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COVID-19は時の流れを止めたのか:枕崎・小林・訪問記③

これまで2回にわたって8/25-29までの鹿児島県枕崎市,宮崎県小林市への訪問について記してきた。今回はその最終盤に訪問した2つの街について記録として残しておく。

第1回,第2回の記事は下記からご参照下さい。

急遽,青島へ向かうことに

本来であれば今回の旅程では29日まで小林に滞在する予定にしていた。ゼミ合宿のあと,29日に小林でイベント「フューチャーセッションズ」を開催する予定だったからだ。しかし,県独自の緊急事態宣言が発令されて,小林市内でも県外者の訪問自粛,公共施設の閉鎖などが行われていたため,すべてが中止になった。

だから発想を切り替えて,ここは29日までゆるりと小林で過ごす予定にしていた。日南で職を得たゼミOGは次の1年をどう過ごすか報告に来ていたし,もっといろんな話をゆっくりしたかった。

そうしたところで,無駄イバーシティハウスオーナーのしょーさんから提案が。

「青島に呼ばれたので,一緒に泊まりに行きませんか?」(意訳)

昨年9月の娘氏の誕生日以来の青島。途中合流していた妻氏と娘氏に尋ねると「海ちゃぷ(海でチャプチャプすることの略)できるなら行きたい」ということで,我が家の方針は決定。28日午後から青島に向かうことにした。

小林から車で約2時間。青島に到着。

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今日の宿泊地はこちらのアオシマアパートメントに。アオシマアパートメントは「ソーシャルシェアハウス」と銘打っていて,月15日までの滞在で3.3万円(税込)で滞在できる。部屋は個室になっていて,ベッドとテーブルが備え付けられている。車で行った場合,駐車場を自ら確保しなければならない(近所の観光駐車場は1日500円)が,価格を見れば十分に安い。

伺ったときには日焼けしたサーファーやご家族で来られている方も。シャワー,ランドリーとキッチンは共用だが,ワーケーションをするには非常に良い環境と言えそう。

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2階はコワーキングスペースになっていて,モニターも設置されている。Wi-Fiも当然つながるのでノートPCを持っていって仕事も可能。

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1階にはハンモックもあって,同行者たちはさっそく遊び始めてました。近くはすぐ海岸だし,1日500円払えば何度も出入り可能な温泉もある。近所のスーパー・ボンデリスは商品の品揃えに驚嘆。お酒も食品もちょっとしたこだわりが見える。

特に朝ごはんにと購入したパンは価格が安くて,どれも美味しい。ネットで調べてみると宮崎県産小麦を使用したこだわりパンだそうで。

夜にはしょーさんのライブが開催されたそうなんだけど,もう疲れ切ってしまった私は眠りこけてしまいました。ああ,残念。

10ヶ月ぶりの日南へ

翌朝は一路南下し,昨年11月以来の日南へ。学園祭も中止になり,日南でワーケーションをしようと伺って以来のこと。あのときは,ゲストハウスにチェックインしようと思ったら女子商マルシェに関連した連絡が入ってきて大慌てした記憶がある。

ここ数年日南にたびたび伺っていることもあり,かつてはこんな投稿もしていた。いくつかある馴染みのある街の1つ。

しかし,COVID-19の蔓延が始まってからはなかなか訪問することができていない。福岡が緊急事態宣言で動けないこともあるけど,SNSを通じて伝わってくる宮崎県内の警戒心の強さから近寄ることもしていなかった。

が,青島まで来たのであればと日南へ。油津商店街について聞いていた同行者も「見に行きたい!」ということだったので,短い時間の滞在になることを承知の上で向かうことにした。久しぶりに会う皆さんは元気そうだった。

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元祖カープ女子のひとみさん。イケメン2人に油津商店街について語る。

ランチは湯浅豆腐店へ。他の店も行きたいけど,妻氏がいるとどうしてもここに。それほどまでに美味しい豆腐が頂ける。

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ご夫婦ともに元気そうで何より。

ここのランチでちょっとした邂逅が。

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横浜から移住してきた「れろ」(ニックネームです)のオフィス

油津商店街が生んだアイドルグループ「ボニートボニート」を追いかけて日南に移住してきた敏腕SE「れろ」は,宮崎県内の城巡りが趣味。まあ,城と言っても私たちが想像するような天守閣がある「城」ではなくて,戦国時代等に築かれた土塁のような城。

私が「小林にも城があるよね?」と水を向けると,れろは喋る,喋る。しょーさん曰く,「小林の郷土史家よりも知ってるんじゃないか」とおっしゃるほど。もしかしたら,そのうちにニシモロを楽しむメディア「ピ」でも取り上げられるんじゃないかしら(笑)。こうやって人と人がつなっていくのは面白いものです。

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商店街内にある宿泊スペース「ADDress」の入口にはブランコが。

食事とちょっとした散策で都合3時間ほどだっただろうか。久しぶりの日南滞在はあっという間に終わってしまった。

感染者の急増は街をより厳しい警戒態勢に置くような感じもあって,商店街内のシンボル的カフェは「市外者以外の入店お断り」になっていて残念。まるで「バイ菌」扱いされているようだけれども,それは仕方ない。早くワクチン接種者にパスポートを配布して欲しい(できればアプリで)。

分断ってのはこういうことか?

