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話し合い交渉する人工知能―もっと賢いロボットを作りたい!

今回は、工学部知能情報システム工学科の藤田先生にお話を伺ってきました。人工知能が人間をサポートし、共存していく未来に向けて熱いメッセージをいただきました!

<藤田先生のプロフィール>
お名前:藤田 桂英(ふじた かつひで)先生
所属学科:知能情報システム工学科(旧:情報工学科)
研究分野:知能情報学
趣味:TVゲーム

もっと賢いロボットを作りたい!


―人工知能の研究をしようと思ったきっかけを教えてください。
 
高校生の頃、ロボットの頭の中を作ることに興味があったんです。
「ロボットにこういう動きをさせようかな」とか「こうすると賢くなるかな」と考えるのが好きでした。だから、大学では情報工学の世界に進みました。それからは人工知能一筋です。

―ロボットの頭の中を作りたかったんですね。
 
例えば、ドラえもんとかを現実にできたらいいなと思うじゃないですか。そういうのは小さいころから好きでしたね。
 
―こんな人工知能があったらいいな、っていうのはありますか?

たくさんあります。オンラインで議論するとき、場を回してくれる人がいないとうまくいきませんが、それを人工知能(AI)がやってくれたらいいなと思います。ついでに議論の流れを視覚的にわかりやすく把握できるように可視化してくれると便利ですよね。
 
―あー、たしかにそんな人工知能がほしいです!
 
あとは、秘書さんみたいな、スマホのもっとスゴイ版の人工知能ができたら嬉しいですね。「今日はこれやらなくていいんですか」ってリマインドしてくれたり、「これやっといて」って言ったら勝手にやってくれたり。

今はまだ、人工知能は細かく指示しなければ動けません。人間に頼むときは、細かく指示しなくてもそれなりのものを作ってくれますよね。「人工知能もそれくらい賢くなれば楽だなあ」と思います。

加えて、人工知能の協調といった課題もあります。

人工知能が話し合い!?


―人工知能の協調とは、どんな感じなのでしょうか。
 
人間同士が協力するときは、自分ができることとできないことを判断して、「ここはあなたにお願いします。わたしはこっちをやります」と話し合いますよね。ロボット同士でも、協調するためにはそうやって調整する必要があります
 
―複数のロボットに協力して仕事をしてもらうんですね。
 
例えば、机を運ぶとき、普通は真ん中を持とうとします。でも、二体で協調して机を運ぶときは、それぞれ端を持たなくてはうまく運べません。それを勝手にAI同士で調整できてほしい。これを人工知能の協調といいます。

―なるほど、イメージできました。
 
私自身もAIの協調に関する研究に携わっています。荷物運びの話も実際に研究テーマになっていて、例えば、重い荷物を運ぶとき、1台のドローンを大型化させるよりも3台使って協調させたら良いのではないかというテーマのプロジェクトがあります。

AIが社会の一員となる時代に向けて


―AIが交渉までしてくれるんですね。
 
そうなんです。AI同士で話し合うことは、だいぶできるようになってきました。
 
でも将来的には人間を交えての会話が求められます。それが難しいです。人間が使う言葉を「自然言語」と呼ぶのですが、AIは自然言語を理解できません。例えば、「もっと安く」と言っても、それが100円なのか200円なのか分からなくなってしまう。

―大きな可能性を秘めている半面で、苦手な部分もまだまだあるんですね。
 
国際問題の交渉も、AIができるようになるかというと難しいですよね。各国の主張を整理して、最適な解決策を導き出すことが仮にできたとしても、信じてもらえなかったり、AIに決めてもらうのは抵抗がある人もいたりするだろうし。
 
AIに提案ができても、本当の意味で解決できるのは人間だけです。AIは人間を支援することしかできない。 

―たしかに、AIの性能が良くなっても、その提案を採用するかは結局人間が考える必要があります。
 
法学や倫理の観点から、AIにどう対処していくかという問題もあります。AIは合理的にこっちが得とか損とかはいえるかもしれませんが、AIが判断したものに誰が責任をとるのかという問題もあります。
 
このように課題は山積みですが、今まで見たことないものを実現させるのは、わくわくしますよね。

―ご自身の研究を通してどんな未来を思い描いていますか?
 
AI同士が連携するとともに、そこに人間も加わって、本当の意味で協調し、一歩進んだ社会を実現することが夢です。いろいろな分野で、今まで人間だけではできなかったことを、AIがあることでできるようになればいいなと思います。
 
AIが社会の一員になると思うとわくわくします。

AIを賢く使い、作る学生を育てたい


―人工知能の研究をしたい高校生が伸ばすと良い能力はありますか?
 
一番は数学ですね。分かりやすく教えるようにはしていますが、人工知能の研究って結局は数式の山です。高校で学ぶ分野で言うと、一番使うのは確率だと思います。
 
―数学以外では、強いて言うならやった方がいいことなどありますか?
 
英語も必要です。AIは世界中で取り組まれている研究分野なので、論文は英語で読み書きします。海外の研究者と一緒に研究することもあります。
 
あと欲を言うとプログラミングですね。結局プログラミングを知らなければAIは作れないので。
 
―先生の授業で学べば、実際にAIを作れるようになりますか?
 
プログラミングができれば可能だと思います。
例えば、私は工学部3年生向けの授業「人工知能」を担当しています。この授業では、人工知能の作り方や人工知能に使われている技術、実際に最新の人工知能の技術がどんなところに使われているのかなどを扱っています。
 
 
―この授業を通して、どんな力を身に付けてほしいですか?
 
学生には、AIを賢く使えるようになってほしいです。そのために仕組みを知ってほしい。裏にあるアルゴリズムの仕組みを知れば、「じゃあ自分はこうやって使おうかな」と考えることができます。

例えば、ウェブの検索でなかなか欲しい情報が得られないときは、検索ワードが不適切なことが多いのですが、その仕組みを知っていれば最適な検索ワードに変えられます。
 
さらに、知能情報システム工学科の学生には将来的にAIを作る立場になってほしいので、その基礎を築ける講義にしたいなと思っています。


文章:わらび
インタビュー日時: 2021年 6月25日
インタビュアー:わらび
記事再編集日時:2023年 10月 9日
 
※インタビューは感染症に配慮して行っております。


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