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大径木の伐倒はむずかしい

4期生の大賀です。

先日、大きなスギの木を伐倒させてもらいました。

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伐根直径(切る位置の太さ)は約75cm、樹高は30mくらいあったと思います。

これほど大きな木を切る機会はめったにないのですが、なんとか無事に上方伐倒することができました。

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大きな木は総称して「大径木(たいけいぼく)」と呼ばれます。

どれくらいのサイズから大径木とするかは人によりまちまちですが、今回のスギは間違いなく大径木のはず。

(教本『伐木造材のチェーンソーワーク』では伐根直径45cm以上と仮定しています)


大径木の伐倒はむずかしい

大径木の伐倒は、むずかしいです。

普段切っているサイズの木(伐根直径20〜30cmくらい)とくらべると、難易度が跳ね上がります。

理由は、当たり前ですが「木がものすごく太い」ことに起因します。

木が太いとなにがむずかしくなるか、思いつくところを6つ挙げてみます。


①受け口、追い口をイメージしにくい

木を切り倒すためにつくる「受け口」と「追い口」は、大径木ではそのサイズがかなり大きく(広く、深く)なります。

普段は目測で両者の位置やサイズを合わせていますが、大径木では安易に切り込むと失敗します。

なので、たとえば受け口の場合。

・木の幹に補助線を引いて受け口の位置とサイズを設定
・いちどつくったら少し離れて俯瞰して位置やサイズを確認
・そこから少しずつ修正していく

くらい慎重にやったほうがいいです。追い口も同じ。

②切断面積が広いので体力を消耗する

受け口と追い口のサイズがでかくなるので、チェーンソーでの切断面積もかなり広いです。

修正を重ねればさらに切る面積は増えるので、チェーンソーを保持する時間も長くなり、けっこうな体力を消耗します。

くわえて伐採ポイントが高い位置にあったりすると、チェーンソーを保持するのがもっと大変になります。

大径木の場合、そもそも現状の足場だとチェーンソーを狙いの位置に切り込めないこともありえます。

特殊伐採などで大径木を切っている資料を見ると、幹の周りに足場を組んでいる光景をよく目にします。

③ガイドバーが端から端まで届かない

大径木の幹の太さは、基本的にチェーンソーのガイドバーの長さを超えています。

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なので端から端まで切るには、木の両側から切り込まないと受け口と追い口をつくれません。

受け口はそんなにむずかしくありませんが、問題は追い口。

追い口はそもそも内部が見えないのにくわえて、大径木では切り進む刃の先端の位置も見えません(端から端まで貫通できないので)。

なので、目的の場所まで切り進められているかが目視できません。

とくに前側のツルを決める最終ラインは、受け口の会合線と平行に切る必要があります。切りすぎてツルの強度が弱まるのは最悪です(木をコントロールできなくなる)。

失敗すると、たとえばこうなります↓

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2年前にやった失敗例。ツルを切りすぎています。先端がどこまで切り進んでいるか見えないので、平行かと思ったら切りすぎていました。

今回はうまく切れました↓

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感覚だよりになる部分が多いので、かなり慎重に切り進まないといけません。

最低限、
・ツルを残す幅(切り終わり位置)に補助線を引いておく。
・ガイドバーが会合線と平行か、抜き差ししながら何度も確認して切り進む。

などして、切り終わりをしっかり確認しながらツルをつくっていくべきだと思います。

④重心の移動がたいへん

上方伐倒などで重心とは違う方向に倒す場合、クサビで重心を移動させるのが大変だと思います。

クサビを何本も深く打ち込むのはかなり体力を消耗します。

↓こんな感じ

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大径木を何本も伐倒するような場合、クサビでなくジャッキを追い口にセットして重心移動させる映像を見たことがあり、なるほどなーと思いました。

⑤芯切りする or しない の判断がつかない

「芯切り」とは、突っ込み切りで木の中心を切っておくことです。

木が倒れたとき、木の繊維が縦方向に抜けたり割れたりすることがあります。芯切りはこれを防ぐ効果があります。

大径木は倒れたときの衝撃がすさまじいので、倒れる速度のゆるい上方伐倒であっても芯切りしたほうがいいように思います。

けれど芯切りは諸刃の剣でもあって、ツルの中心もいっしょに切ることになるのでツルの強度が落ちます。

「ツルは両端がしっかり残っておけば問題ない」という意見も聞いたことがあります。斧で切り倒す「三つ紐切り」もそういう理屈だと思います。

僕は経験値が少ないので、この判断がつきません。

支点となるツルは伐倒のかなめでもあるので、今回はツルの強度保持を優先して芯切りしませんでした(結果問題なしでした)。

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⑥精神的につかれる

「うまく切れなかったらどうしよう」的なプレッシャーは、普段の伐倒とはくらべものになりません。精神的にけっこうつかれました。


・・・

今回の伐倒であらためて大切だと思ったのは、基本的な受け口と追い口をきっちりつくること。

普段切っているサイズの木でうまくできていないと、たぶん大きい木ではもっとできません。大径木は何というか、ごまかしがきかない感じがするので。

大径木を伐倒する機会はまれですが、普段からより正確な伐倒を心がけていきます。


おわり。

(書いた人:大賀圭介)

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