スクリーンショット_2019-10-13_17

ビートルズは、死なない。永遠なる愛の名曲10選

ビートルズ。

ポップ・ミュージックの始祖。そして、今もなお、絶大なる存在感を示し続ける世紀のロック・レジェンドだ。

ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター。4人は、たった7年の間に13枚のオリジナル・アルバムを作り、世界を変えてしまった。

人生の喜怒哀楽、社会に渦巻く不安やフラストレーションを、僕たち/私たちのメッセージへ変換し、マイクとアンプを通して、大音量で全世界へ響かせる。その時、音楽は民主化され、ロックに明確な意義が与えられ、そして、ポップ・ミュージックの歴史が始まった。こうしたビートルズの絶大なる功績は、いくら言葉を綴ったとしても語り尽くせることはないだろう。それほどまでに、ビートルズは偉大な存在なのだ。

しかし、時代は変わる。どんなに絶対的な存在であろうと、目まぐるしく変革する音楽シーンの中で、絶え間なく相対化されていく。それ故に、2019年の今、ビートルズを知らない人がいたって、それは決して不思議なことではないのだ。

今回は、ビートルズの音楽を再フィーチャーした映画『イエスタデイ』の公開に合わせて、「永遠なる愛の名曲10選」を編み上げた。

劇中に登場する楽曲の中から選曲しているため、悔やまれることに、この10選から漏れ落ちてしまっている名曲も多い。しかし僕は、このリストが、あなたがビートルズと出会う一つの「きっかけ」になればいいと望む。これを機に、過去のビートルズ・ナンバーの魅力を、あなた自身で発見してもらえたら嬉しい。

そして、あなたが初めてビートルズの音楽に触れた、その感動について、ぜひ言葉にして聞かせて欲しい。

出会いのタイミングなんて、早かろうが遅かろうが一切の関係はない。出会えるということ、出会えたということ、その事実にこそ、深い意味があるのだ。だからこそ、あなたの感動を表す言葉には、いつだってかけがえのない価値が宿る。その言葉を、僕は読みたい。

この10曲が、たった7年の間に、そして、たった1つのバンドによって生み出された事実を噛み締めながら、ぜひ、最後まで読み進めて頂けたら嬉しい。


I Saw Her Standing There (1963)

ビートルズの1stアルバム『PLEASE PLEASE ME』(1963)。輝かしいポップ・ミュージックの歴史は、ここから始まったのだ。記念すべき同作のオープニングナンバーを飾ったのが、"I Saw Her Standing There"である。ポールの4カウントで幕を開けるこの曲には、ロックンロールで世界を変革しようとする気概が宿っている。そして、初期のビートルズの代表曲として、今もポールは、同曲を渾身の力でプレイし続けている。ロックの原点にして、今なおポップ・ミュージック・シーンを導き続ける、まさに開闢のロック・アンセムだ。


She Loves You (1963)

映画『イエスタデイ』では、「(コライトが主流となった2019年の音楽シーンにおいて)本当に一人で楽曲を作っているのか?」と問われた主人公・ジャックが「そうだよ」と答えるシーンがある。しかし実際には、多くのビートルズ・ナンバーは共作によって生み出されている。中でも、最強のソングライティングチームが、「レノン=マッカートニー」(ジョン・レノン&ポール・マッカートニー)だ。コライトの方法は時期ごとに異なるが、"She Loves You"をはじめとする初期ナンバーは、文字通りジョンとポールが一緒に詞と曲を書いて生み出したもの。2人の天才による、運命のコラボレーション。ビートルズというバンドは、はじめから、その後に続く成功を約束されていたのかもしれない。


Help! (1965)

「アイドル」としての人気の暴発的な加熱。自身を取り巻く狂騒的な環境への反抗だったのだろうか。タイトルも歌詞も、まさに、ジョン・レノンの悲痛な魂の叫びそのものだ。荒々しく、エネルギッシュ。それでいて極限まで洗練されたメロディは、鮮烈な覚醒感さえ感じさせる。ジョンの音楽家としてのステップアップを証明する、ビートルズ史上、最もエモーショナルなロック・チューンだ。『HELP!』(1965)収録。


Yesterday (1965)

映画『イエスタデイ』のハイライトの一つが、主人公・ジャックが"Yesterday"を弾き語るシーンである。ビートルズの音楽的進化、その最初の兆しを示すことになるこの曲は、プロデューサー・ジョージ・マーティンによって、クラシックテイストを強調されている。生まれたその瞬間から、ポップ・クラシックとしてのヒットを約束されたかのような究極のメロディ。その美しさは、やはり永遠に不変だ。『HELP!』(1965)収録。


