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2019年上半期、僕の心を震わせた《邦楽》ベスト10

日本の音楽シーンは、内に「閉じている」と揶揄されることがある。

近年では、世界の音楽市場に打って出るアーティストも次々と台頭しているが、「J-POP」という総称が通用するくらいだ。やはり、日本の音楽がドメスティックな特性を持つことは、完全には否定し切れない。

しかし、そんな国だからこそ生まれる、全く新しいポップ・ミュージックがある。その結果として、日本の輝かしい音楽史は、今日に至るまで更新され続けてきたのだ。

2019年上半期においても、世界に誇るべき数々の邦楽曲がリリースされた。

今回は、その中でも特に、僕が心を震わせられた10曲をランキング形式で紹介していきたい。


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【10位】
"夜が降り止む前に"/花譜

YouTubeやInstagramを中心に活動を展開する、現在15歳のバーチャルシンガー・花譜。いったいどこから新しい才能が現れるか予想もつかないからこそ、2019年の音楽シーンはおもしろい。巷でバズワードとなりつつある「エモい」という感情に、もう一度くっきりとした輪郭を与える彼女の歌声に、強く惹かれた。



【9位】
"だから僕は音楽を辞めた"/ヨルシカ

卓越した才能を誇るボカロPが、「人」の声の可能性を極限まで追求した時、新しいポップ・ミュージックの奇跡が起こる。n-bunaとsuisの邂逅は、そう証明してみせた。暫定的に、4月リリースのアルバムから同曲を選出したが、続けて8月にリリースされる続編『エルマ』も傑作の予感がする。



【8位】
"遠視のコントラルト"/君島大空

眩いくらいに輝く音の洪水。乱反射するノスタルジア。圧倒的な「未知性」を放つ音像風景に、気づいたら心を奪われていた。J-POP/ハードロック/シューゲイザーといった複数のジャンルを自由に往来するサウンドは、まるで、安易な言葉で定義されることを拒み続けているかのよう。それでいて、いつかどこかで出会ったような「懐かしさ」を感じさせるのが不思議で仕方ない。



【7位】
"忘れられないの"/サカナクション

最先端のサウンドが、何故だか不思議と懐かしい。普遍的な日々の生活を讃える詩が、圧倒的な新鮮さをもって響く。その美しい「矛盾」が成り立つのは、一つ一つの音と言葉を、丁寧に、丹念に、そして確かな信念のもとに編み上げてきたからだろう。だからこそ、新作『834.194』の完成までに、約6年もの歳月を必要としたのかもしれない。これほどまでに「洗練」されたJ-POPは、あまりにも稀有だ。



【6位】
"Aurora"/BUMP OF CHICKEN

藤原基央が、まるで自らの創作活動の過程について書き綴ったかのような歌詞に、ただただ感動した。同曲が重要なピースの一つとなるであろう3年半ぶりの最新作『aurora arc』のリリースも、いよいよ目前に迫っている。



【5位】
"キュン"/日向坂46

この10年の間に、幾度となく再定義され続けてきた「アイドルソング」というジャンル。音楽性の細分化が加速度的に進むこの時代において、日向坂46は「アイドルソングの王道をアップデートする」という偉業を堂々と成し遂げた。その表現姿勢は、最高にクールで知的、そして果てしなく批評的だ。



【4位】
"The hole"/King Gnu

上半期のベストアルバムを選ぶのであれば、僕は強い確信を持って『Sympa』を推したい。曲単位ではなく、アルバム全体として。さらに言えば、ジャケットやミュージックビデオをも含めたアートワークの総体として。King Gnuの表現の「総合力」は、あまりにも卓越していると言えるだろう。特に、この曲のミュージックビデオには震撼した。これからも彼らには、果敢に新しい時代の表現の可能性を切り開き続けていって欲しい。



【3位】
"海の幽霊"/米津玄師

"Lemon"の地殻変動級の特大ヒットによって、ついにJ-POPシーンの王座に君臨した米津玄師。そんな彼にしか成し遂げられない次の「変革」の一手が、この"海の幽霊"だ。同曲が放つ「違和感」は、僕たちリスナーの音楽リテラシーと、この国の音楽フォーマットを、痛快にアップデートするためのものだった。あまりにも凄すぎる。



【2位】
"黒い羊"/欅坂46

3年前の"サイレントマジョリティー"でのデビューから、今日に至るまで。欅坂46は、この曲に辿り着くために、茨の道を歩み続けてきたのかもしれない。絶対的な覚悟と、それに伴う諦念。彼女たちの「生き様」を映し出す同曲は、まさにこの3年間のドキュメントである。そう、欅坂46の壮絶な闘争は、確かな意義のあるものだったのだ。



【1位】
"僕らまだアンダーグラウンド"/Eve

同曲のタイトルは、現行の音楽シーンへの「戦線布告」である。《僕らまだアンダーグラウンド》という言葉は、いつかオーバーグラウンドを制することを目する者にしか綴れないはずだ。この新しい才能に、僕は全力でベットしたい。




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