ごくうが行く:抱っこでご帰還

ごくうが来てまもなく、散歩から帰ると、1軒隣の小学高学年の男の子が家の横でキャッチボールをしていた。犬が好きらしく、ごくうを見るなり、キャッチボールをやめて近づいてきた。

「犬が好きなんです。でも、借家だから・・・」

ごくうを撫でながら残念そうにつぶやき、しきりにごくうを撫でまわす。ごくうも呼応し、身体をくねらせ、鼻泣きを繰り返す。母親も出ていたので、二人でも撫でまわす。

(よほど犬が好きなんだな)

ひとしきり遊んだごくうは納得したのか、お家にいそいそと帰還。帰れば、ガムが飛んでくる。

それから2度、3度とごくうの散歩から帰ると、自宅前で出会い、可愛がられていた。母親と帰宅時間が一緒になると、車から降りる母親を待ちわびている。

男の子が中学生になると、キャッチボールもしなくなり、ごくうが出会うこともなくなった。一度だけ公園で中学校から帰る男の子と出会い、声をかけてもらったが、すれ違いにごくうは散歩に出る。

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ごくうが散歩に出ると、やたら人と出会い、声をかけられる。昨夕も常連さんを含めて、最近引っ越してきた親子に出会い、帰宅が同じ方向で、連れ立って散歩しているようだった。団地に帰ってくると、すっかり中学3年生になった少年が車から降りるところだった。母親の妹も声をかけてきた。今、家を取り壊して同居しているという話だった。

少年は「近いうち、引っ越すんだぞ」とごくうに声をかけながら撫でまわす。用事があるのか、いったんごくうから離れたが、母親が車から降りてごくうを撫でまわすので、再び二人で撫でまわしにかかった。引っ越すと、ごくうを撫でることができなくなってしまうと思うのか念入りな撫で方だった。

ごくうは撫でられることには慣れているが、夕餉の時間だ。ちょうど帰宅時間と重なって、にぎやかな散歩帰りになった。

「ごくう、帰ろう」

足を踏ん張っている。母親の妹が笑う。親子が撫でる手が緩んだ時、ごくうに身のゆるみが出た。すかさず、ごくうを抱き上げ、「バイバイ」とごあいさつ。抱っこで帰還となった。多数の鉢ツツジの咲き誇る駐車場を通って。

足を洗い、口を漱ぎ、身体を拭いて、居間にダッシュ。ガムが飛んでくる。