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上級生が下級生のロールモデルになる可能性|2022日田三隈高校×とびゼミコラボ授業①

高大連携アントレ授業3連戦の最終戦。今日は大分県日田市まで移動して、日田三隈高校にお伺いしました。

日田三隈高校は日田市内にある高校5つのうちの1つで、公立の総合学科を有し、中には簿記やビジネスを学んでいる生徒さんもいます。日田三隈高校とは、昨年の九州移住ドラフト2021に選手として出場した私と球団として出場し、日田で中高生へのキャリア教育を行っている岡野涼子さんとのつながりに始まり、今では学生が毎月ポップアップカフェを出店していること、そこから大学生が岡野さんの法人でのインターンとして関わること、そして今回の「みんなが社長プロジェクト」における高大連携事業に端を発します。

実際、去年末から今年にかけては高校生と共同出店を続けており、昨年のプログラムで高校生が学んだ成果は地元紙にも取り上げて頂きました。

地元紙にも取り上げて頂いたゼミの取り組み

またそこから着想して2022年度の高大連携によるアントレプレナーシップ教育をどう構築していくか、プログラムまで作ることができました。

なお、このサムネイルの写真は2022年のお気に入りの1枚。

そして、半年が過ぎ、学生の活動が日田で続いている中で、今年も新型コロナウィルスに気をつけながら「みんなが社長プロジェクト」を行うことになりました。昨年はスケジュールの都合上、告知はVTRをもとに岡野さんにお願いしましたが、今年はBESIDEに加えて、かねてから各地でポップアップ出店を続けておられるTANAMAKI by SPINNSからもご協力頂き、パワーアップした企画になります。

ということで、今回は日田三隈高校における2022年度の最初の取り組みを報告します。

街を豊かにするための付加価値の創造に高校生が取り組む?

日田三隈高校の体育館には約100名の高校2年生が集合。岡野さんからプログラムの全体像について話を頂いた後、私からは各地で話をしている「会社の機能と付加価値創造の意義」についてお話しした。

日田三隈高校2年生約100名との対話

高校生には極めて難しい話かもしれないが、簡単に言えばなぜ会社は儲ける必要があるのか儲けたお金はどこに行くのかを知ろうということ。そして、そうした生まれたお金が地域を豊かにするはずなんだけれども、なぜそうなっていないのかを考えてみようと投げかけている。

アントレプレナーシップ教育の第一歩は、いつも「自ら付加価値を創造し、それを社会に分配する」を概念的に理解することから。

アントレプレナーシップ教育を打ち出すと会計の話ではないと思われそうだが、私の中では立派に会計の話をしているつもりだ。

それは簡単な話で、付加価値をどう計算するのかではなく、付加価値が生まれる企業行動とその分配の話をするのに会計という情報体系を知っておくことに意味があると考えているからだ。また、デンマークの研究機関が中心に欧州全域で調査を行っているASTEE(2014)では、起業家的な自己効力感(Entrepreneurial Self-Efficacy)の1要素として財務リテラシーが含まれている。これは、予算策定や意思決定において会計情報をいかに活用できるか、成果を読み取り適切な判断ができるかという能力として測定されている。

だから、学生にもそうであるように、高校生にも同じ話をする。単に「働く」を給料をもらう手段として考えるのではなく、商売という行為を通じて自分と相手がともに幸せになる、価値を生み出していく活動として捉えるのだと。そうすることで、最初は1人で始まったことが周りの人に伝播し、それが自分の身の回りを、まちを、社会をより良く豊かなものにすることにつながるのだと理解を促したい。これを教育的に涵養する仕組みとしてアントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアスという概念を導入している。

SPINNSのポップアップ出店の紹介

ここまでの話は大学生に対しては明確に行うが、高校生にはそこまで理解が及ばないだろう。そこで、高校生のロールモデルたる大学生が彼・彼女たちにも理解できるような形で翻訳することで、こうした考え方を少しでも身につけ、自分の将来について考えるキッカケづくりをしようという狙い。

また、ビジネスの実践も重要だ。コロナ禍の影響もあって、自分で何かをする、自分が社会と繋がっているという感覚が乏しい高校生にとって、不特定多数の人と接し、さまざまな立場、年齢の人たちがどんな顔をして自分たちの商材を買いに来るのか、それを体験することにはたくさんの学びがあるはず。「理論なき実践は盲目であり、実践なき理論は空虚である」と言ったのはカントであり、教育者のレヴィンだという話があるが、高校生が少し年上の大学生と一緒に創意工夫をしながら、自分で商品を開発し、それが売れたという小さな成功体験を持つことはきっとポジティブな影響をもたらすだろう。だから、このプログラムには必ず実践の機会がある。高校側のご協力により、本プログラムが運営できる。本当にありがたい。

そうして2022年度は、昨年度に引き続き学生のポップアップカフェBESIDEと、新たにアパレルSPINNSから地域での若者との接点づくりを進めているTANEMAKIとの出店を行う。いずれも若者にとって興味があるであろうコンテンツ。これを通じて、街の外で消費する経験を街で創ることにより、自分の街でも同じことができる。無いから諦めるのではなく、自分たちで創れる。無いのは無ではなく、余白なのだから、たくさんの事業機会があることを知って欲しいという願いも込められている。

ポップアップカフェBESIDE COFFEE STANDの告知

続いて、今回出店する2つの店舗からの告知。先にBESIDEから。

昨年春から活動を開始し、新型コロナウィルスの影響からなかなか思うように活動ができてない部分がありつつも、月に1回ペースでの出店を繰り返し、固定客がつき始めている。しかし、当初は高校生をターゲットにしていたが、福岡では各所に見られる「カフェ」テイストのお店を出していること、高校生があまり来ない日田駅前で出店をしていること、どうしても土日に出店せざるを得ないことなどから認知が進んでいない。コーヒーについて語りたい、大学生に興味を持ってくださった社会人や商店街の方々が主たる顧客になっていた。

