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映画好きの間で『アス』が話題になっている理由。分断の行き着く先。【ネタバレなし】

 そのまま、何も考えずに観ても、とても面白いエンターテイメントホラー映画『アス』が、なぜ、他の映画と違うのか、『アス』が重要な理由、話題になっている理由について、触れてみようと思います。映画好きの間では、よくよく知られている内容です。あまり映画詳しくない人にも届きますように。相変わらずの駄文ですが、お付き合いください。

 当初、違う映画を観る予定でした。映画館に向かう通路でこのポスターをみて、ジョーダン・ピールとルピタ・ニョンゴのタッグが今日公開なの?えっ?って気付いたら『アス』のチケット買ってました笑 ただのホラー映画でしょ?と終わらせるにはあまりにももったいないタッグなのです。

ジョーダン・ピール監督の映画を見るべき理由

 まずジョーダン・ピール監督がなぜ重要人物なのか。
 もう一言で言うと、初監督作品『ゲット・アウト』で、アフリカ系アメリカ人がアカデミー脚本賞をとったから!しかもその内容は、白人社会、アメリカ社会を皮肉った内容。たとえば、映画の中に出てくる「うわーこいつ絶対悪いやつ」。サスペンス映画でいう最初に死ぬやつ。ラブコメでいう仲良しだと思っていたら実は裏で色々やってるライバルみたいなやつ。その役をジョーダン・ピール監督は全部白人にあてる。今までだと白人が無意識に有色人種に対して抱いていたステレオタイプ(黒人はいつも冗談言う面白い主人公の親友とか、アジア人は真面目でメガネ、主人公では使わないみたいな)つまり今まで観てきた映画の世界のお約束を全部逆転させていて、それがそっくりそのまま皮肉になっている。

 さらにジョーダン・ピールはコメディアンとしての経歴もあるため、そもそもの笑いのセンスがすごい。ホラーとしてもちろん良質。深読みしたら現実と繋がっていて、社会的な映画としてみるとよりこわっ。なんですけど、結果コメディ映画になってるところがめちゃめちゃすごい。全然悲観的な作品になっていない。

 初監督作品『ゲット・アウト』がアカデミー脚本賞をとった時、大本命は『スリー・ビルボード』だった。(もちろん!『スリー・ビルボード』も素晴らしい映画!!大プッシュ!)ここでジョーダン・ピールがアカデミー賞とった意味を考える。同じく黒人映画監督、スパイク・リーが何年もかかって2019年に『ブラック・クランズマン』でようやくアカデミー賞取れたことと比較すると、アカデミー賞のダイバーシティ化は本当に進んでいるなぁと思わされる。

 つまりジョーダン・ピール自体が次世代のアメリカ人クリエイターとして、超重要人物。(伝わってますように。)

多様性社会の象徴、実力派女優・ルピタ・ニョンゴ

 そして、今回映画の主演女優を務めるルピタ・ニョンゴ。
 彼女は今劇的に進むハリウッド映画ダイバーシティ化のまさにアイコン的存在。2014年『それでも夜は明ける』はアメリカ人にとって一つのタブー(アメリカ白人が黒人を拉致して奴隷にしていた事実)を取り扱っている映画。この映画において、彼女はアカデミー助演女優賞をとります。この時のドレスが本当に綺麗。

 また、黒人が初めて主演アメコミヒーローになった『ブラック・パンサー』でも彼女はヒロインを努めます。今まで、有色人種が主演の原作ものは、映画化された時、白人が演じるのがハリウッドの通例でした。(ホワイトウォッシュ、映画、で検索をかけると沢山の作品が引っかかります。)『ブラック・パンサー』は舞台装置、配役、監督の起用、音楽、ファッションに到るまで、完全に黒人のルーツリスペクト!です。しかもその映画が、商業的にも大大大成功を収めていることにむちゃくちゃ意味があります。

 なので、ルピタ・ニョンゴ本人が何も感じていなくても、彼女は新しい時代の象徴みたいな意味を持っちゃってます。
 あと今回の『アス』観て思ったんですけど、演技力半端ないです。これオスカー主演女優賞のノミネートある。

分断の行き着く先をみた私の超個人的な感想

 映画の深い意味、監督の想いは、検索したら沢山出てくるので、映画を観終わった後に是非是非答えあわせをしてみてください。

 最後に。私がこの映画をみて感じたのは、こっちの世界とあっちの世界は紙一重で、それってラッキー的なものでしかないのに、もっている側はなぜか自分のもちものを、あたかも与えられてしかるべきな、当たり前のものとして感じている。本当はそんなことなくて、お互いの緊張が破裂する前に、もっともっとお互いに交換しておくべきだったんだって、そんなことを感じました。
 今、世界各地で、どんどん分断が進んでいます。この映画は分断の行き着く先を見せているからこそ、本当にこわい映画だし、日本人にとっても重要な映画だなって思います

 もはや、傍観者も、同罪です。だから、私も同罪。その上で、目の前を見つめ、自分を深く掘り、何ができるのか、考えたいし、いろんな人と語りたくなるとっても良い映画でした。

#アス #ジョーダン・ピール #ルピタニョンゴ  

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