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【cinema】アイム・オール・ユアーズ

2017年23本目。もう1ヶ月以上前に見た作品。だけど、個人的にコレがmyfrenchfilmfestivalで一番良かった。

アナ・ベルカセム。彼女の困った性質は、極度にお人好しなこと。困っている人を見ると助けずにはいられない。それは、ホントに困った助け方で、誰とでもすぐ寝てしまう…。彼女の行動の根底にあるのは、幼き頃の悲しい体験で、彼女は親の遣いで行かされる配達先の医者からずっと性的虐待を受けていて…。

この物語はあくまでコメディです。だけど、何ともヘビーでハードな問題をいくつも孕んでいて、雑貨店を営む父親モハメドはアルジェリアからの移民、精神科医の母親シモーヌはフランス人という家庭に育ち、小さい頃はとても仲が良かった弟のドナデューは、自分の弱さをイスラム教信仰で覆うことで、何とか自尊心を保っている。また、姉アナの奔放な振る舞いに苛立ちを募らせた彼はドナデューという名を捨て、ハキムと改名するまでに。

そこに現れるのが、医者のポール。アナは最初は「人助け」でポールと寝てしまうんだけど、ひょんなことから、弟ドナデューを介してポールと深く関わるようになり、彼女ははたして変われるのか…。

もうね、色々ごちゃごちゃ書いたけど、コレすごく面白かったの。現代フランスの縮図みたいなのが露わになってて、宗教問題、移民問題、社会的、性的にマイノリティーの人々を取り巻く問題なんかがコメディタッチで描かれていて、悲しいけど、クスッと笑えたり、笑いに変えることで何とか向き合えるようになっていたり、教訓めいたことはないのに、すごく考えさせられる。

そんなポールが、自分の家族にアナの職業を紹介するときに、彼はてっきり彼女を娼婦だと思って、包み隠さずに姉や兄にそう紹介する。彼の兄姉はみーんな医者です。みんな目が点になる。弟のガールフレンドが娼婦⁉︎
でもなぜか、みんな受け容れるんですね。え、マジ⁉︎と思うのに、彼らはたじろぎながらも弟の彼女を尊重する。それがいかにもフランスっぽくて、でもとてもナチュラルで、それだけでこの作品がすごく好きになった。

因みにアナの職業はワイン酒造の人事です!

こんなハチャメチャなストーリーだけど、出てくる誰もが憎めなくて、愛すべき存在で(あ、件の虐待医師はアウトね)、単なるコメディというジャンルを飛び越えて、色々考えたくなる。家族の問題、親子、姉弟の関係、職業差別、人種、移民、宗教問題。

互いに想い合っていたり、気遣い合っていたり、とても近しい存在であっても、素直になれない、言うに言えない、打ち明けられないことって、たくさんあると思う。だから、難しい。だけど、それを口にして、伝えて、知って、分かり合えた時って、本当に幸せいっぱいになる。
誰かを助けたい、救いたい、その方法も様々で、どれがいいとか悪いとかないのかも。そういうことに気づかされた作品でした。

これが一般公開されないのは、とても残念だけれど、誰かの目に留まって、広がればいいなと。個人的に、アナ役のヴィマラ・ポンスという女優さんのこれからが楽しみです。母親役のアニエス・ジャウィは、彼女が出てるだけで、笑みがこぼれてしまう。フランスを代表する素敵な喜劇女優だと思います。

さー、感想が8本もたまっています。どんどん書いていかなきゃ!

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