見出し画像

「ホラィ・ト・スフィ」の創作秘話と『小説とゲーム』の歴史 ~実践編~

■前回のあらすじ

小説を書き出すまでの苦悩として、『文法と独創性の葛藤』と『ゼロ年代の誤解』を経て、ようやく小説を書き出させるのであった。
その作品に関してはこちら。

投稿サイトの方の感想も大変ありがたいのですが、もし宜しければ、こちらをお買い上げ頂く大変励みになります。
宣伝も終わったことで、ようやく本題へ。

■メディア展開を考えての作品コンセプト

『重機兵少女 ホラィ・ト・スフィ』のコンセプトは色々とある。書き出す前、書き出した後でも検討して、要素を追加していった。
まず、アイデア段階ではロボットモノだった。これはライトノベルの単体でのメディア展開はアニメ化、せいぜいゲーム化ぐらいしかない為、商品化できる要素として考えた。
昔のアニメ作品などは元々は玩具、商品ありきな作品作り。今でも特撮モノでもその手法である。ただ、アニメは他の方法でも稼げると分かったため、今この様な形態はない。そう制作委員会方式だ。
それはさておきとして、作品だけを売るにはどうしても収益や広まりも狭い。ライトノベルは作品だけでは閉塞するのが目に見えている。

余談となるが、水木しげる氏の作品は売れない事を見越して映像化によっててこ入れされた。その結果、知名度と人気を集めることになった。いわば、メディア展開の先駆けといえる。
今日でも『ゲゲゲの鬼太郎』はコンテンツとして半世紀以上、生き続けている。

よって、この作品では商品化したい様な魅力的なアイテムを前面に出すというコンセプトが前面にあった。そのために手っ取り早く思い付いたアイデアがロボットモノだった。
アイデア段階では『アーマード・コア』シリーズをベースに考えていた。これはゲームから後にプラモデルにも展開されているため、コンセプト的にも参考にしやすかった。
ただ、ロボットモノはまだしも、これらの要素を小説に見せるにはかなり難しいかった。まず、システム、ビジュアル重視になるから、文章との相性は悪い。他も手、足などのパーツ換装というのも考えたが物語書く前に展開は煮詰まってしまった。
また、主人公機による1機ではありきたりになる為、色々な機体や人物を出したいから、集団対集団という構図にした。これはもう戦闘シーンでは複数の人間を動かすのが考えるだけでも困難だった。しかも、ゲームのイメージで機動力が売りにしたい。文章力のない自分では出だして諦めてしまう設定の詰め込みになった。
ただ、これらは『重機兵少女 ホラィ・ト・スフィ』でも継承されている。対策としたのが、戦闘シーンのカット、ダイジェスト、回想という方法だ。これは便利だった。他のシーンを重視させることで、より生きてくる。特にこの作品の敵は何も語らないから、戦闘は見せ場ではなかったし。
そして、ロボットモノはメカ少女に置き換える事で解消した。むしろ、こちらの方が描写も少なく、プラモでも最近、主流となりつつある為、便利であった。

ちなみにこの作品を小説投稿サイトにアップする直前に発表された『メガミデバイス』「BULLET KNIGHTS ランチャー」。まさに作品のイメージ通りの存在に正直、負けたという気持ちがあった。
これだけで、自分が書きたかったモノをすべて体現していたからだ。そして、これを参考、イメージに書き続ける事も出来た。

これまた余談。『メガミデバイス』と同じコトブキヤが発売する商品『フレームアームズ・ガール』、これのアニメに関しては社長の発案で販促目的として、制作委員会方式は取られなかった。
今となってはかなり珍しいケースとなった。

■『小説とゲーム』の融合へ

コンセプトも固まり、次の問題は自分がテーマ、命題にしていた『小説とゲーム』の融合だった。
先にもアイデア段階では『アーマード・コア』シリーズをベースにしたというが、『小説とゲーム』という要素にも絡んでいる。
元々、ゲームから得た体感、感動は小説、映画に勝る部分がある。これを小説でも描きたかった。これは自分がゲームを通しての生きてきた、ある種、リスペクト、答えだと考えていたからだ。
だから、体験してハマった『アーマード・コア』シリーズをベースにする事はその点でも意味があった。だが、『アーマード・コア』での要素は小説に落とし込むには難しかった。だから、かなり削り落として再構成してロボットモノはメカ少女に置き換えることにもなった。

