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【書評】世界で学べ 2030年に生き残るために/大谷真樹/サンクチュアリ出版

世界で学べ 2030年に生き残るために/大谷真樹/サンクチュアリ出版

前回、世界一と言われる、フィンランドの教育について知ったところで、

今回は、「世界で学べ」

だいぶ範囲が広くなった。

本書で書かれているのは、日本式の教育への問題提起。世界と比較して、このままだと2030年にホントに世界に取り残されちゃうよ。じゃあどうしたらいいの。という話が書かれている。
前回のフィンランドとはまたちょっとテイストの違った形で、日本の教育について考えさせられた。

教育を考えるということは、未来を考えること。前回でも話したが、自分自身子どもが産まれるまでは、教育なんて他人事。だから未来のことも、自分だけのことを考えたら「どうにかなるだろう」と楽観的に考えてしまっていたのが、自分の子どもにどうなって欲しいかという新たな軸ができた。そのことで自分の持つ世界観をかなり広げてくれた。
これは、環境についても同じだ。

ということで、これから何も考えずに日本の教育システムに放り込むと、自分の子はどんな人間になってしまうのかということをまた深く考えさせられた。

「世界で通用する人間になるためには」

という言葉はかなり響いた言葉の1つである。

高度成長期に世界でも有数だった日本の大企業や大学は、現在は世界の中ではランク外。日本の中でしか通用しない教育システムがもたらした産物である。
日本の中でしか通用しない偏差値、学歴では世界と戦えず、加えて年功序列に終身雇用。学歴を持って大企業に就職することが目的となってしまった人間の集まる会社が世界で戦えるわけがないというのは、よく理解できる。

フィンランドの教育のもあったように、大事なのは学歴よりも、経験などからくる学習歴。それも、その基準を世界に置くこと。日本人が、世界的に見たらどうか、という視点で物事を考えることができるかどうか、というのはこれからの未来に大きく影響することである。

ラグビーの世界でも、エディージョーンズが「インターナショナルスタンダード」という言葉を用い、日本の中でしか通用しなかった常識を大きく覆したことで、日本のラグビーが世界で通用するようになった。
自分自身、世界的に見たら低いレベルの常識の範囲内で「こんくらいやっておけば大丈夫だろう」と思っていたことが、インターナショナルスタンダードを意識させられるようになってから、爆発的に世界が広がった。
日本のラグビー界は、このインターナショナルスタンダードを持ち込まれたことで、日本人ラガーマンの根本的なマインドセットを変えられ、世界に遅れを取らないレベルまで引き上げられて、今がある。

このように、ラグビーの視点からみても、一人の人間としても「世界で通用するためには」という基準を持つことの大切さというのはよくわかる。

「英語で学ぶこと」「日本語能力を身につけること」

言語についても、自分自身に刺さる部分があった。

70億人以上もいる地球上の人口の内、2%以上も使っていないのが日本語である。それは同時に、地球上にある知識のうち、その割合の分しか自分は理解できないということを意味するということは、自分でもわかっていて、それを考えるたびに英語を学ぶことの必要性を感じていた。
しかし、ここで述べられていたのは、英語を学ぶことというよりか、英語で学ぶことが求められる時代になっているということ。たしかに、目的と手段が逆になっていては本末転倒である。あくまで手段である英語だが、中学から科目に入れられており、そこから10年以上も教育の過程で接しているはずなのに、結局ペラペラに話せる人というのは、海外での生活がある人がほとんどである。
自分も早く英語で学べる人間にならねばという焦りとともに、自分の子どもにはその早いうちにそのような感覚を持てる子になってもらえたらと感じた。

一方で、そんな英語とは裏腹に、やはり母国語である日本語の能力をしっかりと高めることの重要性も述べられていた。なぜなら、外国語が母国語の能力を上回ることは絶対にないからである。問題解決力や論理的思考能力などを母国語でしっかりと学ばない限りは、使う英語によって自分の意見を伝えることや議論することなど不可能である。スマートフォンの普及によって、直感的に脳に入ってくる動画などにより、読んで考えるという習慣をなくしてしまっては、英語が使えたとしても、深みのある人間になれないことは当然である。読書する習慣や、その書評を書くという習慣によって、その部分は引き続き鍛え続けていきたい。
「世界で通用する人間になる」ということを意識するという意味でも、自分の人生だけでは体感できない広い世界のことを知ることのできる読書は、教育的にも必要となると感じた。


また、現在ニュージーランドにラグビー留学しているのだが、こういった教育に関する本を読みながら、こちらの現地のチームメイトと話していたり、接していると、日本とは違う教育的な背景が随所に垣間見れるから面白い。
20代前半の選手が多くいるのだが、とにかく自分の意思を誰に対しても伝えることができる。ミーティング中にいきなり指名されても、自分の意見を述べることができるし、コーチや年上の人に対しても物怖じせず発言している。高卒だろうが大卒だろうが関係ないし、移民の多い国だからこそ、人を見た目で判断することもない。将来何になるの?とか夢を語ることも多いし、それを笑う人もいない。
先日、ミーティングで「なぜラグビーをやっているのか」という質問にも、みんな迷うことなく自分自身の意見を述べていた。自分が大学生の頃と比べてしまうと恥ずかしく思えるくらい、こっちの子たちは大人である。

本を読んだり、実際に海外で過ごしたりしていく中で、自分自身の目指す教育のスタイルを模索していこうと感じた。

周りには流されてはいけない、軸を定めることの必要性を感じた。

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著者自身が、日本を変えるということを半ば諦めかけた時に、日本を変える人間を育てるという新たなモチベーションができ、その思いが存分に詰まった一冊である
ここにはピックアップしていないが響くキーワードが多くあった。

また、それを実現している学校を自分で作っているのだ。

今後彼の学校出身の、日本を変える人材が出てくることに、密かに注目していきたい。

海外留学中に読めたこともあったかもしれないが、非常に面白かった。


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