見出し画像

韓国映画『工作 黒金星と呼ばれた男』を観て。

最近おハマりな韓国映画。今日は『工作 黒金星と呼ばれた男』を見た。
すでに公開されている1980年の光州事件を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』と1987年の民主化運動を描いた『1987、ある闘いの真実』に続く実話に基づいた作品。今回の舞台は1990年代。金大中が大統領になる近辺に黒金星というコードネームを持ったスパイが、政局に翻弄されるお話。(詳細はぜひ公式HP、もしくは予告をご覧ください。)

ここ最近。まったく韓国映画のクオリティの高さに驚かされる。およそ5、6年前映画館でボランティアしていた時、オーナーが「アジア映画のクリエイティブの拠点、もっとも映画マーケットがアツい場所は釜山国際映画祭。韓国映画はすごい。」と言っていた。よくよく調べてみると東京国際映画祭とは力の入れようが大きく違うことがわかる。まぁそれはさておいて。『工作 黒金星と呼ばれた男』の何がすごかったか。主観的な視点で、備忘録としてゆるーく残しておこうと思います。

”おじさん”が主演のスパイ映画が大好物

”おじさん”シリアススパイモノって、あえて光で飛ばしたりせず、”おじさん”の毛穴まで写すじゃないですか。あれ、いいですよね。今回もドアップのひげ剃りシーンがありました。メインキャストが”おじさん”だと、画が重くなることによってストーリーにリアリティが乗っかります。それが、とっても良い。あと身近にいそうな”おじさん”を使うことによって、映画のシーン毎にどんどん、どんどん格好良く見えてくる。プラスマイナスゼロの状態から始まるので、プラスしかない。
私、好きです、”おじさん”。ソン・ガンホやマ・ドンソクなんて、どんどん可愛く格好良く見えてくる”おじさん”の代表格。特にソン・ガンホは、登場するだけで圧倒的にその映画が面白くなるからすごい。

ここで、そんな私のおすすめ”おじさん”シリアススパイ映画を紹介しておきます。

『インファナルアフェア』2002年 香港

アメリカではスコセッシ監督がディカプリオとマット・ディモンで、日本では香川照之と西島秀俊でリメイクされてますが、やっぱりオリジナル版が一番好き。”おじさん”社会の理不尽さ、後戻りできなさ、泣けます。
特に、苦しいほどに人間のあっけなさを見せつけるクライマックスのエレベーターシーンが好き。

『裏切りのサーカス』2011年 英・仏・独

『レオン』で最高にイかれた悪役を演じたゲイリー・オールドマンのこの渋み。映画の中では穏やかな目立たない”おじさん”(いかにもリアリティのあるスパイ!)を見事に演じていらっしゃるのですが、ただ川で泳いでいるだけなのに狂気が滲み出ちゃっていて、ふと恐い。本当に。

他にもスパイとは関係なく魅力的な”おじさん”の渋みを紹介。
『ゴッド・ファーザー』のマーロン・ブロンド、アル・パチーノ。
『アウトレイジ』シリーズに出てくる”おじさん”全員。
『ノー・カントリー』のハビエル・バルデム。
総合的に一番かっこいいおじさんは間違いなくブラッド・ピッドだと思う。
…と思った矢先、シルベスター・スタローンの存在を思い出す始末。
…もう言い出したらキリがない。

韓国映画『工作 黒金星と呼ばれた男』について書くつもりが思わぬ方向に脱線してしまいました。『工作〜』はなかなかキツイ現実を描いています。
考え方、持っているイズム、立場は人それぞれだけど、共有できる現実・事実もまた、必ずあると信じています。好き嫌いを越えて、もっと大局に立って解決する糸口があるのではないかと教えてくれる作品です。
この映画を見て、やっぱり韓国の官僚ってどうかと思うって方もいらっしゃると思いますが、この事実と向き合っているのは紛れもなく映画を作った韓国人です。政局を越えた友好がそこにはあります。
この映画を観ると、友好は命がけ、信頼関係は長期間かかることがよくわかります。また築いてきたものを壊そうとすれば一瞬で壊せるということもよくわかります。その時に犠牲になるのはいつも庶民です。
悲しいのは、和平に向かう道のりのために捨てられた命がたくさんあるということ。
今逆行しているように感じますが、東アジア諸国が和平の道のりへとハンドルを切り替えて欲しいなと心より願います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?