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#10. ゴーストレストランは食の'DtoC'となるのか?

ゴーストレストラン : 
実体のないレストラン、すなわち店舗を持たないレストランのこと。

#7でみた6curryも最初はゴーストレストランからの出発でした。

このゴーストレストランを含めたデリバリー市場が、アメリカや中国ではかなりの勢いで伸びているそうです。

なぜ?と思って調べてみると、その構造が面白いし、新しい食の可能性を感じたのでまとめていきます。

※参考した記事、noteは末尾に記載
※書いた後に見つけた、すでに詳しくまとめられていたよじげんスペースさんの記事はこちら

目次
1 ゴーストレストランが増えてきた背景
2 ゴーストレストランのメリット
3 ゴーストレストランの可能性

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1 ゴーストレストランが増えてきた背景


ビジネスサイドから見ると、注文を受ける「入り口」と料理を配達する「出口」の仕組みが整ってきたことがあげられます。ここ数年のUberEatsの存在は特に大きく感じます。入口と出口が整備されれば、レストラン側は調理に専念でき、料理を作ればあとはお任せできます。


ユーザーサイドからみると、お店に行かずにすむ、並ばなくてよいといった時短的な点や、おいしい料理やお気に入りのカフェのドリンクを手軽に手にすることができることがメリットになるでしょう。

また、中目黒にゴーストレストラン専用のシェアキッチンKitchen BASEをオープン予定の山口大介さん(株式会社SENTOEN代表)は以下のようにnoteに記しています。

昨日の記事同様、(デリバリー市場は)拡大していくと考えている。理由は高齢化社会と働き方の変化である。
https://note.mu/daaayam/n/n7721ee2a93ed

高齢化や働き方の変化は一時的なものではなく、構造的な変化だと思うので、デリバリーがこれからライフスタイルの一部にすぽっとハマると、市場として大きく化ける可能性は大きいと考えます。

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2 ゴーストレストランのメリット


ゴーストレストランのゴーストたるゆえんは、お店を持たないことですが、これによるメリットは大きく、多岐にわたります。

・家賃を抑えられる
・テーブルやいす、インテリアなどへの投資がいらない
・シェフ以外の人を雇う必要がない
・席数というキャパシティがない
・ウェイターの教育や店舗の清掃などがなく調理に集中できる
など。

初期投資が低いので、いろいろな料理にチャレンジしたり、新しいメニューをテストできそうですね。
※一般的にに家賃は売り上げの10%、人件費は40%ほど。
https://pro.gnavi.co.jp/bukken/article/bukken13651/

しかし、店舗を持たないということは逆にふらっとお店に来るということはなくなるため、それなりの広告宣伝費はかかってくるでしょう。また、初期投資が低く済むということは参入障壁が下がることであり、競争の激化が予想されます。SNSを活用したブランディングが不可欠となります。

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3 ゴーストレストランの可能性


これだけ見ると、ただ出前を合理化しただけにしか見えませんし、実際にUber Eatsにでてくるのはリアルレストランのデリバリーが大半にみえます。しかし、ゴーストの利点は別のところにあります。

例えば、
・とんかつ屋
・カレーショップ
・サラダ専門店

があったとします。店舗型のレストランであれば、3店舗必要になりますが、ゴーストレストランでは1つの厨房で済んでしまいます。キッチン一つで多ブランド化展開ができてしまう!

食材も共通化できれば原材料費も抑えられます。人件費も3つのキッチン分はいりません。2つのブランド間のコラボレーションもできたり、相乗効果を見出せます。(上記の例だと、カツカレー)

もう一つの特徴は、顧客のデータ管理ができる点。誰がいつ、何を注文して、リピート率はどのくらいか、がわかります。タイプによってはサブスクリプション型もありうるし、データマーケティングによる新しい価値の提供可能性は大きいと感じます。

一見、出前の変形に見えるゴーストレストランは過渡期に過ぎず、将来的には現在と異なる様相のビジネスになると予想します。

このように、ゴーストレストランというと一瞬 ”?” となり新しいレストランの形態?と思ってしまいますが、別の言葉でいうなら"食の D to C" といったほうがわかりやすいかもしれません。

流行りの言葉風にいうと”kitchen to door”、"kitchen to table"でしょうか。なので、D to C 系のブランド戦略のケースが活用できるのではないかと思っています。(今勉強中。away, casper, Warby Parker etc...)