そして、『重機兵少女 ホラィ・ト・スフィ』では連作短編にしたのは書きたい所から書ける。また、思い付いたアイデアを活かす話に専念できるというメリットがあった。
元々は時系列ごとに書こうとしたが、3話に想定していたのが『相対的な価値と負け』。このエピソードでは重く、死も描き、乱戦という序盤に出すには見せ場のない話でここでも書くスピードが落ち込んでいた。
そこで気晴らしに書いた別のエピソードから連作短編という形になって、『相対的な価値と負け』は書き出しからかなり時間を経て、別のエピソードでの得たアイデアも活かし書き上げる事になった。

また、『白ウサギの午後』に関しては前段階のアイデア時点で考えていたエピソートで、こちらから含めると書き上げるのに7、8年掛かっていた。
こちらはギャルゲー的な個別ヒロインルートを意識していた。1つのエピソートをヒロインごとで多様性を見せる話にしたかった。やりたいという気持ちは簡単だが、解決法を見つけるには本当に7、8年にも長きに掛かる事になった。
これでも満足のいくモノではないが、妥当な答えとは思っている。だから、次はもっと面白くしたい個別のヒロインで多様性を見せる様にしたいと発想を練っている。

もう一つ連作短編で時系列を入れ替えた事で面白い結果になったと思うのは、自ら読む順を選択できる事。
基本、本であれば、ページごとに順に読むのが正解である。ただ、小説投稿サイト、いやwedなら、ページをめくるのではなく、そのページを選択して飛ぶになる。
カクヨム版は時系列を別にした上で、ナンバリングでは時系列とした。つまり、読み手は時系列で読もうとすれば読める構図とした。
少しわかりにくいかも知れないが、ゲームでも断片データがバラバラで時系列もはっきりしないデータがある。これをすべて見る事で、プレイヤーは情報を推測して、全体像をはっきりとさせる手法を狙った。
ただ、これはそこまで読み込んだ読者に対して楽しめる要素だから、ある意味、小説投稿サイトでは相性がいいかもしれないが、デメリットにもなりかねない諸刃の剣だったと思っている。

ただ、時系列を明示せず、読みたい順に見せる方法は『ニンジャスレイヤー』でも行っている。

これら色々とやって経験となって、次に活かしたのが下記の作品。

最弱最強の反比例剣士と3つのしっぽの女悪魔 ~口づけからの始まるレベル1

こちらは剣と魔法の世界、つまりRPG要素を小説に落とし込んだ作品。かなりメタも入れ込みつつも、『重機兵少女 ホラィ・ト・スフィ』で得た『小説とゲーム』の融合をさせた作品。
これも要素の落とし込みはかなり満足出来る所だが、反応があまりないのがなんとも・・・

■改めて、作品を考え直すと

『重機兵少女 ホラィ・ト・スフィ』はある意味、メディア展開ありきで実験的に作っていたため、読み手には優しくなかったかもしれない。
『最弱最強の反比例剣士と3つのしっぽの女悪魔 ~口づけからの始まるレベル1』も読みやすさには気を付けたが、まだ実験要素が強かった。
ただ、長年悩み続けた『小説とゲーム』の融合に関してはかなり形となったので、作品の出来よりも価値は自分の中では大きかった。
それでも作品に対して、本当に一人でも良かったといってくれた事で、こちらも実験的ではあるが電子書籍化をしようとも思って、実行に移した。

ただ、作品というよりも、小説投稿サイトで投稿を続けて色々と見えてきた部分もある。作品を見せるというか、魅せるにはもはや、小説投稿サイトは適していないのかも知れないという思いだ。
そして、それは作り手よりも読者というか、受け取り手が育っていない点もある。小説投稿サイトでの感想を見ていても、薄いと感じてしまう。

むしろ、『投げ銭』のようなお金で作品の評価を示した方が受け取り手にも楽なのかもしれない考える節もある。これに関しては次回に語りたいと思う。

読んで頂き、もし気に入って、サポートを頂ければ大変励みになります。 サポートして頂けると、晩ご飯に一品増えます。そして、私の血と肉となって記事に反映される。結果、新たなサポートを得る。そんな還元を目指しております。