それと合わせて気になったのは,商店街近くにコンビニができたり,商店街内の空き店舗にIT企業が入る工事が行われたりしていたけれども,ふとした瞬間に街の時間が止まっていたような感覚に陥ったことだ。

この感覚は,COVID-19によって進んだとされている「分断」そのものなのだろうか。自分自身は何でもないのに,その地域から拒絶されてしまっている感覚というか。

もちろん,この緊急時においては十分理解できることなんだけれども,普段福岡に住んでいる感覚とは全く異なる。ここまで訪問した枕崎や小林でも当然同様のことはあるのだろうけども,またちょっと違う距離感を感じた。中には「うちはコロナだろうが,なんだろうが,普通に商売をやりますよ」という店主もおられる。

「公共性が高い施設だから」という感覚とは違う。なんなのだろう。自分自身がワクチンを2回打ったからなのだろうか,日頃からそれなりに感染リスクと向き合って生活しているからだろうか。感染に気をつけながらも経済を回そう(回さざるを得ない)とする都市の生活者とは全く異なる。

もちろん感染をさせてはいけない,蔓延はさせてはいけないのだけれども,実は少しばかり「感覚の違い」に驚いた。そこまでしても経済は止まらないということなのだろうか。

おわりに:ハードとソフトのバランスを整えながら街の活力を高める?

油津商店街の活性化に尽力した木藤亮太さんが日南を離れて5年が経とうとしている。彼も日頃「油津のみなさんが自分たちの街をどうしたいのかを考える重要な時期。私もいつまでも『日南の木藤』じゃいけないし,油津もそう」というような趣旨を述べている。

そういう中で,ゼミOGのように次世代を担う人材が日南には入っている。別に彼らはインフラを整備するような立場ではないし,そういう手を加えられる立場にいるわけではない。移住はしてきたけれども,ずっとそこに住むつもりでいるわけでもない。タイミングが来れば街を出る可能性はある。ただ,彼らは街のレガシーをうまく活用しながら,地方都市をバージョン・アップさせようとしている。

例えば,COVID-19でオンライン化した大学での学びを活用して「ヤッチャの学校」という日南での学びの機会を創出しようということだったり,中高生向けに起業体験プログラムをやってみたりとソフト面でのバージョン・アップが進んでいる。あるいは,日南で木藤さんが次世代のために蒔いた種は2年ゼミ生と日南在住の高校生との対話という機会につながっている。

知っていれば時間は止まっていないのに,街をこの目で見ると止まっているように感じてしまう。ノスタルジックな変わらない良さもあるし,見た目が変わらないことで得られるネガティブ=時代遅れ感もあるし,このあたり何をもって語るかによって印象も大きく変わりそうだ。

が,残念ながら地方都市には構築物に投資をする余力を十分に持たない。では,かつてのように東京などの大企業からの資本誘導でもって街は潤うのか。そもそも「街の潤い」とは何なのか。

一昨年の日南での合宿当時,私はこんなことを書いていた。

今回の日南,串間の訪問を通じて私に与えたインパクトはとても大きなものであったように感じる。それが具体的にどんな形で現れるかはわからないけれども,確実に言えることは,都市にある生活の豊かさ=ある豊かさと地方にある生活の豊かさ=ない豊かさと捉えがちだけれども,実はその逆もあるということ。それを交換しながら生きていくことができるのではないかということ。

ソフトは目に見えず,ブラウザ上,アプリ上,人々の語らいの間でしか体感できない。観光業はソフトではない。極めてハードに依存し,投資の回収可能性が問われる。それだけに無理をしなければならない場面もある。地域おこし,地域振興,観光振興とは違うソフトをどう創るかに「街の潤い」を考えるヒントがありそうである。

その昔、リチャード・フロリダはクリエイティブな都市の条件として、寛容性、多様性、開放性を取り上げていた。

この旅を終えて2週間が経過した。今回の旅のキーワードがいくつか出てきたように思う。

「探索と集中」,「関係人口」,「余白」,「潤い」

何かがあるから興味がある。興味があるから関わってみよう。こういう消費は仕掛けられるものなのだろうか。その街に住む人々は果たして望んでいるものなのだろうか。単に大学生が関わるということだけでなく,どういう街にしていきたいのか,そのためにはどのような価値をプロットしていけば良いのか。考えるキーワードは出てきたけれども,どこに答えがあるのだろうか。

人を惹きつけ、競争力をある程度備えた都市の条件は寛容的であり、多様性を需要し、外に開かれていること。都会と地方という切り方ではなく、関わる人が多く、余白あるいは余裕を感じながら、潤いを与えることができる街。そこで経済がしっかり回って、付加価値を創造することができる街であれば…。

いろいろとできることが見えてくるはず。

でも、私はその場にいる実践者ではないが故に、わからないことが多々あるように思う。まだまだ多くを学ぶ機会を創りたい。そのために,もう少し没頭できる時間が欲しいと思う今日このごろ。

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