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ごくうが行く:さくらが座布団でキョトン

マールは座布団で、ゴロニャン。ごくうはサマーベッドの布団で丸くなる。

ごくうが来る前、さくらが長椅子の上に上がり、丸くなる。一人椅子の上にも、ちいさな座布団をおけば、子供時代の身体の小さいとき、ちょこんと座って、クビを伸ばす。

さくらはワンちゃん、女の子だ。雑種のはずだが、洋犬らしい雰囲気。手足が長く、101匹のワンちゃんの小型版(10キロ)。身体は白っぽく、斑点がある。お腹にも斑点が。大きくなるにつれ、おしゃまになっていった。散歩の時も、時にシャナリシャナリと歩く。

定期的な法事で、お寺さんの座る座布団が古くなった。真新しい、真っ赤な座布団を用意した。ふかふかだ。座布団がかなり厚く、広い。お寺さんが来る前、赤い、厚く、広い座布団を仏壇の前に用意した。

他の用事を済ませ、仏壇の前に戻ってくると、さくらが、赤い、厚く、広い座布団に座っている。(オッと)気がついたさくらのクビが伸びる。
「あれっ、さくら!」
さくらはキョトンとクビを伸ばしたまま座っている。さくらは(イケナイノ)とも思わず、キョトンとしたまま。

そこにお寺さん。さくらは来客があると、イソイソとお出迎え。急いで、座布団の毛を払う。お寺さんが座布団に座ると、さくらもお寺さんの膝目がけて上がろうとする。
「さくら、ダメよ」
さくらを抱えて膝の上に座らせる。

読経が終わって、お寺さんが帰っていく。さくらもお見送り。赤い、厚く、広い座布団はそのまま。さくらはお見送りした後、長椅子の上でごろりん。疲れているようだ。

仏前の前を後片付け。赤い、厚く、広い座布団を居間に移した。目ざとく見つけたさくらがトンと長椅子から下りてきて、座る。
(まぁ、いっか)

「さくら、散歩の時間だよ」

さくらは散歩が大好き。イソイソと出かける。散歩の後、ごはんだ。ご飯を食べると、さくらはいつものように長椅子の上に。

あれやこれやを済ませて見ると、いつの間にか、さくらは、赤い、厚く、広い座布団にちょこんと寝ている。
(まぁ、いっか)

「さくら、お寝んねの時間だよ」

赤い、厚く、広い座布団も二階に。

翌朝起きると、さくらはウロウロ。赤い、厚く、広い座布団を探しているのか。仕方なく、赤い、厚く、広い座布団をもう一度出してやった。安心したかのように座布団でフカフカとお休み。

「新しい厚い座布団を買おう」

出かけて探してみると、それなりの厚さで広い座布団が見つかった。水玉模様の座布団だ。赤い、厚く、広い座布団と交換した。水色の、それなりの厚さの、広い座布団で、物足りなさそうにさくらは座る。不満げに寝入った。

しばらくして、水色の、それなりの厚さの、広い座布団に慣れてきたのか、しょっちゅうその座布団で寝ていた。

さくらの後にやってきたごくうは小さい。4キロもない。さくらの座布団もへたっている。ごくうは身体の大きさにあった座布団で寝ている。水色の、それなりの厚さの、広い座布団を整理した。

(あの赤い、厚く、広い座布団をさくらに使わせ、法事用には、別に、新しい座布団を買えば良かった)

さくらが、赤い、厚く、広い座布団に座り、「何か?」と言うわけでもないキョトンとする姿が、今でも頭を過る。

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