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【cinema】善意の行方

2017年46本目。EUフィルムデーズ4本目。オランダ映画🇳🇱

1888年、アムステルダム。自宅が街の開発計画で高級ホテル(ヴィクトリアホテル)の建設予定地にあることを知った頑固なバイオリン職人フェンデルは、貧しい泥炭採掘人ベネミン一家のアメリカ移住計画を手伝う従兄弟の薬剤師アニスとともにこれを逆手に取って一儲けしようと目論むが、気付かぬうちに危険と悲劇の泥沼に足を踏み入れる…。(公式サイトより転記。キャスト名追記)

あんまり期待せずに見に行ったら、結構な見応えありの歴史ドラマでした。冒頭から衝撃の映像で…。そもそもあの時代、ヨーロッパのエネルギー産業の要が泥炭とは全く知らず。また、その泥炭地に住む貧しい掘削人にはユダヤ人が多く、ものすごく粗末な小屋に大家族で住んで、ということも初めて知りました。

この映画の面白さをどうやったら簡潔に伝えられるかなと思案しました。メインの登場人物が多すぎて、人間関係を説明するのに終始しそうな気がします…。

◼︎フェンデル:バイオリン職人。自慢の一人息子あり。妻とは死別?薬剤師のアニス、アメリカ移住で一儲けしたアルとは従兄弟同士。自宅のある地にホテルが建つということで、最高条件を引き出そうと粘るが…。

◼︎アニス:薬剤師。地区の貧しい人々のために本来は違法な医師業のようなこともやっている。妻にはそれを反対されているが、彼の良心からやらざるを得ないと思っている。妻との間に子供が出来ず、それも悩み。

◼︎アル:アメリカに移住し、移住あっせん業で一儲けした。少し胡散臭いところあり。久しぶりに帰国した際、フェンデルにバイオリンをねだり、一挺購入していく。

◼︎ベネミン:泥炭掘削人のユダヤ人。冒頭、娘を荒くれ者にレイプされ、彼女は身ごもり、そして死産してしまう。やりきれなくなった彼らに、フェンデルとアニスは、アメリカへ行けば貧困の連鎖から救われると諭す。

この映画に、邦題にあるような「善意」の塊のような人は出てきません。誰しもエゴイスティックな面を持っていて、それが全面的に押し出されるか、善意の仮面を被ってひた隠しにするか。そこに自分以外の誰かの幸せを願う部分があったとしても、報われない。そんな人生の不条理さを凝縮したのが、この映画です。

良かれと思ってやった事柄が、悪い方、悪い方へと進んで行き、どん底まで落とされた時、人はそれにどう向き合うのか。それは四者四様(こんな言葉ある?)で、この映画の見どころになっています。

うまく伝えられないけれど、この映画、本当によく出来ていて、実話と小説がベースになってるのかな。とにかく巧いんです。人物描写然り、時代考証然り。オランダという国に馴染みがなくても、あの時代にこんな人々がいて、彼らが礎となって、今があるんだなって思えるんです。

悲しい結末もあれば、救われる結末もあり、何とも形容しがたいラストなんだけど、最終的に言いたかったことは、欲張りはダメよってことかしら。あまりにもシンプルなのかもしれないけれど。

でもまぁ見てよかった。派手さは一切ないけど、こういう映画を見ると、またもや映画好きでよかったなーって思えるので。もっと、もっと色んな人の人生を知りたいです。

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