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ごくうが行く:西に行けば

ごくうの散歩は坂を上がるコースと坂を下がるコースがある。坂を下がるコースを選べば、やがて川筋の歩道を歩く。散歩の川筋は中程から西に流れるように延びている。

途中で川に掛かる橋がある。橋を渡れば、南に登りてっちゃん道路に向かう交差点がある。橋を渡らず、まっすぐ行けば、西に向かい、お大師堂がある。

「西か~」

思い出していた、このまま西に行けば、中国・上海の上を通り、西安を貫き、アフガニスタン、イラン、イラク、チュニジア、アルジェリア、モロッコ(ポルトガルを隔ててジブラルタル海峡)を連なる西軸がある。そこから砂漠地帯とも言える地域を下がり、やや南下すれば、西サハラがあり、その下にモーリタニアがある。さらに南下すれば、セネガルがある。セネガルにはネット友がいたな、思い起こしていると。

川筋を二人ずれが仲よく話しながら上がってくる。若そうだ。ごくうは橋のたもとでマーキングしながら、二人の男性を注視している。(いつものやつだな)最近、ごくうは素っ気ないが、時に関心を高める人がいる。

案の定、二人が橋のたもとにやってくると、後ろ足で蹴りながら「クウクウ」と鼻泣きする。(これは狙っているな)

男性二人が車をやり過ごした後、そのまままっすぐ進もうとすると、ごくうが待ってましたとばかりに、さらに鼻泣きする。左の男性に近づいたと思うと、男性の足に伸び上がり、上を見上げておねだりする。「可愛がって」目は口程にものを言う。

若い男性は驚きながららもごくうのおねだりに応える。「よし、よし」と頭を優しく撫でる。男性も急いでいる。ごくうも満足し、橋を渡り始める。お礼を言って、二人の後ろ姿を追った。ごくうは散歩を急く。もう夕暮れだ。懐中電灯を灯しててっちゃん道路に行きそうだ。