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【うちよそ】最高の友達から恋人へ【ゼルこけ】

ゼルくんはとにかくかっこいい。
モテるのもよくわかる。
あんな風になれたらいいな、なんて事を思う事もしばしば。

ゼルくん

田舎から出てきたばかりの頃、上級召喚士を目指してまだ訓練をしていた。
上京して初めて覚えたのはポーカーだ。
しかしここでは、東方遊戯の麻雀というのが主流らしい。召喚の勉強よりもそちらを覚える事に躍起になった。
強くはないが、時折大きな当たりを引き当ててはテンパイした。
ゴールドソーサーに住みたいとすら思う事もあるほど。実際よくここいらのベンチで転がって寝る事もあった。
ゼルくんと出会ったのは、勉強が傍らで遊び中心に過ごしていた時だ。
彼はギャンブルはそこまでしないようだが、遊ぶととても楽しく童心に戻れるのが心地よかった。

遊ぶの楽しい

ゼルくんと遊ぶのは楽しいが、驚く事も多い。

この子とも知り合いなの?!

そこいらにいる女の子は皆知り合いらしい。最も、ただの知り合いだけでもないようだが、自分は通ってるにも関わらずそんな関係にはならなかったな…。
また別の日には男と消えていくのを目撃して、衝撃を受けた。
ゼルくんは男女関係なくモテる。モテる男は違うもんだと思った。

自分の容姿には自信がない。そこに自信がないので、かっこいいと思った召喚士を目指した。
召喚士になったら、きっとモテる!
根拠もなくそう思っていた。

勉強、訓練、変わらず遊び傍らでやっていたある日世界が一変する。
色んな事象に情勢に、巻き込まれては右往左往し始めた折にそれはやってきた。


初恋のユウギリさん

自分はモテたいのである。だから、自分から誰かを想う事は無いものだと思っていた。

これを、一目惚れというのか。


可憐ではあるがどこか淋しげで、それでいて凛としたその姿に『笑顔が見てみたい』そんな風に思った。

この日から真面目に訓練に取り組んだ。舞い込む仕事も増えたし、何より先輩召喚士が辞めたためその仕事も増えた。そして激務と化した中いつしか、誰かの笑顔なんて事を考える余裕は無くなってゆく。
時折合間を縫ってゼルくんと遊ぶ時間が楽しかった。

ドマの復興もようやく少しばかりの落ち着きを取り戻そうかという時、ようやっとで胸に秘めた想いを伝える決心をしたが、結局それは抱えたまま、また激務の日々が始まる。
自分では駄目だったのだなと、彼女の顔を見て理解した。
押し寄せる運命を放棄したいと思う事は何度もあったが、それを支えてきたのは彼女への想いだった。強くなろうと頑張った。良き人間であれと奔走した。
だが、彼女の中にもまた"自分ではない誰か"がいる事を悟った。

それでもいいか。

そう思ってふぅっとため息をついたら、無性に疲れた。

たまにはアパートに帰ろうか。


大したものは置いていない、唯一は実家から大事に持ってきたエロ本くらいだ。
それを読む元気も今はない。

「こけしくん、大丈夫?」

アパートの前まで帰ってくると、遊びに来ていたゼルくんがいた。
急に体の力が抜けてそこへ崩れてへたり込んだが、彼がそれを支えてくれた。

「ごめん、ちょっと疲れたぁ」

なんとか笑えていただろうか。

「お疲れ様!こけしくん、ちょっとお休みしよう…」

そう言ってしっかりと抱きとめられた。
あー、なるほど、ゼルくんがモテるのはこれだなぁ。
背中をさすられて、急激に眠気が降りてきたがかろうじて保った意識の中で聞こえた。

「うちにおいでよ」

ゼルくんの家ってどこだろうか?

考える気力もない。もうどこでもいいから眠りたい。


「んー…ソファはこの辺でええかぁ」

一人掛けソファを動かしてつぶやく。

急ぐこと無く家具を見つめてはあっちへこっちへ動かしてみる。段々と感覚が鈍り、真っすぐであるかどうかもわからなくなってきたので、ここで休憩することにした。

今しがた動かしたばかりのソファに腰掛けて、置いてあった紅茶を飲み干す。

ゼルくんとシェアハウスを始めて、半月ほどが過ぎた。まだ部屋には中途半端な荷物が散乱している。ゼルくんは今日遠征から戻ると言っていたか。なるべく夜までには、この部屋の半分程度は終わらせておきたい。


リムサでの仕事は一段落し、仕事を辞めてここへ転がり込んだ。
優しいゼルくんの手厚い介護で、心身共に元気が戻っていった。
がらんどうだった部屋を、あれやこれやと考えては盛り付けるのが楽しい。久しぶりに心から安心してはしゃげた。

いつだったか、ゼルくんが急に髪型を変えてきたのに驚いた事があった。
誰だかわからず「どちら様ですか?」と声をかけたほどに印象が違った。
聞けば、彼も真面目に仕事をし始めたのだという。
そう言えば最近、彼も仕事以外では夜に帰宅している。誰かと何処かへ消えていく姿も見ていない。
遊ぶ事に全力だったあの頃。そう月日は流れてる訳では無いが、遠い記憶に感じる。

「こけしくんのお陰で、頑張れるよ」

そう言ってイケメンスマイルを浴びせられるので、ちょっと照れくさいような、よくわからない感情を笑顔で返した。

「あっ、あそこにライト置くか」
休憩もそこそこ、ふと思いついた配置を試しつつ作業に戻る。

しだいに整っていく家と自分。生きる事を実感しながらライトを取り付けた。

「ゼルくん、気に入ってくれたらええな」

友人の帰宅を待ち遠しく感じながら、次の家具へと手を伸ばした。

ゼルくんとの友人関係が突然終わったのは、この数日後の事である。

おかえりゼルくん


おわり


見直してないので色々誤字脱字あったらごめんなさい。ちょびちょび修正しまふ(●´ϖ`●)

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