In My Life (1965)

思い懐かしきリヴァプールの原風景。そして、そこに描かれる普遍的な愛の形。この時期から、ビートルズが音楽に乗せて歌うメッセージは、より多様な彩りを放ち始める。そして、『RUBBER SOUL』(1965)のリリースを機に、彼らは、世界中で熱狂を巻き起こすアイドル・バンドから、高い音楽性を追求するスタジオ・バンドへと変化を遂げる。ビートルズの転換点にして、ポップ・ミュージックの変革の幕開けを告げる1曲だ。


Eleanor Rigby (1966)

独りで老いて死んでゆく老婦人と、誰からも愛されずに生きてきたマッケンジー神父。その二人が織りなす、あまりにも哀しい物語。数々の愛の名曲を紡いできたポールが、臆することなく「孤独」と向き合い、そしてあまりにも鋭くその本質を射抜いた一曲。特筆すべきは、この曲のレコーディングにビートルズのメンバーが参加していないことだ。重厚にして荘厳なストリングス・サウンドは、ビートルズを、そして全世界の音楽リスナーを、次の地平へと導いてみせた。『REVOLVER』(1966)収録。


Strawberry Fields Forever (1967)

繊細にして、ナイーブな心象風景。ロックが切り開いてしまった、新たなる表現の地平。ジョン・レノンの卓越したソングライティングは、ここに一つの頂点を極める。その複雑なアレンジやプロダクションは、もはや楽曲という枠組みを超え、壮大な総合芸術として長年にわたって評価され続けている。映画『イエスタデイ』において、この曲が直接披露されることはない。しかし、主人公・ジャックがリヴァプールのストロベリー・フィールド孤児院を訪ねるシーンが、物語の重要シーンの一つとして機能していることから、この映画の製作陣が"Strawberry Fields Forever"に、いかに大きな愛と敬意を払っているかが伝わってくる。『MAGICAL MYSTERY TOUR』(1967)収録。(また、ビートルズ屈指の名曲"A Day In The Life"も、映画のあるシーンで印象的な形でフィーチャーされていることも見逃せない。)


Hey Jude (1968)

全ての人の人生を等しく讃え上げる、稀代のメロディ。その普遍性に、ただただ圧倒される。クレジットは「レノン=マッカートニー」となっているが、この曲のソングライティングを手がけたのはポールである。『ホワイトアルバム』以降も共同名義のスタイルを続けながらも、実質的には、どちらかが単独で書き上げる形へとコライトの方法は変化していったのだ。しかし、ポールが"Hey Jude"の詞の一部を変更しようか迷っていた時、「変えるなよ、そこがいいんだ」と助言を与えたのは、他でもないジョンだったという。なんて、ビートルズらしいエピソードなのだろう。こうした2人の「必然」の関係性の上に楽曲が成り立っているからこそ、彼らはビートルズになれたのだ。


Here Comes The Sun (1969)

後期ビートルズの代表曲の一つにして、ジョージ・ハリスンが生み出した渾身の美曲。彼のソングライティングの才能が開花したのが、実質的なラストアルバム『ABBEY ROAD』(1969)のタイミングだったことが悔やまれる。(同アルバムには、同じくジョージ作曲の"Something"も収録)ロッキング・オン主催の音楽フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「COUNTDOWN JAPAN」では、"Here Comes The Sun”は、長い一日を締めくくるエンディングテーマとして使用され続けている。この曲を聴くと、胸を締め付ける切なさを感じる音楽ファンは少なくないはずだ。


Let It Be (1970)

ビートルズの崩壊。引き裂かれるような思いの中で、最後に生み出された奇跡の作品。それが、『LET IT BE』(1970)だ。アルバム全体に通底する「終わり」の予感と、その中で一際眩い光を放つポールのメロディ。原点回帰を果たしたソングオリエンテッドな美曲"Let It Be"は、もはや、説明不要のロック・アンセムだ。ポールにしか紡げない愛の旋律ではあるが、ジョンのソロ曲"Imagine"と共鳴していると感じるのは、きっと僕だけではないだろう。今もなおステージに立ち続けるポールは、ジョンへの愛を込めて"Let It Be"をプレイしている。そのステージに、ジョン・レノンの存在を強く感じさせるのは、それ故だ。ジョンの魂は、そしてビートルズの音楽は、あなたと出会うその時、永遠になるのだ。



【関連記事】


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。 これからも引き続き、「音楽」と「映画」を「言葉」にして綴っていきます。共感してくださった方は、フォロー/サポートをして頂けたら嬉しいです。 もしサポートを頂けた場合は、新しく「言葉」を綴ることで、全力でご期待に応えていきます。