誰かが創ったもので遊び、そこで受け取ったものを、ただ世界に返していく。

 遊ぶことに対する罪悪感が強すぎて、無意識のうちに自分を家の中に閉じ込めようとする癖がある。
「遊ぶのは、やることをやってからにしなさい」
 遊びに出かけようとしたら、頭の中でもうひとりの自分がこんなふうに責めてくるのだ。

 それでも、たまには遊びの予定を入れることがある。遊び始めると楽しくて、つい、いろんな誘いに乗ってしまう。
 そうやって遊び回っているうちに、罪悪感が膨らんでいく。楽しめば楽しむほど、『楽しんだのだから、その分、余計に頑張らなければ』と自分を追い込んだ。
 プレッシャーに強いタイプではないので、そのまま押しつぶされた。 
 長い間、そんなことを繰り返しながら生きてきた。

 ある時、ふと思った。
「やること」って何なんだろう。
 どこまでやったら、自由に遊んでいいという許可が下りるのだろう。

 学生時代のやることは「勉強」で、期末試験を終えたらいったんは解放された。フリーター時代のやることは「安定した職に就くこと」で、就職した時点でやはり自由になれた。

 じゃあ、今は?
 その疑問を持った当時、私は作家として十分な稼ぎを得ることを目指していた。どうやらその頃の私は「作家として十分な稼ぎを得られるようになること」をゴールに据えていて、それを達成するまでは自由に遊んではいけないと思い込んでいた。

 だけど、それっていつになるんだろう。
 仮にその目標を達成したとして、本当に私は自由に遊べるようになるのだろうか。
 想像してみての答えは「NO」だった。きっと、達成したら達成したで、また別の目標を掲げて、それを成し遂げるまでダメって言うんだ。
 だって、作家として十分な稼ぎを得られるようになったら、今度はその状態を維持するために頑張る必要が出てくるもの。
 良くも悪くも先の目標がなくなることはないだろう。このままじゃいつまで経っても自由に遊ぶことなんてできない。

 そんなことを考えながら迎えた今年の春。
 思いがけない出会いがきっかけで、『遊ぶことがそのまま仕事になる世界に生きたい』と思うようになった。
 新しい友だち――それも私の好奇心を強く惹きつけてくれる人たち――が増えて、遊ぶことへの欲求がこれまでにないくらい高まり、このエネルギーを抑圧せずに上手く回していくためには、遊ぶことをそのまま仕事にするしかないと思ったのだ。

『遊ぶことがそのまま仕事になる世界』を具現化するべく、夏頃から、なりふりかまわずに遊び回り始めた。これを機に、遊ぶことへの罪悪感を吹っ切りたいという想いもあった。

 それから半年近く遊び回っていただろうか。
 それまで近畿圏からほとんど出たことがなかったのだが、人から誘われるまま、東京、千葉、埼玉、静岡、福岡、長崎、沖縄など、さまざまな場所に足を運んだ。
 連れて行ってもらった先でいろんな人と出会って、そこで気が合った人たちとゆるい繋がりもできた。

 家にいる間も、友だちが起ち上げたプロジェクトに参加したり、同じ友だちと一緒にオンライン・コミュニティを作ったり、そのうち自分でも別のオンライン・コミュニティを作り始めたりして、結局、ずっと遊び続けていた気がする。

 パートナーさんとも、性愛の研究を始めとして、カップル向けの合宿を企画してみたり、彼が運営しているオープンソースハウスに一週間ほど滞在して連日軽いイベントを開催してみたり、やはり彼がやっている『オンライン文学部』でちょっと変わった読書会を体験してみたり、とにかくいろんなことをして遊んだ。

 遊びまくってお腹いっぱいになったら、そろそろ腰を落ち着けて、執筆活動に専念したくなった。
 それまでは面白そうだと思ったことには片っ端方首を突っ込む勢いだったけれど、しばらくはあまり予定を入れないことにした。

 家にいる時間が長くなった。
 やっと集中して書く時間を作ることができた。そう喜んだものの、いざパソコンに向かうと、書けない。本も読めない。漫画も無理。どうやら文字が駄目らしい。
 それなら別の遊びをしようと思ったけれど、無気力すぎて何も思いつかない。どうやっても楽しい気分になれない。

 朝起きてから夜眠るまでの間、布団の中やソファの上で空白の時間を過ごすことが増えた。
 何もしない時間ができると、嫌でも何か考えてしまう。自然とこれまでの自分をふり返ることになった。

 遊び回ることに何の意味があったのだろう。
 ただ、人が創ったものを消費するだけの行動に、何の価値があったというのだろう。

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