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#4. Yahoo Comment Listening. コメント欄からインサイトを発見できるか?

ソーシャルリスニングといえば、Facebookやtwitter、instagram のいいねやコメント分析が多いと思いますが、Yahoo ニュースのコメントを分析したのって、あまり聞かないなと思い(pythonでのデータ分析の練習もかねて)その可能性を考察しました。

ヤフコメ民という言葉もありますが、記事よりもコメント欄を見ているほうが楽しかったり勉強になることもあり、内容はともかく本音が出ているという部分ではtwitterとも似ているかなと思います。

分析対象としたのはこちらの記事。経済のトピックスにあがっていたので、見た方も多いのではないでしょうか。

記事の主な内容は、以下の通りです。

・ジョイが1996年の発売以来初めてのブランドリニューアルを実施
・スプレータイプの食器用洗剤を投入(競合の花王はすでに市場投入済み)
・泡をすすげば楽に汚れを落とせ、家事の負担を減らす「時短」が売り
・食事に関する家事の中で「食器洗い」は最も時短ができておらず、生活者の8割がストレスを感じている
・直近のシェアでは「キュキュット」シリーズが上位4つを占め、「ジョイ」シリーズが顔を出すのは5位と6位。

他のメディアでは、ブランドリニューアルの記者会見の内容をメインしてCM出演のタレントを見出しにもってきてますが、日経ビジネスは市場環境の視点から記事を作成し、「5位じゃダメ」というキャッチ―な言葉でよりクリックしたくなるような見出しにしているのが特徴です。このあたりが経済ニュースのトップに来ていた理由でしょうか。

1.”そう思う”の数量分析

記事は3月1日の午前5時に配信されており、同日17時までの12時間の間についたコメントを分析の対象としています。コメント総数は362件。(返信欄のコメントは含めず。返信欄のコメント総計は171件)

まず気になるのは、どういうコメントに「そう思う」がたくさんついたかでしょうか。今回の記事で「そう思う」のついた上位3つのコメントを以下にピックアップしました。

※()内は「そう思う」のついた数
・キュキュットでもジョイでもその時安い方を買ってしまう
(3793)

・スポンジの泡使い切ったあとにもう一度モミモミすれば泡が復活して洗えるってCMでやってるけど、確かに泡は復活したが皿の油を完全除去するほどパワーは無くやっても意味がない。普通に洗剤追加して洗ったほうがいい。(3378)

・個人的な感想だが、JOYよりもキュキュットの方が泡切れが良い。しかしJOYは粘度が高く少量でも洗える。同じ量買ってもJOYの方が長く使える。(2219)

記事の内容へのコメントというよりも、洗剤に関して普段から思っていることに近いでしょうか。我が家にあったのはキュキュットでしたが、JOYは粘度が高いんだーと思ったり、確かになんだかんだいって値段だよなーと思うと、「そう思う」をぽちっと押す人も多そうですね。

続いて、「そう思う」の多い順でコメントを並べたのが以下のグラフです。

見事なロングテールですね。(全体の7割は「そう思う」が10以下)
上位5つについた「そう思う」の数を見ると、

1位  3793
2位  3378
3位  2219
4位    722
5位    593

となり、上位3つに「そう思う」が集中していることがわかります。

ニュース記事本文には3つのコメントしか表示されないので、集中するんだろうなとは思ってましたが、特に1,2位への集中度は思ってた以上です。

続いて、コメントの投稿順で「そう思う」がついた数をグラフにしました。

この記事がYahooニュースにあがったのは午前5時ですが、最初についたコメントが「そう思う」の数が最も多く、全体的に最初のほうについたコメントが「そう思う」を多く獲得する傾向にあります。(2番目に「そう思う」が多いのは6番目の投稿、3番目に多いのは3番目の投稿)

これは

・「そう思う」の多くついたコメントが上位にくる
・記事本文に表示されるのは上位3つのコメント

というヤフコメの仕様(実際は投稿時間やほかのパラメータも影響している模様)が大きく影響しているからでしょう。

最初にコメント書く
→記事本文に表示される
→多くの人の目に触れる
→「そう思う」がつきやすい
→上位の位置をキープ
→以下ループ...

よって、Yahooニュースのコメントで「そう思う」を多く獲得するには、

記事がアップされてすぐ、その分野で皆が思ってそうなことをコメントする

というのが一つの仮説として立ちそうです。

ちなみに、今回の記事で2番目に投稿されたコメントは?と気になりますが、

大昔はライオンVS花王だった。ここ20年、P&Gは衣類洗剤も勢いがある。あとはオーラル商品、ボディソープを発売すれば完全にVS花王となる。

というものです(そう思う数75)。そうなんだ、とは思うものの個人的な共感や賛否の意見がでにくいと、リアクションが少ないようです。

上位のコメントに集中しやすい仕様のため、単純に「そう思う」の数だけでそのコメントが多数の意見を代表していると評価するのはやや危険な気もします。

とすると注目すべきは、下のグラフのオレンジで囲った部分、やや遅れた投稿ながら比較的「そう思う」が多いコメントになるでしょうか。

コメントは以下です。

※()内は「そう思う」のついた数。
最近の洗剤は香りがキツすぎると思う。台所洗剤に限らず。(551)

