見出し画像

あの糸

 瞼をひらくと、天から一本の糸が垂れ下がっているのが見えた。
 積極的にここから抜け出したいというわけではなかったが、ここであきらめたら先には間違いなく地獄が待っている。
 すがる思いで糸に向かって手を伸ばした。
 先端に結ばれた玉を握り締め、腕に力を込める。そう遠くない場所で、カチリ、と金属がこすれ合う音がした。
 その時、青白い光がこの目を貫いた。
 部屋が明るくなった。

ここから先は

0字

¥ 100

いつもサポートありがとうございます。 『この世界の余白』としての生をまっとうするための資金にさせていただきます。