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世界トップ大学のアントレプレナー育成システムに触れて|2023シンガポール国立大学視察記①

世界トップ大学のアントレプレナー育成システムに触れて|2023シンガポール国立大学視察記①

お久しぶりです。2023年2本目の投稿。

大学は春休みに入りましたが,慌ただしく過ごしている間に2月も終わりに近づいてきました。「え,あと4日で終わるの?」そんな感じです。

この春休みはシンガポール,イタリアへの海外出張に加えて,米国ボストン近郊のBabson Collegeによるアントレプレナーシップ教育(EE)のFDプログラムが4日間フルで開催されることもあり,EE三昧の日々ということにな

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隠れた真実:ZERO to ONEより

隠れた真実:ZERO to ONEより

ピーター・ティールのスタンフォード大学での講義録をベースにした著書『ZERO to ONE』を改めて読んでいる。ちょっとしたブレイクスルーが欲しかったから。

この本の有名な一説と言えば、「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何か?」という問い。研究者として科学的な問いを立て、それを解いて証明するプロセスに馴染んでいると、実はこの問いに対する答えを窮する。先行研究を基礎とした知の積み重ねを行う

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組織とともにあるヒトを幸せにする管理会計?

組織とともにあるヒトを幸せにする管理会計?

昨日,ちょっと頭に来たというか,メンタルに来たことがあって食事が喉を通っていない。なんとか自分をコントロールしようとしている。大丈夫,きっと大丈夫だと言い聞かせながら。

それはさておき,今日は投資ファンド氏のアレンジによって,起業以来創業者として事業を構築され,現在では東証1部上場まで導いた経営者(経営者氏としておこう)とのディスカッションだった。同社はソフトウェア開発会社で,Webを見ていると

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人間主義的管理会計?

人間主義的管理会計?

一昨日の記事の続き。

このあと昨日はスタートアップ企業C社とのミーティングだった。そこではこの記事で書いたこととは真逆に非常に細かなソリューション提供型の話をした。これは完全に私のミスだったんだけれども,このミスがあったおかげで自分が立つべき立ち位置が明確になった気がした。

この点はまさに今朝のミーティングで投資ファンド氏(とあえて命名しておきます/キャラ化)から指摘された部分でもあり,分かる

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管理会計システム拡張の視点:スタートアップ企業との対話を通じて

管理会計システム拡張の視点:スタートアップ企業との対話を通じて

著書を上梓してから1ヶ月半が経過した。初めて付いたAmazonのレビューは星3つとガックリしてしまった自分がいるんだけれども,捨てる神あれば拾う神あり。

Amazonさん,長らく在庫状況に変化なしのところを見ると,もう売る気ないのかしら…。

ジュンク堂福岡店さんにはPOPまで作って販促して頂き,感謝です。どうやら残念ながら売れた形跡はないんだけれども,東京,大阪,福岡などのジュンク堂大型店では

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『経営管理システムのデザイン』序文

『経営管理システムのデザイン』序文

現在,これまでの研究をまとめた著書の発刊に向けて準備中ですが,序文はこんな感じで書き記しました。

著書のタイトルは,『経営管理システムのデザイン:中小企業の管理会計実践の分析』となる予定です。不安と期待とドキドキが重なる時間を日々過ごしています。他の仕事が手に付かなかったりもします。正直自分の研究には何も自信がありません。ただ,まとめることで自分に何が見えたのかを知りたいし,それがお読み頂いた皆

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第5章 中小製造業に見る管理適合的な記録とは:「管理中心主義」からの検討

第5章 中小製造業に見る管理適合的な記録とは:「管理中心主義」からの検討

いよいよ本章から事例研究に入ります。今回の著書では独立した章で8社の調査結果をもとに述べていますが、ここに挙げた2社を加えると全部で10社の中小企業の事例となります。業種は製造業を中心に絞り込んでますが、企業規模は多様。これまでのアンケート調査でも明らかなように、従業員数30名程度から次第に公式的な管理システムが整備されていく様子が明らかになっていますが、実は研究において最も苦労して、最後の最後に

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第4章 中小企業のマネジメント・コントロール・システムと組織成員の動機付けに関する実証研究 -熊本県・福岡市内の中小企業を対象として-

