巡る夜空、煌く蒼流 ~prism spiral読解~

※本稿は筆者がアイカツ!シリーズオンリーイベント『芸能人はカードが命!20』にて頒布したコピー本『君は光るダイヤモンド~ver.オフライン~』に収録した文章をnote投稿用に微修正したものです。

楽曲“prism spiral”。数多のアイカツ!楽曲の中でも特に人気の高い一曲です。もちろん私も好きです。
霧矢あおいがソロ歌唱を務めるこのprism spiralですが、歌詞にふわ付いた印象を抱いているという方が多いように思います。
そういう私もあまりこの楽曲について深く考えたことが無いんですよね(主にあおいちゃんの可愛さに意識を持っていかれるため)。ということで、この機にprism spiralという楽曲に向き合ってみようと重い腰を上げました。
読み物というよりは考察列挙の形になってしまうのですが、皆様のprism spiral解釈の手助けとして活用いただければ嬉しいです。
では1節目から触れていきます。

『恋はShoot,shoot』

タルト・タタンのお話(最下部にリンク載せときます)でも述べましたが、「恋」という言葉について劇場版アイカツ!に登場したシンガーソングライターの花音が触れています。その箇所より、改めてアイカツ!において“憧れ=恋みたいな気持ち”と形容する文脈が存在すると仮定しましょう。
では、この仮定を引用した場合、すなわち「霧矢あおいが『憧れ』を謳っている」とした場合、その憧れの対象は何になるのでしょうか。
結論から述べるとすれば、それはアイカツの世界、アイドルという存在そのものであると考えます。
あおいは幼少期からアイドルに魅力を感じていました。2話の彼女は幼少期を振り返りながら、こう語ります。

「そんなある日、私はアイドルを初めて知った。ドキドキした。どこか堅苦しいお稽古事とは違ってた」

あおいにとってアイドルとの出会いはとても印象的な出来事であったことが窺えます。では、そのとき感じた魅力は憧れまで昇華する物でしょうか。
あおいが憧れについて語るシーンは多々あります。例えば、フューチャリングガールや美月に対して。また、文化系アイドルグッピーが大好きであるという話もありましたね。
しかし、あおいが最初に自分の理想について語った時の話題は何であったかを思い出すと、2話における先ほどのセリフに続くこの箇所になるのではないでしょうか。

「自由に笑って歌って踊って輝いている姿に憧れたんだと思う」
「そしていつからか自分もアイドルになりたいと思うようになった」

やはり、あおいは「アイドル」という存在自体に憧れていると考えられます。
prism spiralの歌詞に含まれる恋という言葉から来る憧れの概念と、あおいのアイドルへの憧れ。これらを結びつけて、prism spiralは「あおいのアイドルへの憧れ」を表していると考えました。
この仮定を元に、prism spiralを紐解いていきましょう。

