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【書評】稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである /葦原一正/あさ出版

稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである /葦原一正/あさ出版
(このnoteは2019年4月2日に他サイトに掲載した記事の転載です)

この本の、存在はずっと気になっていた。

読もう読もうと思って「読みたい本リスト」にストックされていたが、いつもその時にビビッと感じる本が急上昇してきて随分と引き伸ばしてしまっていた。

そんな中、先日参加した、Sports Tech & Biz Conference2019で知り合った方と話している中で、

「間違いなく2018年の中で一番シビれた本でしたよ!絶対読んだ方がいいです!」

と熱烈にプレゼンされ、そのタイミングで僕の中で急上昇していった。

本を読むタイミングってのはそんな感じでもいいのかなと思う。

人に勧められてという時もあるし、自分の中で急上昇した時もあるし。

「あ〜読みたい!知りたい!」のエネルギーが急上昇した時に読む本は吸収力が違うと思う。

さて、本の話に。

躍進を遂げている(これまで具体的に何がかわからないけど何故かそう感じていた)Bリーグ

その立ち上げから今まで、そしてこれからについて語られる。

題名である

「稼ぐがすべて」

という言葉から、完全にビジネスよりな本なのかなと思っていたが、

組織を牽引していくためのリーダーシップ論や、組織の外の人を巻き込むチカラ、そして目標を定めてそこに向かって突き進むその行動力は、同じスポーツにおいても、ビジネスと現場も似て通ずる部分が多くあり、とても勉強になった。

今回、特に心に残ったのは下記の3点についてである。1、 ゼロからのスタート。2、 「すごいね!」「ありがとう!」のチカラ3、 べき論

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1、 ゼロからのスタート

Bリーグのスタートはまさにゼロからのスタート。

いやむしろマイナスからのスタートに思えた。

バスケの2リーグ制に伴い、国際バスケ連盟から干されかけていたところに、カリスマ性のある川淵一郎が現れ、全く新しいBリーグというものが作られた。

そのBリーグ創設のタイミングで事務局のトップとして白羽の矢が立ったのが、この本の著者である、葦原さんである。

Bリーグ創設時の合言葉は

BREAK THE BORDER 〜前例を笑え!常識を壊せ!限界を超えろ!〜

である。

その言葉をあらゆる場面で徹底していった。

・人事の採用では、過去の2リーグ出身の人は圧倒的な実績がない限りは採用しない。

・チームごとに運営を強化していくのではなく、リーグ主導のガバナンスで市場規模を広げる

・アメリカのスポーツビジネスを参考にし、事業戦略やデジタルマーケティングを進めていく。

・理念やミッションを軸にパートナーシップを結んで仲間を集める

・とにかく過去にとらわれない。

どれもゼロからのスタートだからこそできることなのかもしれないが、ゼロからここまで徹底して組織を作っていくことは、どれほど難しいことか。

それでも、一度失敗したバスケ界が復活するという、ある意味「奇跡」を起こすためには、既存の延長線上で物事を考えていてはいけない。とにかく前例・常識を破壊していこうという強い信念が伝わってくる。

そしてその同じ信念を持つ仲間を集めて「奇跡」を実現させていく。

組織を建て直す時に必要な強烈なリーダーシップがそこにはあった。

2、「すごいね!」「ありがとう!」のチカラ

自分が喜びを感じる時、嬉しい時ってどんな時だろうか。

そんなことを最近は考えたりする。

なぜなら、それがわかれば、そんなシチュエーションをたくさん作っていけば、いつも幸せな気分になるから。自分の喜びアンテナを張って生きている。

この本の中では、

人間は社会と関係をもつことに存在意義がある。

人間の究極の性は、自己満足。単なる自己満足ではなく、相手から賞賛されることでの自己満足、感謝されることでの自己満足だ。

というようなことが書かれいた。

スポーツというものをそういうツールにしたいと。

観戦した人たちや選手と関わることができた人たちが、「すごかったです!」「ありがとうございました!」といってもらえるような場所に。それこそが、スポーツが社会になくてはならない存在になるために必要なことであり、今後担っていくべきミッションなのではないかと感じた。

そして、自分自身がそう言ってもらえて喜びを感じるというのはつまり、きっと誰もがそうであると思う。

見返りを求めてそう言うわけではないが、人との良好な関係性を作っていく上で、とても大切なことであると思う。スポーツは勝負の世界だから、どちらかと言うと、「ありがとう」と言うより、「すごいね」と言うことの方が少しだけ抵抗があったかもしれない。少なくとも僕自身はあった。

でも、スポーツは人生を豊かにするための手段に過ぎない。自分が言われて嬉しいことを人にも感じてもらえる人間になりたいと思った。

スポーツビジネスの社会貢献におけるマインド設定のところ、哲学的な解釈をしてしまった。。笑

3、べき論

「べき論」

という言葉、はじめて聞いた。

この本で紹介されている「べき論」とは、

「何がしたい、何ができます」ではなく、「こうあるべきで、こうしなければならない」という自分の言葉で語ること。

そして、葦原さんはそんな人財を探していた。

物事を語る時に、

「〇〇だったらいいのにね。」とか、「〇〇したいよね」

という段階でしか話せない時というのは、自分の中では空想ですぎず、具体的にどうしたいか、自分が思っていることを自分自身に深く落とし込めていない状態にあると思う。

逆に、

「こうあるべきだよね」とか「こうしなければならないよね」

と言える時というのは、何でそうあるべきなのか、何でそうしなければならないのか、完全に深く落とし込まれている時しか使えない気がする。

「べき論」で話せる人は、自信がある。自信がある人には納得させられる。

そう感じた。

「べき論」で繋がる人との関係性は強い。「こうなるべき」で繋がると、それがあるべき姿の信念となる。

組織やチームで理念を考える時のファーストステップとして、

「自分たちはどうあるべきなのか」

を共有するところから。

あるべき姿を共有したら、あとはその姿になるためにどうしなければならないのか、

おのずと出てくるだろう。

そういう話し合いの先に結束が深まっていくのだと思う。

―――――

本を読んでいく中で、スポーツビジネスとしての事業戦略や具体的なプランなど、

「シンプルにBリーグって面白そう」

って感じたのはもちろんだったのだが、

それ以上に、組織を引っ張っていくリーダーとしての考え方の部分で、自分なりに解釈してとても参考になる部分は多くあった。

Bリーグは2回ほど観に行ったことがあるが、次に行く時、見方が大きく変わってくるだろう。



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