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欅坂46、東京ドーム制圧。「反逆」のポップミュージックが、ここに結実する。

【9/18(水) 欅坂46 @ 東京ドーム】

2016年4月6日。

1stシングル"サイレントマジョリティー"発表。

《君は君らしく生きて行く自由があるんだ/大人たちに支配されるな/初めから そうあきらめてしまったら/僕らは何のために生まれたのか?》("サイレントマジョリティー")

欅坂46の孤高の闘争は、その高らかな「宣戦布告」から始まった。

デビューしたその日から、彼女たちが懸命に表現し続けてきたものを、ここであえて言葉にするならば、それは、歪みきった大人たちへの「反骨精神」、そして、灰色の時代を自分らしく生き抜くための「信念」である。

J-POPシーンのど真ん中を主戦場としながら、妥協も忖度も迎合も一切しない。いわゆる「アイドル」を目指して欅坂46に加入してきた一期生のメンバーたちは、きっとこれまでに何度も引き裂かれるような思いをしてきたのだろう。

それでも彼女たちは、今日に至るまで、足を止めることなく果敢に闘い続けてきた。

あれから3年半、ついに、欅坂46が掲げてきた「反逆」のポップミュージックが、ここに一つの結実を見せる。

2019年9月18日、グループ初の東京ドーム公演。

きっと、とてつもないドラマが生まれる。開催発表から当日まで、そんな壮絶な予感をずっと抱いていた。


オープニング。

スクラップ工場を模した広大なステージに、ただ一人、平手友梨奈が現れる。

怒号のような歓声が巻き起こるが、彼女が一歩、また一歩と歩を進めるごとに、満場の東京ドームがゆっくりと静寂に包まれていく。宙に揺れる何かを追い求めるように、ゆっくりとステージを舞う平手。そして、彼女の指がグランドピアノの鍵盤に触れたその時、ついに、本ステージの幕が上がる。

これまでの熾烈な闘争史を、一切薄めることなく凝縮したかのような第1部。

《想像のガラスを割れ!/思い込んでいるだけ Oh! Oh!/やる前からあきらめるなよ/おまえはもっとおまえらしく 生きろ!》("ガラスを割れ!")
《I am eccentric 変わり者でいい/理解されない方が よっぽど楽だと思ったんだ/他人の目 気にしない 愛なんて縁を切る/はみ出してしまおう 自由なんてそんなもの》("エキセントリック")

今の彼女たちが放つからこそ、その言葉たちは確かな説得力と重みをもって響くのだ。

特筆すべきは、楽曲と楽曲をノンストップに繋いでいくインタールードである。前の楽曲の世界観を継承しながら、同時に、次の楽曲に向けてテンションを高めていく。そのダンストラックを含めた第1部の4曲は、まさに一つの交響曲そのものであった。


二期生のMCを経て、次の展開へ。

輝かしい青春の季節の中で、等身大でフラジャイルな感情と、心の内に秘めるかけがえのないリアリティーを伝えていく第2部。

《「全力で走ったせいで、息がまだ弾んでた。自分の気持ちに正直になるって清々しい。僕は信じてる。世界には愛しかないんだ。」》("世界には愛しかない")
《制服は太陽の匂いがする/スカートは風に広がる/何十回 何百回 校庭を走り回り/自由な日々 過ごして来た/これから先の夢は/いつの日にかわかって来る/生き方なんて誰からも指導されなくたって/運命が選び始める》("制服と太陽")
《一瞬の光が重なって/折々の色が四季を作る/そのどれが欠けたって/永遠は生まれない》("二人セゾン")

特に、"世界には愛しかない"が放つ究極のカウンターメッセージには、圧倒された。

僕たちが生きるこの世界は、不信・不和・不平で満ち溢れている。それでも、いや、だからこそ、強靭な意志をもって《世界には愛しかない/信じるのはそれだけだ》と伝えてくれるこの曲を、僕は強く求めてしまうのだ。


そして、再び二期生のMCを挟み、ライブはいよいよ後半戦へ。

燃え尽きかねないほどの壮絶な覚悟と、果てしなき気概を見せつけた第3部。その怒涛の展開は、まさに圧巻であった。

《平凡な日々を今約束しよう/ここにあるのは愛の避雷針》("避雷針")
《好きだと言うなら否定しない/嫌いと言われたって構わない/誰かの感情 気にしてもしょうがない/他人に何を 思われても/何を言われても聞く耳持たない/干渉なんかされたくない 興味がない》("アンビバレント")
《風に吹かれても/何も始まらない/ただどこか運ばれるだけ/こんな関係も/時にはいいんじゃない?/愛だって 移りゆくものでしょ?》("風に吹かれても")

はじまりの号砲"サイレントマジョリティー"、ネガティヴとポジティブの感情が目まぐるしく反転していく"避雷針"、熱きロックヴァイブスを共震させた"アンビバレント"、爽やかなダンスフィールでドーム全体を満たしてみせた"風に吹かれても"。

歓喜の絶頂へ到達した"危なっかしい計画"で幕を下ろすかと思いきや、"太陽は見上げる人を選ばない"で鮮やかにフィニッシュ。


そしてアンコール、ついに、長きにわたり封印されていた"不協和音"が解禁された。

《不協和音を/僕は恐れたりしない/嫌われたって/僕には僕の正義があるんだ/殴ればいいさ/一度妥協したら死んだも同然/支配したいなら/僕を倒してから行けよ!》("不協和音")

これぞまさに、絶対的エース・平手友梨奈の「完全復活」の鮮やかなる証明である。魂の絶叫とも呼ぶべきその全身全霊のパフォーマンスに、満場の東京ドームが揺れた。

感情の臨界点があるとしたら、そんなものとっくに超えている。鬼気迫るメンバーたちの、そして何より平手の表情に、心が震えた。

壮絶な余韻が、いつまでたっても消えない。それほどまでに、素晴らしいステージだった。


一夜が明けて、一つ思うことがあるとすれば、それは、3年半にもおよぶ欅坂46の孤高の闘争は、確かな意義のあるものだった、ということだ。

彼女たちは、自らの力で、そして東京ドームのど真ん中で、そう証明した。だからこそ、ここから幕を開ける欅坂46の「第2章」への期待が止まらない。

僕は、欅坂46の次なる挑戦を、全力で支持する。



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