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人生に乾杯 37(前=未来を向いて生きる)

子どもたちから日々鍛えられている。高1の娘からが7月1日、またもや電車を乗り間違えて夜9時になって帰ってきた。学校でぎりぎりまで勉強しているので遅いのは致し方ないが、親は気が気でない。すでに帰宅していた妻と心配になって外で待っていたら、雨の中、暗い夜道を傘もささざずにトボトボ帰ってくる姿が目に入ったので、急いで傘を持ってほんの20メートル先まで迎えにいった。傘を差し出すと、娘は「いらないよ」「いらないってば」と、傘を差し出そうとする僕と押し問答。後で食事の時間になって、「さっきのは半分冗談だよ。ワタシsarcasticだから」と。あー、sarcasticにはjokingの意味があるのか。娘のおかげで英単語を1つ覚えることができた。

ニュースを見て、例えば国会の成り行きに怒っていると、娘から「そんなにnegativeにならないでよ!」と叱られる。「この視点をjournalisticと言うんだ」と反論が喉まで出掛かるが、黙っていた。ネガティブは文字通り気持ちが後ろ向きになることだが、もっと言うと、未来を向いていない、ということになる。結果的にはこれも娘から学んだ。

息子はもっとpositiveだ。というか気持ちの切り替えが早いし、細かいことに拘るくせにすぐ忘れる。勉強中、音痴なのに気持ち良さげに歌っている。しかも甘えん坊。海外暮らしが長いせいもあり、父親の自分にさえ「大好き」「愛してる」(どちらも「I love you」の日本語訳と思われる)と言ってくる。こちらは「さっきまで喧嘩してたろうが」という気持ちになるが、当人はそんなのお構いなし。こっちは振り回されっぱなしなのだ。

Positiveになるとは気持ちが未来に向くことだと、感覚的には分かっていたが、言葉にして初めて納得する自分にとっては「気付く」のはとても大事なのだ。きっかけは、冒頭の写真。

「Every positive thought is a silent prayer which will change your life.」

送ってくれたのは、シンガポールでお世話になったKim & Andy Giger夫妻、先日6月22日のこと。Kimは昔の同僚で、僕がシンガポールに行きたいと思い始めたころから仲良くなった。旦那さんのAndyと一緒に、いつもいつも、我々家族を気遣い心配してくれている。仕事はあるか?順調か?治療はどうか?妻が乳がんになった時に、シンガポールの医師を推薦してくれたのもKimだった。

ご夫婦はPositiveを絵に描いたような方々で、2012年に渡星してからずーっと家族ぐるみでお付き合いが続いている。旅行、食事会と年に数回の「定期」会合を繰り返した。両家族が出会ったころ、AndyはSingapore Science Centreで学芸員をしていたので、みんなで遊びにいってAndyの即席授業を受けたりもした。彼は僕の息子をとても可愛がり、虫やセミのことを細かく教えてくれた。Kimには、自分の仕事のことで随分とお世話になった。下の写真は2012年7月20日、忘れもしない金曜日夜。家族同士での初歓迎会で、子どもたちはK&Aに初対面だったのに、Kimは彼らを懐けるのがとても見事だった。

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最後に家族同士で会ったのは2019年ごろだったか、先方の自宅に招かれ、6人で「日式」鍋とワインで食事会をやった時だった。島の南に位置するK&Aの自宅には、壁一面にAndyの絵が飾ってあった。今も時候の挨拶がSNSで届くのは、まるで往復書簡のようだ。ご夫婦には、本当にありがとうございますとお伝えしたい。また未来を紡いでいけますように。

(続く。)