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「セカイ系」の向こう側へ。今、「僕と君」と「君と僕」の物語が加速する。

【『HELLO WORLD』/伊藤智彦監督】

ラスト1秒、鮮やかに反転する世界。

その時、幾重にも折り重なり始める「僕と君」と「君と僕」の物語。

世界を描くということ。

世界を壊すということ。

そして、新しい世界を創るということ。

それら全てを可能とする、僕たち人類の「イマジネーション」の力に、ただただ圧倒された。

エンジニアやデザイナーをはじめ、モノづくりに携わる人であれば、その感慨はよりいっそう深いものになるだろう。

今作の物語について、『マトリックス』など、過去の様々なSF作品を参照点として挙げることができるし、その一方で、(ネタバレになるので詳細の記述は控えるが)この原作と映画が新しく発明したSF的要素も見られる。

それでも、僕が最も強く心を震わせられたのは、やはり、主人公たちの輝かしい青春譚だった。

きっと今作の製作陣は、この映画が「セカイ系」というジャンルに括られることを覚悟しているのだろう。

もしかしたら、観る人によっては、今作を「セカイ系」の亜流と捉え、批判することもあるかもしれない。

それでも、いや、だからこそ、予め定められた「在るべき形」に抗い、閉塞された世界をぶち破ろうとする直実と瑠璃の物語は、眩いほどの光を放つのだ。

特に、物語の終盤、ある登場人物の想いが報われるシーンのカタルシス。それは、これまでの「セカイ系」作品が到達しえなかった次元における、全く新しいものだった。

《何度でも何度でも 書き殴ったノートのページめくって/まっさらなところへ 書き出した 僕らの 新しい世界/いつか君にも 届いてくれるよう 願いを 込めよう》("新世界"/OKAMOTO'S)

「セカイ系」の向こう側へ。

このように、少し倒錯した構造に位置付けられる作品ではあるが、2019年の今、新機軸のSF作品を世に送り出した製作陣に、僕は最大限の敬意を表する。

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