第4章 中小企業のマネジメント・コントロール・システムと組織成員の動機付けに関する実証研究 -熊本県・福岡市内の中小企業を対象として-

今回は第4章です。第2章,第3章と熊本県と福岡市の中小企業を対象としたサーベイ調査(いわゆるアンケート調査)の結果をもとに,共分散構造分析という手法を用いて,マネジメント・コントロール・システムと組織成員の心理的要因(モチベーション),そして企業業績との因果関係を明らかにしようとしたものです。

その分析方法にはいろいろと問題があると自分自身では感じていますが,このあとに続く定性的調査(インタビュ

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第2章 中小企業における経営管理・管理会計実践に関する実態調査 ―福岡市内・熊本市内の中小企業を調査対象として―

ここから論文は第1部に入ります。第2章から第4章の第1部は熊本県と福岡市の中小企業を対象に行ったサーベイ調査を中心にまとめています。第2章はサーベイ調査の報告,第3章は従業員別の傾向を平均差の検定で測定,第4章は変数を合成して共分散構造分析にトライしています。

今日は第2章の調査結果を見ていくことにしましょう。

1.はじめに本章は,未だその実態が完全に明らかにされていない中小企業の経営管理・管

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中小企業の管理会計実務③:直接原価計算を活用した部門別限界利益管理

中小企業の管理会計実務③:直接原価計算を活用した部門別限界利益管理

早いものでこのシリーズも3回目。中小企業の管理会計実務について簡単な解説が書ければと思い,これまで調査してきた事例の中から特徴的なものを取り上げて簡単に説明していきます。

今回は直接原価計算を用いた責任会計制度(会計数値に紐付けられた部門あるいは個人の責任範囲を定める約束事)について書いていきます。

なお,第1回(原価管理≒時間管理で十分),第2回(直接原価計算をアレンジ)はそれぞれ下のリンク

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第1章 マネジメント・コントロール・システムのデザインを考察する対象としての中小企業

第1章は今回の研究を行うバックグラウンドについてまとめました。先行研究の状況やこの研究を通じて明らかにしたいことを書いてみました。ぜひご一読ください。

1.はじめに中小企業白書2019年版によれば,日本国内の全企業359万者のうち,いわゆる中小企業や小規模企業者と呼ばれる企業は358万者あり,全企業の99.7%を占めている。このうち,製造業では従業員数20名未満と定義される小規模事業者は305万

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序章 マネジメント・コントロール・システムのデザイン:情報デザインに関する議論から

序章 マネジメント・コントロール・システムのデザイン:情報デザインに関する議論から

今、ちょこちょこと書いている原稿をアップしていきます。中小企業の管理会計実務のマガジンもいずれ有料化できるくらいの価値作りたいなぁとか思ってます。これは今書いてる書籍の研究フレームワーク。デザインに関する議論と管理会計システムの関係について検討してます。

ありがたいことに研究者として飯食わせてもらってますが、管理会計もデザインも専門と呼べるほどではありません。何やっても三流です。が、学生時代から

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マネジメント・コントロール・システムのデザイン(再考)

マネジメント・コントロール・システムのデザイン(再考)

先日,こんな投稿をしたんだけど,やっぱり納得行かなくて修正した。

こっちの方がずっと考えてきたことを形にできているように思う。ま,どうしてデザインなのかはさておき。

すでにお読み頂いているかもしれませんが,中小企業の管理会計実務をまとめた簡単な文章を書いてます。もしご興味があれば,どんな実務があるのかをお読みください。

こちらは第1回の記事。中小製造業で「原価」管理ではない,「原価管理」が行

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中小企業の管理会計実務②:直接原価計算を活用したキャッシュ・フロー管理

中小企業の管理会計実務②:直接原価計算を活用したキャッシュ・フロー管理

さっそく2回目。今回は企業経営の現場ではよく使われる直接原価計算のお話です。

公表される損益計算書では原価の変化がよくわからない一般に公表される損益計算書では、大量生産品を作るような製造業では総合原価計算を用います。

総合原価計算の特徴は、費用を材料費、労務費、経費と費目別に集計し、製品に関連づけられる直接費とそうではないけれども製造には関係する間接費に区分します。そして、間接費は他の製品製造

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