見出し画像

人生に乾杯 20(医師への評価と、「悪人」へのススメ)

自分がこんなことになり、とにかく家族に申し訳ないと思っている。その家族には感謝で一杯。これまでブログで書いてきた通りだ。

一方、幼少期からの病院通いの経験(脳腫瘍やがんに限らず)を顧みて、一部の医療従事者にどうしても敬意を払えない理由に思いを巡らせる。彼らは一様に偉そうだったり、タメ口だったり、こちらが尋ねても知識未消化だったり、言い始めるときりがない。今でこそ2人の主治医がとてもいい人たちなので感謝しているとはいえ、その隣で診察している医師たちは、とても人生のパートナーにしようとは思わない。例えば退院後の10月21日の日記を見ると、三田病院の主治医の近いところにいる別の医師を指し、「崩れた言葉を使う医師は嫌だな。目の前の人の人生に敬意を払い、尊重し、寄り添う。言葉から為人が出る」とある。

むしろ、思い浮かぶのはシンガポールの医師や看護師たちの顔だ。日本人の作り笑顔がどうにかならないかと思うものの、彼らに笑顔は必ずしも多くなく、むしろ患者との対等意思がにじみ出ていた。まして医師は卑屈といってもいいほど一生懸命、患者に情報公開し説明しようとしているように思えた。

そう考えている間、メールボックスに入ってきたのは、シンガポールでお世話になった日本人の方からのメッセージだった。広義の医療従事者でもあるので匿名でのご紹介になるが、今の自分の気持ちを見事に表している。本人の許可をいただき、かつ個人が特定できる部分を修正の上で掲載したい。

-----------

自分の子供も小児がんになり、摘出手術とケモ(化学療法)をしてきました。運がよく原発の摘出で転移がなかったため、今では寛解になりました。

その時に医師の親戚から、1点注意されたことがあります。医師は非常にプライドが高い生き物です。それを叩かないようにお付き合いをしてください、とのことでした。医師、政治家とやくざは上下関係が一番はっきりしていて、上が言ったことが間違っていても、正しいとして(註、下まで)通用する文化です。また日本の医師は、法的な見解が医療現場まで介入出来ないことをわかっており、そのような対応(註、僕が成田で多少不満のある対応を受けたことを指す)をされたのだと思います。海外で生活してた人からすると、理解できないと思います。海外は完全に治療行為における判断まで法的な部分が介入します。今は(註、日本でも)インフォームドコンセントが必ず行われますので、少しはましになったと思います。

医師も人ですので合う合わないがあります。合う先生を見つけて、その先生を信頼することが重要です。既に見つけておられるようので安心しております。

病人である佐藤様に対して無礼であることは百も承知でお話ししたいと思います。

子供が癌になった時に悟ったことがあります。自分が未熟だったため、神が与えた試練だと思うようになりました。私は宗教に強く信仰しているわけではございません。そうするとすっと気持ちが落ち着き、それをどう乗り越えられるかを考えて、それを実行していく日々です。結果がどうなろうとも、サポートしてくれている人を信用し、自分で決断していくことで乗り越えられます。きっと、佐藤様も乗り越えられると私は信じております。

大学の同期が白血病になり、また別の同期がALSとなり(註、メガバンクに勤める僕の知人も「クローン病」と診断され、3年に1度の激痛に1か月のたうち回る)、今は器具を付けて生き続けています。銀行時代の後輩はALSと診断され、若かったことから6カ月で他界してしまいました。

人生とは何ぞやと、たまに考えてしまいます。私の考えでは、良い人ほど短命で、悪い人ほど長生きする。これが答えではないかと思っております。

佐藤様にはこれから悪い人になってください。決して良い人は辞めてください。家族に迷惑かけないようになど思わず、思い切り甘えてください。(奥様すみません)

---------------

この方の愛情溢れるメッセージに、僕は涙した。妻とっこにメッセージを見せたら「あんた甘えてばっかりやないか!」と怒っていた。これからは「悪人」にはなれないかもしれないが、少しは家族にわがままを出したいと思う。愛情とともに。

(写真は2020年9月10日の退院前日、窓からの風景を描いた日記から。空港が近く、目の前には田園風景が広がる。飛行機の往来は7月の入院から9月の退院まで、少しずつ増えていた。続く。)