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【言い訳しなければ夢が叶うという話】

私は以前、5年半ほどある日本語学校で働いていた。

第一子を出産してほどなく、史上最強に爽やかな男性が私に会いに来てくれた。

昼顔ではない。

彼の名前はH。

私が働いていた日本語学校の卒業生。韓国人。

彼は、当時日本の大学に通っていて、日本人より日本語が上手で優秀な学生だ。

「渡したいものがあるから、家に行きます。」

そう言って、大きな荷物を抱えて会いに来てくれた。

中を開けると、愛情の詰まったものがたくさん出てきた。

「先生、これはなんだと思う?」

袋に入った黒い塊を取り出した。

私はすぐにわかった。

「わかめスープ!!」

韓国では、お誕生日の人がわかめスープを食べるのが風習としてあるらしい。

韓国学生の誕生日にはよくご馳走になっているのですぐにピンときた。

彼は言った。

「実はね、わかめスープは、お誕生日の人じゃなくてお誕生日の人のお母さんが飲むものなんです。

出産の後は体力をつけないといけないので、大切な栄養分がここにたくさん詰まっているんです。」

へぇ〜〜〜!!!!

「僕、昨日まで韓国に里帰りしていたので、母に頼んで作ってもらったんです。

“日本で一番素敵な先生が子供を産んだから、とびきり美味しいのを作って”って。」

え、泣く。

その他にも、真蛸のキムチ、白菜キムチ、煮卵、韓国のりを差し入れてくれた。

「口に合わなかったら無理に食べなくていいからね。」

爽やか〜〜〜!!

全部たいらげます!!

早速食卓に並べて家族で美味しくいただきました。

韓国お母さんの味

愛しか感じない食事。

そんな彼の実家は少し変わっている。

韓国の孤島に位置する彼の実家。

「島の人口は100人で、

僕が日本にいるから、今、島の人口は99人なんです!」

何気にこの一言にツボった私。

そこには、本島とつなぐ橋が1本だけ通っていて、引き潮の2時間だけしかその姿を現さないらしい。

しかも、季節によってその時間がバラバラなので、深夜2時〜4時まで引き潮とかいう生産性のない開通時間もあるらしい。

買い物とかどうするの?

と聞くと、

本島から商品を乗せたトラックが引き潮の時だけ来て、

「牛乳ありまーす!」と爆音スピーカーで町民に知らせて買い物するシステムがある。

らしい。

すごいな!!!

彼は、日本でIT会社にインターンし、就職も早々に決まったことがある。

その島で、ITを学ぶってどうやったのか聞くと、

「その島で、僕の実家に唯一Wifiが通っていたんです。」

あらま〜〜!!

こんだけインターネット環境があってもITを学べない人もいるのに!

環境のせいにしてたら、夢なんか叶わないと痛感した。

彼は、インターン先で得た大企業のその就職に対しても、

「僕はもっと学びたいことがあります。」

と断り、本校で受験勉強をすべく再び来日した。

一度は、東京の有名な大学で入学が決まるも、

家が貧しいため泣く泣く入学を断念。

それに手を差し伸べたのが本校の校長だった。

「出世払いでいいから。」

そう言って、
学校立ち上げ当初、

彼を特待生として受け入れ、全力で受験のサポートをした。

そして彼は晴れて大学に合格し、

優秀な成績を残しているので奨学金制度を受け、

学費は一切免除で夢に向かって勉強している。

彼は、ITのスペシャリストで、授業でも教授に代わって学生の勉強のサポートをすることがしょっちゅうだそうだ。

同級生に、「なんでこの問題できるん?」と聞かれたら、

「予習と復習をして授業に臨めば、誰だってできるよ。」

ともっともな意見で論破しつつも優しく教えているようだ。

彼のこと、ずっと天才って思ってたけど、

並々ならない努力の積み重ねが彼の人格と成功を生み出しているのだと痛感。

彼が差し入れてくれたお母さんの料理から伝わった愛情がそれをも物語っていた。

夢は諦めず、どんな環境でも糸口とひたむきさ、縁を手繰り寄せて叶えていくものだと実感した。

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