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三竹士スピン番外:若竹の穂先が揺れる

若じぃは思い出す。

桜が終わり、フジが終わり、タケノコの季節も終わり、里山の林縁部を辿って散歩していた。物憂げが満ち、毎日のように鬱屈とした気分に襲われていた。

青い若じぃは、足の向くまま、気怠い歩き方で、林縁部の雑草や雑木に誘われながら。見るとはなしに、林縁部の途切れを目にした。窪む空地の向こうがなだらかな斜面になり、広がっている。

(うん、竹藪・・・)

竹藪は疎だった。1本1本の竹の間が絶妙に配置されているようだった。

(まだ、若い竹だ)

若竹の背後は竹が密集している。濃い緑の竹が凌ぎあっているようだ。その藪から延長して若竹が伸びてきている。

林縁部の切れ目に到着すると、若竹の全貌が迫ってくる。かすかな、耳慣れない機械音が近づいているようだ。見ると、誰が飛ばしているのか、黒青のドローンが若竹の穂先を揺らして飛び去って行く。

青い若じぃが、飛び去るドローンを目で追っていくと、そのまま鬱屈さを持ち去ってくれる気がした。

飛び去った空は碧く奥深く感じられる。一条の細長い雲が風とともに流れ去っていく。空は澄きり、春光が広がっている。

青い若じぃの背筋はピンと伸び、いつものようにきりりと歩き出す。碧い空は「青若じぃ」を包みながら広がっていく。

---山頭火

「空へ若竹のなやみなし」

昭和10年(1935年)に作られた俳句。この句は『草木塔』という句集に収録されている。この句は、山頭火が小郡の「私の其中庵」(昭和7年~13年)を過ごしたとき創作されたという。
「山頭火は、若竹が空に向かって伸びていく様子を見て、自分の心の悩みや迷いがなくなったことを感じたのかもしれない。」(BingAI引用)。

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山頭火・句碑Map:kuhi.jpg (1191×842) (ec-net.jp)

画像:「句碑巡り」下記から。