アイテムです。

なぜなら、この「Wingspan: Hits and History」には、ポールのヒット曲の貴重なシングル・バージョンが多数収録されているからです。


ポールのシングルには、いくつかのパターンでアルバム・バージョンとシングル・バージョンとで違いが生じている曲が多数あります。

パターン①:アルバム・バージョンには、曲の冒頭にSE(効果音)等がプラスされているパターン

例:Listen To What The Man Said、Pipes Of Peace、No More Lonely Nights

パターン②:アルバム収録時に、曲の冒頭またはエンディングが、クロスフェードにて前後の曲と一部被っているパターン

例:Uncle Albert / Admiral Halsey、Take It Away

パターン③:①と②の両方に該当するパターン

例:Tug Of War

パターン④:シングル発売時に、曲の一部が編集され、演奏時間が短くなっているパターン

例:Junior's Farm、Venus And Mars / Rockshow、With A Little Luck、Waterfalls

この、「Wingspan: Hits and History」には、上記の曲のシングル・バージョンが全て収録されており、かつ、そのうち、「Junior's Farm」と「Waterfalls」については、後述の「Pure McCartney」には収録されていないことから、バージョン違いに拘るマニアには貴重なベスト・アルバムとなっています。


ポールの名曲の数々を最新リマスターで聴ける「Pure McCartney」

最後に紹介するのは、ポールの最新ベスト・アルバム(2016年発売)の「Pure McCartney」です。

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Pure McCartney

この最新ベスト盤の最大の魅力は、1970年のソロ第1作目のアルバム
「McCartney」から、2014年に発売されたシングル「Hope For The Future」までの、ポールのほぼ全キャリアを網羅する選曲となっていることです。

しかも、これらの名曲群が、2011年以降の過去のソロ・オリジナル・アルバムの再発企画であるアーカイヴ・コレクションの高音質リマスター音源で(ただし、本アルバム発売時点でアーカイヴ・コレクションとして未発売のオリジナル・アルバム収録曲は、2016年最新リマスター音源にて)収録されています。

選曲と音質面から、現時点で、この「Pure McCartney」が、ポール初心者向けに、最も最適な選択肢になることは、間違いないでしょう。


一方でマニアにとっても嬉しいのは、前述のアーカイヴ・コレクションでの未発売の(かつ今後も発売の見込みが無いと想定される)アルバム、

具体的には、

「Give My Regards to Broad Street」(1984年)

「Press to Play」(1986年)

「Off the Ground」(1993年)

「Chaos and Creation in the Backyard」(2005年)

「Memory Almost Full」(2007年)

「Kisses on the Bottom」(2012年)

「New」(2013年)

の収録曲(その全てがシングル曲という訳ではありませんが)が高音質リマスター音源で聴けるという点でしょう。


一方で残念なのは、前述のアーカイヴ・コレクションを基に選曲していることから、「Wingspan: Hits and History」の部分でも触れた多くのシングル曲が、シングル・バージョンではなくアルバム・バージョンにて収録されてしまった点です。

しかし、これだけのキャリアに亘る代表曲を、最高のリマスタリング音源で聴けるという点で、ポール初心者からマニアまで、十分に満足することのできる最高のベスト・アルバムだと言っても過言ではありません。

ぜひとも、2枚組の通常盤ではなく、収録曲の多い4枚組の「デラックス・エディション」で聴いていただけたらと思います。


ここまでポール・マッカートニーのベスト・アルバムを振り返ってきましたが、改めてこれらのアルバムを聴いてみて痛感したのが、ポールの溢れんばかりの、そして決して衰えることのないソング・ライティングの才能です。

是非ともこれらのベスト・アルバムを通して、その素晴らしい名曲群を堪能していただけたら、筆者としてこれに勝る喜びはありません。


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