#27 つるん→なつきさん(2019/06/24)

なつきさんへ

お手紙ありがとうございます。
『スイミー』の便箋と封筒、とても素敵でした。なんだか、水の街から届いた手紙のようでした。
水の街というのは、僕が小さい頃からずっと抱えている架空の街のことです。水の中に石造りの街並みが広がっているんです。名前は分かりません。街に水が満ちた経緯を知る人ももういません。街で一番高かった塔の先が水に浸かった頃、どこからか一尾の大きな魚がやってきて、主となり、職人たちの工房が軒を連ねる路地を、大聖堂の天井を、もう何百年も、優しく撫でるように泳ぎ続けています。
『スイミー』で描かれた海の色は、その街の水の色によく似ています。透明だけれど、流れや揺れに色を変え、厚みを持ち、深い。建物の石は、同じくレオ・レオニの『ぺツェッティーノ』に出てくる“ぶぶんひん”のような感じです。おひさまに愛されたオレンジのような色。それが長い年月の末に水に洗われ深い青に染められたイメージです。他にもレオ・レオニの絵本からたくさんイメージをもらっていると思います。
なつきさんは、「誰も知らない」という童謡を知っていますか? 小学校の歌の本(なつきさんの学校にもありましたか?)に載っていて、“シュビズビズババ”という不思議な言葉が使われています。その歌がいつも水の街のイメージと共にあって、ふと思い出した時、口ずさみます。
昔から、ぼんやりと、そういう自分だけの物語の中に生きているようなところがありました。古い家の暖炉の上やランプの灯りしかない地下室の片隅に残された、写真や絵だけでその存在が語り継がれてきたような街が、まだ世界のどこかで眠っているのだと。人にはなかなか理解されず、「あぁ、この人は頭の中がお花畑ボーイなんだ」と思われるのであまり話したことはありませんが。
でもなつきさんなら、「わぁ!」と言って聞いてくれそうな気がします。人の持つ物語を、それがたとえ空想であっても、丁寧に耳を傾けてくれる、そんな人ではないかと思っています。人への興味が尽きないというか、その人の人生を聞きたくてたまらなくなってしまう愛くるしい好奇心を持っているというか。なつきさんはそういう印象です。
チョコミントの紅茶、初めて飲みました。チョコミント味には目がないので、部屋に常備しておきたくなりました。
婚約のお祝いの言葉、ありがとうございます。
スイミーのように、一人を恐れず、立ち向かう時は一緒になって、この世界という大海原を2人で生き抜いていけたらと思います。
「この現代社会を一緒に生き抜いていくぞ! 結婚するぞー!」
「おーっ!」
これがプロポーズの言葉でした。変な2人です。笑

としより

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#20 なつきさん→つるん(2019/06/12)

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つるん(文筆家)

文筆家、詩人、編集者、ネット番組専門の構成作家などをしています。 物書きです。「ペーパー・プレーン・レターズ」という、向かい合って紙飛行機を投げ合うように手紙をやり取りする企画をやっています。ぜひご覧くださいませ。

ペーパー・プレーン・レターズ

「ペーパー・プレーン・レターズ」とは、文筆家のつるんが様々な人と手紙をやり取りする企画です。 ①5通ずつ手紙をやり取りする ②やりとりの仕方は自由 (手紙、メール、チャットなど) ③期間は、ひと夏 手紙は、送った順、届いた順に掲載していきます。
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