見出し画像

《エピソード9・最初で最後のS子との駆け落ち》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。

鬱と愛。僕たちは家を出た

S子からの突然の電話。電話越しに言われた短く重い「妊娠した」の言葉に頭が真っ白になった僕は1つの決断をした。何も成長がないようなクソガキだった僕は、それが正しいのかどうかなんて判断はできずただただ返事をするしかなかった。どうしたらいいのかわからない。それはS子も一緒だった。高校を卒業したばかりのS子と僕は、この電話を境にまた暗闇の中に入っていった。

数回目の依存

画像1

「妊娠した」のあとに続く空白欄に入る言葉が、「産みたい」なのか「どうするの」なのかはどこにも答えはないけどその時の言葉は

「産みたい」だったんだと思う。「あなたの子供を産みたい」という聞こえない問いかけに、素直に「わかった」と言えない僕は時間をかけて「堕して欲しい」という無責任な返答をした。答えはわかっていたのにすぐに返答しなかったのは、逃げ場がないのに逃げたかったんだと思う。ズルく卑怯な人間だ。責任もとれないクセに、目の前の快楽を求めて無責任な行動をしてしまった後悔の念が溢れるけど、お腹の中に命が生まれたS子はもっともっと辛い思いをしているはずだった。

10万円で、僕は人を1人殺した。

産まれてもいない、人生をも経験していない小さな命を僕は身勝手でわがままに奪ったんだ。僕はS子に付き添うこともせず、S子から「終わったよ」という温かくも冷たくもない平らな言葉に返答する言葉は「ごめんね」しか見当たらなかった。笑顔も喜びもその時忘れた。嬉しさがなんなのかも分からなくなった。それ以上にS子もまた生きる意味を失っていた。いや、僕がそれを奪い取ってしまっていたんだって思う。

家出。駆け落ち。2人の生活

この出来事がきっかけなのかわからないけど、S子と僕はまた惹かれあう。ダメな人間をどうにかしたいという母性と、傷つけた人を守らなきゃいけないという薄っぺらい責任とがそうさせたのかもしれない。

最愛の母親を亡くしたS子と親への憎しみと受けた勘当とで家を飛び出していた僕は、S子の家に毎日居続けた。そばにいないとなぜか落ち着かない。愛情が空っぽだった僕たち2人の依存関係は、切っても切っても繋がろうとしつこく心に絡みつき縛りつけた。

画像2

S子の母親が残してくれた、缶からに無造作に入ったお金。S子と僕はそのお金を使いながら、そして借金返済のためのアルバイトをしながら生活した。S子の父親は、毎日家にいる僕たち2人を冷たい目でみながらいつもいつも「家にかえりなさい」と僕に促した。その度にS子と父親は言い合いになり、怒鳴り合い、毎回毎回答えの出ないままそれは終わる。僕たち2人がS子の家に居続けるのにも限界が近づいていた。

S子の母親の死後、僕とS子は時々母親の“彼“だった人と食事をした。2人のことを父親のように見守ってくれいたようだったけど、その人はS子の存在にS子の母親を重ね合わせていて、S子と僕ではなくS子の存在だけを見守っていたんだと思う。僕のことは“S子の彼だから“という理由だけで接していたようだった。それに気づいた時、僕には行き場がないって思った。その分余計にS子への依存が高まりまた心に絡みつく。

「もう、あんな父親とは一緒に過ごしたくない」

いつもそうやって母親の彼だったおじちゃんにグチをこぼしていたS子。いつの日か同じようにグチをこぼしたS子におじちゃんは

「お金出してやるから。家を出なさい」

そう言った。突然のことだった。嬉しいのかわからない感情がS子に溢れた。僕はその感情に寄り添うことしか出来なかった。

僕たちは、そのお金で2人で家を借りることになる。お互いの親に知られることなく、誰にも言わず僕たちは駆け落ちをした。嬉しさもすぐに暗闇へと捨てられることになることを知る由もなく、僕たちは浮き足立って2人の生活を始めた。

ボロボロになっていく日々

僕には1000万を超える借金があり、車とバイクを売ってローンを消しても800万近い借金が残っていて。それでもS子との生活はなんだか楽しかった。住んだことのない場所に、誰にも知らされず始めた2人の生活。S子もおじちゃんが経営するお店でアルバイトを始めた。僕は、借金返済と生活のために昼と夜で掛け持ちでトラックドライバーをして。

画像3

始めは順調だった生活。それでも心が空虚な2人の生活は長続きしなかった。生活を始めてすぐに、S子は仕事を辞めた。理由は「なにもしたくない」だった。夕方まで布団から出ない日もあった。S子は鬱病を患った。そして僕も、仕事をサボり家に帰らない日が増えていった。

僕たちの日々はまた黒く深く塗りつぶされ始めたんだ。

続きはまた・・


いつも読んでくださりありがとうございます。いろんなフィードバックがあって初めて自分と向き合える。自分を確認できる。 サポートしていただくことでさらに向き合えることができることに感謝です。