『ミラクルをよりどりみどり カッコつけた星たち キラリ
キュンとしてる真昼の月と マワル 踊る』
 
「真昼の月」から拾っていきましょう。
アイカツ!における月という単語から、神崎美月が連想されます。第49話のドレスアップシーンで背景に月が浮かび上がったことからも、公式から美月=月のイメージを固めていることが窺えます。 自身の立ち上げたブランドLove Moonriseにも月(Moon)が入っていますね。よって、この「月」は神崎美月を表しているとします。
では、それに対して「カッコつけた星たち」は何を示しているのでしょうか。このカッコつけた星たちは「真昼の月とマワル 踊る」、つまり月と一緒に踊っています。
トップアイドルである神崎美月と並んで踊るような存在とは何か。答えは自明ですね。星たちはアイドルたちを表していると考えられます。
「ミラクルをよりどりみどり カッコつけた星たち キラリ」についても拾いましょう。あおい目線を前提とすれば、アイドル一人一人が特技や個性を自分の武器としてアイカツしている様子を表しているように感じます。2話でスターライト学園に踏み入れたあおいがぺろりん様を始めとする個性豊かなアイドル達に心奪われている姿からも説明が付くでしょう。
「ミラクルをよりどりみどり」→沢山の個性
「カッコつけた星たち キラリ」→それを纏ってアイカツするアイドルたちが輝いている様子
といった構造です。
さて、「真昼の月」に戻ろうと思うのですが、どうして「月」ではなく「真昼の月」なのでしょうか。
これについて、アイカツ!の劇中でアイドルとしての転換点となる出来事・会話が、夜に行われる傾向にあることを関連付けて考えます。
例えば、スターライト学園の東屋でいちごと美月が会話するシーンや、いちごがかえでからアメリカの話を聞くシーン。これらは夜に行われています。71話であおいがいちごとの会話で自身の在り方に気付かされるシーンも、夜の山中での出来事でしたね。
そもそも本来、月と星が輝く時間帯は夜。月星の輝きに触れることの出来る舞台は夜なのです。すなわち、夜はアイドルの世界を示すと考えます。
そうしたとき、夜と正反対にある昼は、我々ファンのいる世界であるとしましょう。昼に地上から星を見ることは難しいですが、月は辛うじて目視で確認することが出来ます。昼に地上から観測することが出来るのは、アイドルという夜空の世界でも一際大きく輝く月だけなのです。よって、ここではアイドルの世界と我々ファンの世界について
昼⇔夜
地上⇔空
という二つの例えを持って別離していると捉えます。そして「真昼の月」という言葉から、我々はアイドルの世界の片鱗にしか触れることが出来ないと暗に示されているように感じます。

『舞い上がるロマンス 旅立つ瞬間
いくつものキラキラを 散りばめてMy friend 光れ!』

そもそもロマンスって何なのでしょうか。私はオタ芸で一番有名なあの動きしか知りません。今一度調べてみましょう。

ロマンス(romance)
1 空想的、冒険的、伝奇的な要素の強い物語。特に中世ヨーロッパの、恋愛・武勇などを扱った物語をいう。ロマン。
2 恋物語。恋愛小説。
3 叙情的な内容の歌曲あるいは小規模な器楽曲。
4 男女の恋愛に関する事柄。恋愛事件。

1の意味を引用しましょう。アイドルの世界は我々ファンにとって別世界。いわば、夢まぼろしの世界にあると言っても過言ではありません。そんな世界に向けて「旅立つ瞬間」。語り部がアイドルの世界に足を踏み入れた姿がイメージできます。
「My friend 光れ!」という一節も、いちごにアイドルとしての才能を見出してスターライト学園編入試験に誘ったあおいの心情が感じられるようですね。

『I love you I want you I need you. かなり
たどりついた夢のほとり
口びるにメロディーと 魔法かけたまま どこまでも・・・
いろとりどりのloop 描いてた』

「たどりついた夢のほとり」もまた、アイドル世界の縁に立ったことを表しているように感じられます。

そんな辿り着いた夢の世界=アイドルの世界において、メロディー(音楽)と魔法(ドレス)を持っていろとりどり(個性)のloopが描かれていた、と読み解きました。

では、loopは何を指し示しているのか。
 先程、アイドルの世界は夜空であると述べました。
月や星々といった天体は、我々のいる地上から見たとき、いつも同じ軌道上を回っています。この夜空に描かれる軌道がloop。それを描くことがアイドル界の一員になった証となる、という捉え方をしました。
語り部が夢のほとりに辿り着いて星々のloopを眺めている光景。そこから、あおいがアイドルの世界に踏み入れた姿を想像出来ます。

続いて2番。

『スピードにときめきながら ずっと信じてる明日 チラリ
あなたへの光の中で ウタウ 誘う』

目まぐるしく過ぎ去っていくアイドルとしての日々を駆け抜ける様子が示されているようです。ずっと信じてる明日=理想のアイドル像がチラリと覗いているということでしょうか。そして、あなた=アイドルであるとすれば、輝かしい夢に向けて邁進している姿が想像できます。

『飛び込んだロマンス まあるく響きあう
たいせつなキラキラを 抱きしめてMy heart 照らせ!』

先程、ロマンス=夢の世界=アイドルの世界であると述べました。そこに「飛び込んだ」ということは、語り部がアイドルの世界に今存在していることを示しています。そして「まあるく響きあう」。私がロマンスに飛び込み、その世界で響き合っているということでしょうか。
また、同一のパートで先ほどは「My friend」であったのに対して、このパートでは「My heart」になっています。自身の心に従って、自身のアイカツの在り方を見つけたように感じられます。「照らせ!」は空を見上げる立場から、自ら空で輝いて夜闇を照らす存在になったことの暗示でしょうか。