プロジェクトリーダーによるBESIDEプロジェクトの紹介

しかし、BESIDE=人に寄り添うという名前に込められている想いは2つある。1つは本プログラムがそうであるように、大学生が高校生のロールモデルとなることで高校生に近い未来の自分の姿を見て、何かを学んで欲しいということ。もう1つは福岡から来た大学生がポップアップでも珈琲店を営むことで、自分にもできるかもしれないと人に働きかけていくことだ。願わくは、地元の人に運営を引き継ぐ。そのために収益基盤をしっかり作ることを狙いにしている。

高校生になかなか浸透しない難しさも赤裸々に語る

この間、「みんなが社長プロジェクト」のおかげもあり、高校生の商品企画、販売、ふりかえりという過程を経て彼女たちの協力を得ることができているが、だからとして高校生の集客が進んでいるわけではない。今年のプロジェクトリーダーNくんは朴訥と高校生に現状について説明していく。

プレゼンテーションの中では、昨年参加してくれた生徒とのインタビューも公開。このプログラムでの学びを自分の言葉でしっかりとお話しして下さいました。そうした1学年上の先輩の学びが彼・彼女たちにどう聞こえていたのでしょうか。

続いてTANEMAKIからの告知

2つ目はTANEMAKIの宮崎さんからの告知。長年SPINNSで10代向けを中心としたアパレルの現場でご活躍の宮崎さん。TANEMAKIのミヤポヨという名前でnoteを通じて各地の活動を報告されている。

その彼の第一声。「SPINNS知ってる人!行ったことある人!」と。

生徒から手が挙がる。BESIDEの活動を始める前、数人の日田の高校生に話を聞いたときにも同じ質問をしたが、やはりその時も「え?スピンズ。行ったことあります。大好きです。日田にスピンズ作れるんですか?」みたいな反応があった。すでに好感触。

みやぽよさんによるSPINNSの案内

彼の話を聞いていると、常々言うのが「買い物する楽しさ、服を選ぶ楽しさを少しでも多い若い人に知って欲しい」ということ。それを店舗で待つのではなく、地域に出て、ポップな地域の公民館的な場所として店舗を作り、ファッションを通じて若い人たちが活動していく動きを作ろうとされている。

コンセプトは明確に!

すでに佐賀県武雄市には店舗を持っておられるし、これまでも長崎県島原市、福岡県飯塚市、宮崎県延岡市と各地で出店を進め、今回も日田での取り組みをご相談したところご快諾頂いた。なお、壱岐商業高校との取り組みで8月末には勝本浦での出店にもご協力頂く予定。

SPINNSの地域出店を支える大学生2人

そして、ここでもゼミ生1名と、昨年度のゼミで担当した学生1名がTANEMAKIの活動をサポートする形で参加。ファッション感覚鋭い高校生に対して、少し年上の大学生が関わることで、働くを身近に、楽しいものにしていこうとされている。(私の話が長過ぎて限られた時間だったけれども)高校生が目をキラキラさせていたのが印象的でした。

次の展開に向けて|1つ上の先輩がロールモデルになりうるか

これにて第1回授業は終了。生徒は次の時間があるので休み時間中に待機していたけれども、どんな反応だったのだろうか。

岡野さんに生徒が駆け寄ってきて「やりたい!けど〜」と高校生らしい反応(何が?(笑))。私は話をしていたのであまりよくわからない部分もあったが、後ろで聞いていた同行してくれた学生曰く、高校生は誰も寝ていなかったし、興味を持って聞いていたという。ま、そこで大学生から話しかければいいのに、大学生も恥ずかしがって話しかけないのだから、お互い様ですな。

次回の授業は7/13。この日はもう参加希望者が集まっての出店打ち合わせに。100人のうち何人が参加してくれるかなぁ。ちなみに、この2店舗の運営に参加しない高校生には別途ペーパータワーを用いた授業を実施して、「アントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアス」を伝えていく予定。いくつかのパターンで教育機会があるのはとても楽しみでもある。

そして、出店は8/6-7の土日。昨年度のプロジェクト参加者で、これまで半年近くBESIDEの活動で関わってくれた高校3年生数名もサポートに関わってくれると言う。夏休み以降は彼女たちも進路に向き合わなければいけないので活動に関わることが難しくなるかもしれないけど、後輩のために一肌脱いで下さるのだそう。

大学生と高校生という関係性だけでなく、1つの上の先輩から学ぶ機会になる。

部活動(同校には三隈マーケットという販売実習を行う部活的活動もある)や生徒会活動だけでなく、大学生や社会人との関わり起点で生徒同士が関わり合う関係性ができあがる可能性がある。知識のインプットと実践の行き来を通じて高校生同士で議論できる環境づくり。まだ具体的なイメージできていないけど、そういう関係性を外から作っていくこともできるのかもしれない。

当事者である2年生には貴重な夏休みにわざわざ出てきて自分でお店を運営するなんてことは面倒に思うかもしれないけれども、「今年の夏を思い出深い夏にしようよ」なんて言ってしまった手前(恥)、ぜひ高校生の皆さんには出店側でも来店側でも多くの方に関わって頂けると幸いです。

ということで、今年4校目のコラボ授業がスタート。2022年末まで忙しない日々が続きますが、高校生と大学生が共に学び合う関係をどこまで構築できるか。そして、実践的な学習を通じて、自ら価値を創造する主体者として他者と共同しながら形にしていくことにつながるように、一歩一歩努力ですね。

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