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セブンペイ問題の本質

もう一つ決済ネタを。

セブンペイが大失態を起こしたことについてはもはやここで書くまでもないことなのだが、実は日本のメディアが書いていることについて少々の違和感を持っていた。

ちょうど同じ時期に、キャピタルワンというアメリカの金融大手が1億人強のデータを漏洩させたことがニュースになった。
過去最大規模と言われていて、その規模はセブンの比ではない。

アメリカの小売業界では過去、ターゲット、ホームデポ、TJマックス、とハックされた企業は少なくなくて、どれもセブンよりもそうとう規模は大きい。
けっこう頻繁に発生しているのだ。

何を言いたいのかというと、珍しいことではないということなのである。
当然のことながらハッキングを肯定しようとこれを書いているわけではなくて、事実として情報漏洩は頻繁に起こっていて、セブンだけじゃないということを知っておいて欲しいのである。

ハッカーとセキュリティは、双方が絶えず進化していくので、戦いに終わりはない。
だからまたいつか同じ事故が発生する可能性はもちろん高くて、だから日本のコード決済やっている他社は、漏洩一発で退場したセブンペイを横目で見ながら、明日は我が身と身を引き締めているに違いない。

さて、私が感じた大問題は、社長のあの有名な答弁である。

どうやら二段階認証用をご存じなかったようで、そういう人がデジタル最前線の企業の社長をやっているということに驚いた人は少なくないだろう。

たぶん彼は上から降ってきた人で、決済の現場を知っている人ではないということが分かってしまったわけなのだが、実は彼のようなデジタルの現場を知らないアナログな人が経営層にいるのは、こと日本の小売業界では珍しいことではないのである。

なぜそうなるのかというと、日本の小売業界にとって、テクノロジーやデジタルは差別化要因ではなくてインフラの一つに過ぎず、だから強化するとか、てこ入れするとか、そういう分野ではないからである。
デジタル系子会社の社長を選任するときに、「ご苦労さん、子会社に行って定年までの数年をつつがなく過ごしてくれ、やることはあまりないから」という人を据えてOKなレベルなのだ。

この分野のほとんどを外部ベンダーにやらせていることが、そのマインドの証左だ。
もし競合と勝負するために必要と考えているならば、アウトソースなどせずに自前にすることだろう。

このマインドはたぶん今の日本の小売企業の社長クラスのほとんどに共通しているはずである。
口では言っている人はいるが、たぶん本当にそう思っているわけではなくて、今は流行っているからとりあえず言っておこう、ぐらいな程度である。

実はもうすでに小売業界のデジタルやテクノロジーは他社との差別化要因になっていて、少し大げさに言うと、店舗営業部や商品部と同じぐらいに重要なのだが、そのことを肌感覚で理解している経営者は残念ながらあまりいないのだ。

セブンペイのゴタゴタを見て、こんなことを考えてしまった。
きわめて切実な問題である。

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