『I love you I want you I need you. ふたり
見つめ合えた虹のほとり
メロディーに光る渦 少しずつのせて いつまでも・・・
紡ぐキラメキloop 恋してた』

「見つめ合う」というのは、視線の交錯を示します。では、本稿で扱った“視線”はどのようなもながあったでしょうか。
それは地上から夜空の月星を見つめる視線でした。
そして「見つめ合えた」は可能を表す文体です。よって以前は不可能であったことが可能になったと考えられます。一方的に見つめるだけであった存在と見つめ合えるようになった。それはすなわち、アイドルという概念と見つめ合えるようになったということでしょうか。
また「紡ぐ」というのは何かと何かをつなぐ行為。そしてloopを紡ぐというのは、そのloopの中に組み込まれるということ。すなわち、アイドルの世界にようやく深く踏み入ることが出来たことを示しているように思います。

『見つけたよロマンス 気づいた瞬間
とっておきのキラキラを 振りまいてMy Soul 光れ!』

My SoulはMy heartに似ていますね。自身の心に正直にいたいという気持ちが伝わってくるようです。そして「光れ!」。自身を見つめている一節に感じられます。
このサビ前パートの最後のワード変化に注目です。
『My friend 光れ!』は友人が輝くことを望んでいます。
『My heart 照らせ!』は私の心が輝くことで他人を輝かせることを望んでいます。
『My Soul 光れ!』は私の魂が輝くことを望んでいます。
少しずつ自分のための願望に変化している様子が分かるかと思います。そこから、少しずつ自分というアイドル像を明確なものとして成長する姿が思い描かれるようです。

『I love you I want you I need you. つまり
あこがれた恋の始まり
輝きにひびくうた 光の粒がそう 線になる・・・
軌跡描いてloop つながった』

「恋の始まり」は、憧れと自身が結びついたこと。
「輝きにひびくうた」は輝かしい世界に自身の歌声が、響き渡ること。
そして「光の粒がそう 線になる・・・軌跡描いてloopつながった」は自身の小さな輝きが集まってloopを形作る一つになったことを表していると捉えました。つまり、ここでようやくアイドルの世界に煌めく一つの星として認められたと考えられます。

最後になりますが、最も「prism spiralの霧矢あおいらしさ」を感じさせる一節は間違いなくこの箇所であると思っています。

『恋はShoot,shoot
たまにCute,cute
いつもLove you』

察しの良い方であれば何でここに触れてないんだと思ったかもしれませんね。
まずは「恋はShoot,shoot」。これについて、冒頭で引用したあおいのセリフを再び持って来ましょう。

「そんなある日、私はアイドルを初めて知った。ドキドキした。」

突然の出会いに胸を打ち抜かれたのがあおいとアイドルとの出会いでした。

次に「たまにCute,cute」
cuteの直訳“可愛い“は情愛や愛着といった意味を示します。それは憧れ=理想とする物事に焦がれるような思いを抱くこととは違った感覚であると考えます。
しかし、あおいはアイドルであると共にアイドルのファンでもあるのです。つまり、アイドルに対する憧れとアイドルに対する情愛は彼女の中で共存し得ます。

そして「いつもLove you」。
自身がアイドルかつアイドルファンであるあおいにとって、アイドルとは正しく人生そのもの。いついかなる時も愛すべき存在であり、愛すべき居場所であることでしょう。

この一連の歌詞が歌最初に配置してあることから、主張が更に強調されているような印象を覚えます。まさしく、霧矢あおいのアイドルに対する思いがギュッと詰め込まれているように感じられました。

以上、私がprism spiralの読解に挑んだ結果です。いかがだったでしょうか。
本稿を読んだあなたが改めてprism spiralを聴いた時に少しでも今回の話を思い出してくれたなら、心に刺さる箇所があったなら、こんなにも嬉しいことはありません。
これからも世界がprism spiralと霧矢あおいを愛してくれますように。


※上記『タルト・タタンのお話』


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