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地球環境の悲劇/共有地の悲劇(Tragedy of the Commons:寓話)               環境問題のメカニズムの核心を突く!?    

※commonsコモンズ:共有地。性質上、共有地は人類などの生存・生息・生活環境を意味する。

千珠には珍しく『経済がよく分かる10章』などという本を手にしている。数学と経済学は千珠の範囲外なのに。※経済学は数学を欠かせない。

なになに、書名は『Bank of Englandイングランド銀行公式 経済がよく分かる10章』とある。権威付けと平易さをうたったものか。

「ごくうはフライドポテト、好きだったよね」「格好の説明ネタがあるよ」「イングランド銀行の最上階に社員食堂があってね」
「そこでフライドポテトがメニューの中にあるんだって」

イングランド銀行では、かってメニューはセルフサービス方式で、好きなものを選ぶ。フライドポテトもその一つだった。フライドポテトは「均一価格」(量に関係なく、同じ金額)だった。各自は好きなだけ盛ってよい。

「ごくうはフライドポテト好きだから、山盛りにしても全部食べるよね、食い意地が張っているから」「皆は食べられる量よりもずっと多く取るんだって」

「それじゃ、最後の方はなくなっているね」

「それだけじゃないよ、食べ残す人が多いんだって」

「フードロスだね」「資源の無駄遣い!?」

共有資源(ここではフライドポテト)が存在する世界では、人々は過剰に消費しがちになる。

*つまり、意図せず資源を浪費したり、果ては使い尽くしたりする。

この現象を、アメリカの生態学者ギャレット・ハーディン(Garrett Hardin)が「共有地の悲劇」(Tragedy of the Commons)と呼んだ。1968年のことである。※「共有地」は英語で「コモンズ」と言われる。

ハーディンが想定したのは、牧草地である。そこで、人々は羊を飼い、育てる。牧草地は村人全員で共有する。村人は羊を育て、羊を売る。(人々はミルクを飲み、マトンを食べる。)羊が売られれば、村人に利益をもたらす。

千珠「牧草地は共有されてるわ」
ごくう「だけど、自由に利用できるんだね」
千珠「利益を大きくしたければ、羊を多く飼えばいいわ」
ごくう「牧草地の草がたくさんいるようになるね」
千珠「牧草は毎年生えてくるけどね」
ごくう「皆が皆、羊を多く飼うようになったら、どうなるんだろう」
千珠「牧草地が荒れて、牧草は生えなくなってしまわない!」
ごくう「そうか、自由だと言って、各自が自分の羊を増やしていけば、全体として、牧草地はやがて資源として利用できなくなる、ってことか」
千珠「悲劇でしょう」

経済活動を自由に任せておけば、人口が増え続け、エネルギーも大量に消費し続け、「地球環境の悲劇」が起こる。現実にその兆候(もう越えているかも)は誰の目にも明らかになっている。まして、まだ始まって間もない時期だろう。

市場機構に委ねていった結果、「地球環境の悲劇」が起これば、残念ながら、「市場メカニズムには限界」があると考えるに至る。経済学者は「市場の失敗」(market failure)といっている。

つまり、個人が自由に合理的に行動すれば、全体としては環境面に「失敗」が現れてしまう。これは言いえて妙だけど、基本的なことを忘れてはいけない。人々が自由な経済活動を行い、経済が発展し、地球環境まで毀損しえるほどのパワー(良くも悪くも)を持っている。自由な経済活動を行って達成できる経済的成果を人々は享受している(人が多い)。

地球環境の悲劇をもたらさず、経済的成果をもたらす経済活動の仕組みを提案できなければ、自己陶酔の世界に入るだけである。たとえ、3.5%の人々が実現できたとしても、過半の人々の不興を買ってしまうだけである。

過半+多くの人々が「地球環境の悲劇」を緩和する努力を行う方が道が短い可能性が高い。地球環境問題はもう起こしてしまっている。これを含めて、やがて人口を減少させ(2050年頃?)、エネルギー改革をもたらす可能性が高い。※エネルギーに関連する費用は負担が大きくなる。これは不可避であろう。

千珠は「市場の失敗」の先を考え出すと、頭が白み始める。ホワイトアウト、こんなところで使うな、という表情になっている。

*次を仕込み中。


本・論文

・イングランド銀行著/村井章子訳(2023年)『Bank of Englandイングランド銀行公式 経済がよく分かる10章』スバル舎。

・「コモンズの悲劇」出典:Garrett Hardin(1968), The Tragedy of the Commons, Science, Vol. 162, No. 3859, 13 December, 1968, 1243-1248. doi:10.1126/science.162.3859.1243. The Tragedy of the Commons | Science.