ハンドメイド販売で『不正競争防止法』について気をつけること

こんにちはTT CRAFTです。

僕は、自分で作ったハンドメイド作品を広めたいと考えて、販売などの際にトラブルになることがないよう、基礎知識として知的財産権を調べてきました。

これまで特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権と調べ、それぞれまとめてきました。

『ハンドメイドの知的財産について調べてみました【PART1】(特許・実用新案・意匠)』では、特許権・実用新案・意匠について、

『ハンドメイドの知的財産権について調べてみました【PART2】(商標権)』では商標について、

そして『ハンドメイド作品には著作権はない!?(前編)』『ハンドメイドの著作権を侵害する行動とモラル(後編)』では著作権について調べました。

そして、『ハンドメイド作品に、特許・意匠・商標・著作権がどのように適用されるのか聞いてきた』で、調べた結果を弁護士さんに聞いた内容をまとめています。

そして今回は、知的財産を守る法律として、『不正競走防止法』を調べました。

不正競走防止法は、知的財産法で保護しきれない不正な商業行為をカバーする法律です。

今回も、仕事とハンドメイド活動の両立で忙しい作家さんの、貴重な時間を無駄にしないよう、ざっくりとハンドメイドに絞って述べていきたいと思います。

1.不正競争防止法で商標を守る

商標(ハンドメイド作家さんの屋号や、作品名)は登録しなければ、商標権として守られません。

つまり、商標登録をしていなければ、他人が勝手に自分の商標や、似た商標を使って販売していても文句は言えないということになります。

しかし、この場合でも不正競争防止法を根拠に、相手に商標の使用をやめさせることができます。

そのとき、『自分の商標が、周りに知られていること』と『購入者が混同しているか』が条件になります。

全国的に有名である必要はありませんが、「あるコミュニティで『○○』と言えば、この人!」ぐらいに知られている必要があります)

なので、商標登録されていないからといって、どこかで見た誰かの商標を使用することは、おススメしません。

2.不正競走防止法で意匠を守る

商品のデザインを保護する意匠登録は、ハンドメイド作品も登録することができます。

しかし費用が数十万円から百万円必要になるなど、現実的とは言えません。

では、デザインはマネし放題かというとそうではありません。

先ほどの商標と同じく、『自分のデザインが、周りに知られていて』、『購入者が混同している』場合は、不正競争防止法を根拠にそのデザインの使用をやめさせることができます。

もちろん、あるコミュニティで『このデザインといえば、この人!』ぐらいに知られていることが必要です。

3.不正競争防止法で、模倣品を作らせない

他人の商品と、瓜二つの商品を販売することは、不正競争防止法で禁止されています。

ただしこれには、条件があり、

① マネされる側の商品が日本国内で最初に販売されてから3年以内であること

② ありふれた商品ではないこと

③ 商品の機能を確保する為に不可欠な形態でないこと

が必要です。

③ の商品の機能を確保する為に不可欠な形態とは、例えば財布の場合は、小銭入れや、カードを入れる部分が必要です。

そうした機能として必要なデザインは除く、ということになります。


4.パロディや表示には注意

ハンドメイド作品を作るうえで、不正競走防止法の観点から、気をつけることもあります。

① 有名なブランド名のパロディなど

ハンドメイド作品で既存のブランドのパロディ作品を制作・販売することは、それなりにリスクがあります。 

不正競争防止法では、有名な名前や、有名な商品名と同じもの・似たものを使用するのをやめさせることができます。

買う人がパロディとわかって買っていても、その名前などの使用を辞めさせることができ、ブランドを守るための性格がより強いものです。

「スナックシャネル事件」(最高裁平成10年9月10日)では、シャネルという名前を使って営業していたスナックを、フランスのシャネル社が不正競争防止法を根拠に訴えを起こし、最終的に使用をやめさせる判決が出ています。

スナックの「シャネル」と一流ブランドの「シャネル」は誰が見ても関係ないと考えますが、「シャネル」のブランド力にただ乗りすることを許さなかった判決と言えます。

ちなみに、似たような事件で、フランク・ミュラーのパロディ時計を販売している「フランク三浦」を、フランク・ミュラーが、商標権を根拠に訴えを起こしていますが、価格帯の違い(フランク三浦は4,000円~6,000円程度で買える)から、購入者が間違えないとして、「フランク三浦」という名前の使用を認める判決が出ています。

このように、不正競争防止法では、明らかにパロディとわかるような場合でも、似たような名前を禁止することができ、ブランドの信用力にただ乗りすることに対して厳しいと言えます。

② 原産地や品質を誤認させること

不正競走防止法では、商品に、原産地や品質を誤認させる表示をすることを禁止しています。

食品の産地偽装事件がたまにニュースで取り上げられたりしますが、食品だけに限られるわけではありません。

「世界のヘアピン事件」(平成8年9月26日大阪地裁判決)では、「世界のヘアピンコレクション」と表示した、ヘアピンの箱に各国の国旗も表示して販売していました。

判決では、ヘアピンが、それぞれの国で製造されたと誤認させるとして、販売を差し止められました。

 また、「京の柿茶事件」(東京地裁平成6年11月30日判決)では、京都で製造、加工もしていなくて、原料も京都産でないお茶の容器などに「京の柿茶」「KYO NO KAKICHA」の表示をして販売していたことについて、買う人が、お茶で有名な京都で作られたものだと勘違いしてしまう行為であると判決が下りています。

当事者にだましてやろうという考えがあったかは、実際にはわかりませんが、悪気がなくてもやってしましそうな気もします。

「京の○○」なんかは語呂がいいし、作品やパッケージに国旗は入れるだけでオシャレになる気がします。

もちろんデザインとして国旗を入れるだけであれば問題はありません。

革製品では、イタリアンレザーなど産地そのものが品質を示しているものもあります。

買う人が、その商品名やパッケージを見て勘違いして買わないか、ということを考えてから、販売した方がよさそうです。

5.まとめ

僕は、自分で作ったハンドメイド作品を広める手段として、販売を選択しました。

でも、それが基でトラブルになってしまったら、せっかく楽しく長く、自分の作品を広め続けることができなくなってしまいます。

僕は知的財産権については、車と同じだと思います。

周りが交通ルールを守っているのに暴走行為をすることは、周りに迷惑をかけたり、嫌な思いをさせたりしてしまいます。

スピード違反でつかまったとしても、知らなかったでは許されません。

事故を起こしてからでは遅いので、ハンドメイド作品の販売をする以上、知的財産権についての最低限の知識はあるにこしたことはないと思います。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考文献

・『知的財産管理技能検定3級公式テキスト改訂10版』 
著:知的財産教育協会 出版:アップロード

・『パクリ商標』
 著:新井信昭 出版:日本経済新聞出版社

・新時代の商標・意匠・不正競争防止法Q&A(第17回・完)
http://www.chosakai.or.jp/intell/contents15/201509/201509_7.pdf

・2017-05-23 不正競争防止法と品質等誤認惹起行為(弁護士法人クラフトマンHPより)
http://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20170523/

・偽装表示の防止と不正競走防止法 事業者間の公正な競争を確保するために
「経済産業省知的財産政策室」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/panfrethontai.pdf

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