さらに見方を変えると台所のアウトソース化だったり、6curryのような新しい食へのチャレンジといった従来のレストランではできなかった可能性を見出せる領域だと思います。

例えば、
・作り置き料理デリバリー店
・離乳食や幼児食専門のデリバリー店
・食のエバーレーン型レストラン
(使っている素材、調味料に至るまですべての生産地や調理過程を提示)

など。

という風に、ゴーストレストランという形態はただの流行りに終わるのではなく、新しい食文化を作ったり、ライフスタイルの一部に溶け込む可能性を秘めていると思います。とても楽しみな領域なので引き続きウオッチしていきます。

※幼児食のデリバリーアイデアは、田村浩二さんのこちらのやり取りから得ました。 https://twitter.com/Tam30929/status/1105054201594339329

以下、参考note、参考記事、自分メモになります。

////////////////////参考note////////////////////

ゴーストレストランのビジネスモデルは、チャーリーさんのこちらの記事。

ビジネスモデル2.0図鑑 #全文公開チャレンジ
https://note.mu/tck/n/n95812964bcbb
013 LEAFAGE 店舗もキッチンも持たないオンラインフードサービス

ゴーストレストランのビジネスポテンシャルは、JKさんのこちらの記事。

「ゴーストレストランの増加」からhttps://note.mu/dialogue_of_j/n/n64fa7c01fdf1

Uber Eatsについてはこの記事が面白い。

【勝手に経営者東大生の視点】Uber Eatsは大赤字 -Uber Japanのたくらみとは-
https://note.mu/takashi0zo/n/n2df9703e3096

デリバリー市場が増えているのは世界的な傾向なので、おそらく日本でも今後伸びるという予想のもと、プラットフォームとしての地位確立が今の状況だと思う。もし自分がuber eatsの人だったら、初期のAmazonのようなイメージで数年間は赤字覚悟でレストラン、ユーザー、配達員に何回も使ってもらうことー習慣化ーを優先する。習慣化されたものは変えにくいので。

////////////////////参考記事////////////////////

NYで起こっている新しいトレンドとして注目したWiredの記事

NYで流行る「無店舗型」レストランは、新たなトレンドを生むか
https://wired.jp/2017/02/06/ghost-restaurant/

ビジネスサイドから見たゴーストレストランの利点を紹介。

最小リスクで開業!飲食店オーナーが知っておきたい「ゴーストレストラン」のこと
https://monstar.ch/omiselab/business/goastrestaurant/

以下2つは石川真弓さんによる記事。これを読めば概況はつかめる。

シェフの起業がNYでブームに?コワーキングスペースから生まれるユニークな食のブランドたち
https://amp.review/2017/10/23/foodworks/

NYでは“店舗のない”レストランが増加中。フードデリバリー産業の成長が後押し
https://amp.review/2018/02/14/ghost-restaurant/

あまり触れなかったけど、シェア型キッチンの記事。ゴーストキッチンが今後増えていくにはこうしたシェア型キッチンが不可欠。Google venturesが投資をしたということは、今後大きく発展する可能性を感じます。

Kitchen United、GVがリードするシリーズAラウンドで1,000万米ドルを資金調達——データドリブンなキッチンでレストランの事業拡大を支援
https://thebridge.jp/2018/10/gv-leads-10-million-investment-in-kitchen-united-to-help-restaurants-expand-via-data-driven-kitchens

英語の記事はほかにもたくさんありそうですが、自分が目を通した以下の2つ。アメリカでは2017年に300億ドルだったデリバリー市場が2020年には2200億ドルになるって予想があったけど、そうだとしたらすごい伸び!