こすらずに落とせるのは、固着していない油分だけですからね…水分を失って固まり更にこびりついたものや、油分が極端に多いカレーやミートソースの様なものは、泡スプレーしてもこすらないと落ちない。で、複数の食器や調理器具に泡スプレーして放置した後で洗うと、軽くこすって洗い流しも楽で時短にもなるのですが、そもそも最初にスプレーするのが意外と手間が掛かるという…結局、洗い桶や栓をしたシンクに洗剤液を薄めた水を張って漬け置きするのが一番楽で早いという結論に辿り着いた。色々試しましたが、メジャーな中ではMagicaが油汚れには一番強力っぽい印象。(327)

ドラッグストアに行ってはじめに見るのは"値段"です。油汚れに強いなどの謳い文句はどこも一緒。実際の汚れの落ちに大差ないのはわかっているので。あとは10%増量中やオマケのグッズ付きなんかでも買っちゃうかな。(357)

ずっとジョイにお世話になっていたのに、ジョイ君で問題ないのに…「もう買いたくないな」って思ってコメント見たら同じ人がいてホッとしてます。売り上げどれくらい落ちるのかな?全体で見たらそんなに影響ないだろうから、フジモン優樹菜夫妻を起用したのかな?とにかくこれを機に新しく別の洗剤を試してみるのも良いですよね、春だし。(519)

・「香り」「泡スプレーの性能」「ジョイ君」はトップ3のコメントでは触れられていない
・コメントが長い分書いた人の想いが強く出ており、それが読んだ人の共感や賛否の反応を起こす
が「そう思う」多く得た理由と思われます。ちなみにこれらのコメントの特徴として返信件数が多いことも挙げられます。

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その他の分析視点として、”そう思う”と”そう思わない”の比率、返信件数の割合なども面白そうです、がそこまでやるとかなりのボリュームになるので、この辺でいったん終わります。
(「そう思う」をいかに獲得するかの分析に終わったような、、、)

2.コメント内容の分析


つづいて、コメントの内容について見てみます。「そう思う」がつかない、ロングテールの部分も含めてどういう傾向にあったかを見てみたいと思います。
(返信欄のコメントは含めず)

出現頻度の高い言葉をPythonの言語解析ライブラリjanomeをつかって、見てみました。(助詞、接続詞除く)

ジョイの名前も多いですが、競合商品であるキュキュット、マジカも多く出てますね。それ以外にも”手””荒れる”、”油””汚れ”といった洗剤に関連した言葉が出てきます。

コメントを読み込んでいくと、JOYとキュキュット、どちらが洗浄性能が高いか、手荒れしないのはどっちみたいなコメントが多いですし、これらは食器用洗剤で誰もが気にすることでしょう。

逆に”時短”という言葉がほとんどでてこない(5件)ということは、普段はあまり意識していない部分=意識させると動くかも?というポイントになるでしょうか?

さて、実際のソーシャルリスニング分析では、ポジティブ・ネガティブのように評価を加えていくと思いますが、自分のPythonスキルではその辺まで手を出すと時間がかかりそうだったので、自力で362件のコメントを読み込む手法に変更しました。

以下、人力テキストマイニングで気になった点。

・安いほうを買うというコメントがある一方で私はJOY派、キュキュット派と自称する人もいて、つかっている製品への思い入れはある模様

・JOYは手が荒れるのでキュキュットにしたという人もいれば、逆のパターンもあり、肌荒れしないというのはブランドスイッチの大きな要素となる

・スプレー型についてはこびりついた油汚れをちゃんと落としきれるかの疑問の声が多い

その他面白いコメントはいろいろあったのですが、全体的にコメントから見える洗剤カテゴリーへのユーザーの先入観を推測すると、

洗浄性能と肌荒れはトレードオフの関係でしょうがない

ということでしょうか。その中で、

直接洗剤には触れないスプレータイプは手荒れしにくい(のでは?)

というのは結構なブレークスルーに見えます。
トレードオフにあった洗浄性能と肌荒れの関係を解消してしまうのですから。グラフにするとこんな感じ。


この点については最初にスプレータイプを市場導入したのがシェア1位の花王であること、その後の花王のスプレータイプの売り方やポジションの取り方をみると、「なるほどな!」と思う点があり、これは次回のnoteにマーケティングトレースとして書きたいと思います。

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ここまででいったん分析を終えるとして、Yahoo Comment Listeningの可能性としては、書き込む人に偏りはあるとしても本音は出ており、仮説を立てる参考にはなるかなと。今回の記事のケースでは

何が暗黙的な前提でコメントが語られているのか?
コメントで語られていない部分は何か?

に注目するといろいろな仮説が立てやすそうだなと感じました。
(平均コメント文字数は55文字で、自由回答とみると情報量は多いほうでしょう)

また気になる記事があったら分析してみたいと思います。
洗い物かたずけよーっと。

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楽しんで読んでもらえたらうれしいです