【ラッパー彼氏とジャック・スパロウの話】
18歳の時、ちょっとだけ付き合った彼は、
ラッパーでした。
同級生の一番イカれてる奴に
「実は学校で一番イカれてる奴はあいつ」
と言われていた「あいつ」と付き合っていた。
当時の私は、
個性を前面に出すことに何の抵抗もなくなった頃だったので、
いつも頭にターバンを巻いて登校してたわけです。
幸か不幸か、その頃パイレーツオブカリビアンが大流行した時期で興行収入エグ億円が経済で回っておりました次第で。
もちろん、単純思考回路な高校生はすぐに私を
「ジャックスパロウ」
と、呼び始めました。
そして、
「瀬菜ちゃん、あの人ににてるよね!
パイレーツオブカリビアンの、ほら!」
と、うる覚えでそう言われていたので、
私はてっきりヒロインのキーラナイトレイのことだと思っていた。
あっぱれ、17歳の自分。
あろうことか、義兄からは、
「ジャックスパロウにも似てるけど、
小綺麗にしたホームレスにも見えてきた」
と、謎の被曝でもはやキーラナイトレイのキの字も消え去っていた。
「小綺麗」なんて気休めでしかない。
そんな小綺麗なホームレス時代にアタックしてすんなり付き合ってくれた、ラッパーの彼。
彼は、いつも授業中に自分のお腹を触ってニヤニヤしている。
「なんでいつもお腹触ってほくそ笑んでるん?」
と聞くと、
「自分のお腹触ってると落ち着くんやけど、触ってるとこしょばくて笑てまうけどやめられへんねん」
て、文字にしたらだいぶ気色が悪い回答が来たけどジャックスパロウな私はもはや
「すてきー!」
と思っていたので登場人物全員変人。
そんなアウトレイジ時代に芽生えた恋心はお花畑で。
高校生でデートゆうたらそれなりにリア充するはずやけど、
私らはいつも携帯の動画で人形劇撮ったりお絵かきしりとりしたり、リリック書いたり謎の茶会ばかりしていた。
そんな彼が、リリックノートを置いていたのでパラリと見てみると、
「幸福の神よりウンコを拭く紙欲しい」
と、天才的なライムでラップ書いてた。
口に出して読んでみると、
ピタゴラスイッチくらいの気持ち良さ。
当時の話を、私が今でも一番イかれていると思っている同級生と話してたら、
みんな、
「あの二人がカップルとか、もはやギャグ」
と噂してたらしい。
褒め言葉として受け取っておいて、
今日もキーラナイトレイを目指して生きていこうと思う。
南無〜
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