How Ghost Restaurants Are Changing The Restaurant Business https://www.forbes.com/sites/lanabandoim/2019/01/28/how-ghost-restaurants-are-changing-the-restaurant-business-model/#4c46ee9741d7

Why 'ghost' restaurants are changing the delivery game
https://www.restaurantdive.com/news/why-ghost-restaurants-are-changing-the-delivery-game/546624/

Green Summit GroupとUber Eats がこの業界で注目されるプレイヤーのようですが、取り組む姿勢は異なります。Green Summit Groupは食材の部品化による徹底的なコスト削減とマルチプルブランドの展開による嗜好の多様化に対応。一方Uber Eats はデータドリブンマーケティングによる需要予測やトレンド予測による売り上げ最適化を目指します。

中国も動きがあるみたいだし、台湾のような持ち帰りが一般的な国では流行りそう。

///////// 自分あてメモ(徒然と) /////////

当初、ゴーストレストランを考察するにあたり頭にあったのは、以前Takram Cast で聞いた、生産限界、製造限界のコト。

3rd Wave のつぎの4th Wave がパーソナライズやカスタマイズに価値を見出した時、それをどうスケールするかという問題。

その時頭をよぎったのが、Mr.CHEESECAKEやわざわざのような、こだわりの食品を少量生産で販売しているお店。asatteとか佰食屋もふわっときた。
※asatteや佰食屋は生産限界(販売個数)を決めた上で売上や利益、働く人の幸せの最大化を目指している。売上の最大化ではなく、一定の売上下における幸せの最大化。この様な環境下では生産限界をあげることは必ずしもいいこととは限らない、と思う。その代わり横展開による拡大はできる。

これらのお店が、テクノロジーの進化によってもっと多くの料理を提供することができるのであろうか?

最初に思ったのは、たくさん作る必要はあるのか?ということ。スケールする=大量生産であり、これまでの消費社会の延長にあるのじゃないかとも思う。一方、料理人であれば、自分の作ったものを欲しいという人がいれば届けたいという気持ちももちろんあるだろう。

生産限界を突破する一つの形がゴーストレストランにみる、究極の効率化で、英文の記事ではゴーストレストランはフォード生産方式が本質だ、的なことが書かれてあった。食材を部品化し、共有することでコストを削減。その行きつく先はロボットによる自動生産であり、ドローンや自動運転車による自動配達。まさに人のいないゴーストな世界。

これを批判的に見ることもできるけど、ひとり一人に栄養面でカスタマイズされた料理が提供できる、というメリットもあると思う。

なんてことを思っていた時に田村さんツイートをみて、勝手にグサッときた。


合理化を進める一方、料理人の情熱や創作欲を刺激するようなヒントはないだろうかと思ってピンと来たのが、アメリカで既存市場をディスラプトしているDtoCのブランド。

Direct to Customer ー 顧客にダイレクトに届ける ー は、飲食業界のデリバリーだと当たり前のことだが、マットレスやスーツケース、化粧品等さまざまな分野で流行ってきているということは、何かヒントになることがありそうなのだ。

DtoCはまだ勉強不足なのでこれからSaaSとも合わせて調べていきたいが、例えば、完全オーガニックの料理や風邪をひいてしまった時の軽食、無駄な保存料や着色料を一切使用していない果物ジュースなど、D to C というメリットを活かしてこれまで食の世界では想像できなかった新しい価値を作ることはできないだろうか?

あるいは、家庭での料理を楽しんでもらうためのきっかけとなるようなアウトソースされた台所という価値はないだろうか?育児中だけど少し時間ができたときに、働ける場所としてのキッチンという価値はないだだろうか?

日本でのゴーストレストランの草分けが6curryだったというのはうれしい。”ゴーストレストラン = 新しい食に挑戦する”というイメージになればこれに続く人も増えてきそう。

しかーし、ゴーストという名前はサービスを使うユーザーにとってあまりよいイメージをもたない。アメリカではクラウドやヘッドレス、という言い方もあるみたいだが、ゴーストレストランが通称のよう。

流行りの言い方ではあるが、”食のD to C”、”kitchen to table”の方がポジティブに聞こえる。”ゴースト”がキャッチ―でこれまでのデリバリーとの違いを言い当ててるのはわかるけど、ゴーストレストランといわれても食欲がそそられない。

とはいえ、引き続き注目したいし、自分でもちょっとやってみたくなった。楽しそうだし。

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ここまでで約6000字。読んでくれた人、お疲れさまでした。

nora.

Title Photo by Austin Gardner on Unsplash


楽しんで読んでもらえたらうれしいです