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【cinema】ナショナルシアターライブ 深く青い海

2017年56本目。

ヒロインのへスターはガスの匂いが充満するロンドンのアパートの一室で倒れているところを同じアパートの住人や管理人に発見される。へスターは判事の夫の元を離れ、若い元パイロットのフレディと駆け落ちし、同棲していた。だが彼女の心は決して満たされず、孤独の思いに沈んでいた。彼女の愛に十分応えられないフレディ、アパートを訪れる夫ウィリアム・コリヤー卿、同じアパートの元医師ミラーらが織りなす愛情と孤独の人間ドラマ。(オンライン映画演劇大学より転記、一部追記)

鑑賞後、すぐにメモった感想が以下のとおり。

ラストシーンの目玉焼きのせトーストを泣きながら頬張るへスターの姿が哀しくて哀しくて、ひたすら哀しいのに、めちゃくちゃな気分で作ったそのトーストが美味しそうで、何とも言えない気持ちになった。

あんまり物語の真髄には関係がないように見えて、でもわたしからするとそこが一番大事だったんだなって今更ながら気づかされる。

これは、自分の生涯で一番深く愛した男(ひと)と結ばれることはなく、気力を失くした女性が再び生きる道を選んで行く切ない物語です。でもね、彼女は最後に食べるの。頬張るの。どんなに哀しくても、どんなに苦しくても、一度は死を覚悟しても、それでも食べる。それは、自分の命を救ってくれた、けど医師免許を剥奪された過去を持つミラーに生きる道を選んだ方がいい、と言われたから。だけど、やっぱり彼女の決意の表れでもあるんだと。

あんなに食べる姿が、とてつもなく悲しいのに、美味しそうで、観ている側もボロボロ涙が出てしまうシーンにもあまり出合ったことがない。きっと彼女はあの瞬間をこれから先もずっと忘れないだろう。全然前向きじゃないのに、ある種の「確かさ」みたいなものが感じられるのだ。

随分前のnoteだけど、片倉麻美(ばーむろーる)さんが、ドラマ、カルテットのセリフについて書かれていたのを思い出しました。(私は残念ながらこのドラマは未見なのですが)

泣きながらご飯食べたことのある人は生きていけます

まさにこれの極みだと。お芝居だし、もっと他にいろんな人との丁々発止のやりとりがあって、舞台が好きな人からしたら論外なレビューかもしれないけど、私はどんなセリフもパァッと飛んでしまって、ラストシーンにヤラレてしまった。

このお芝居、舞台だけではなく、映画化も何度もされているようで。最近だと「愛情は深い海の如く」っていうタイトル(このタイトル、どうよ?)で、レイチェル・ワイズとトム・ヒドルストン主演で日本ではDVD発売しかされてないみたいだけど、映画化されたようです。それだけ普遍的なテーマなんでしょうね。映画のラストはどんなだったんだろう…。

今回も舞台を映画として観るという醍醐味を存分に味わえたと思う。あのラストシーンの鬼気迫る感じは、映画だけでは絶対に出せないし、本国で見ることは叶わなくても素敵な訳と照らし合わせながら、鑑賞できたので。

ちゃんと俳優さん達の演技について、セリフについて言及できないのは申し訳なさすぎだけど。

とにかくすごくすごく良かったので、またどこかで上映される機会があるならば、興味のある方には是非観に行っていただきたいです。

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