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Watcher #5

アルコール依存

ドラッグ

治療薬

トラウマ

断眠

統合失調症

認知症

てんかん

ナルコレプシー

代謝性疾患

幻覚の原因を検索してみたが、どれも自分に当てはまらない。

代謝性疾患は、糖尿や高血圧など、生活習慣病のことだった。

それらに幻覚の症状があるなんて、知らなかった。

統合失調症は、自覚がない場合とかあるのか?


それにトラウマも、「忘れているトラウマ」とか言われたら、どうしようもないな。

忘れてるのだから。


他にも幻覚の原因は、こんなのがあった。


高電磁場


高電磁場なんて、そこら辺にあるものだろうか?

電磁波は身のまわりにあふているけど、どこからが「高」なのだろうか。


“あれ”を見るのは、決まった場所じゃないぞ。

生活圏のいたるところで見る。

電磁場の影響を受けやすい体質というのが、もしかしたらあるのか?

でも、あそこには電磁場なんて無さそうだけど···

鉄塔もなかったはず。


緑地だ。

緑地で“あれ”を見たことがある。


子供の頃は、よくセミなんかを取りに行った。

だけど、大人になってからは、行った記憶はない。

ふと懐かしくなり行ってみたことがある。

気分転換に、森林のなかの散歩コースを歩いていた。

そして、コースの途中、子供のころカブトムシの罠を仕掛けた場所を思い出した。

コースから外れて、木々の奥へはいったところ。

そこに“あれ”がいた。

ひときわ太い木からぶら下がって。

木洩れ日に照らされて、わずかに揺れている。

解体されたマグロのように、えぐり取られて腹の中身がない馬の下半身。

その上に、透明のドーム状の膜みたいなものがある。

そのなかに座っていた。

ドームにあいた穴から、真っ白な素足を放り出して。

上半身は、内蔵のようなものに覆われていた。

その“あれ”は、どす黒い水を漏らしていた。

よく見るとその黒い水は、馬の下半身の腰の断面にある穴から出ていた。

黒い水は、真下の水溜まりに注がれている。

水溜まりの棲んだ水が、濁っていく。


孤独死の話を思い出した。

死後、何日も発見されなかった遺体が黒い液体を出すという···


そんな話を思い出しているのに、おれは“あれ”を見ながら、何故か「気持ちが落ち着く」と感じていた。

森林浴の効果か?

そんなわけないな。


しかし、次の瞬間、びくっとした。




上半身を覆う内臓に、蛍光の体液みたいなものが、一瞬したたって見えた。


映画プレデターに出てくる宇宙人の血液は、緑色に光っている。

ちょうどあんな感じだった。


見間違えか。


“あれ”自体が幻覚なのに、そのうえに錯覚を見たのか?

そんなことある?

さっきまでの落ち着いた気持ちが、どこかへいってしまって、おれはその場をはなれた。

 
 
 
 
 

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