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こんな男がいたんだという実話。

ラスト・センテンス 死者への裁き」スウェーデン🇸🇪

第二次大戦前夜、反ナチスをひたすら訴えたトゥルグニー・セーゲルステットというスウェーデン人ジャーナリストの半生を描く。

でも彼は何だか不思議な人で。人に厳しく。でも自分にも厳しくはできないもんなんだ。とにかく女好きなんだよ、この人。

はい、彼を取り巻く女達の渦に注目。

ノルウェー人の妻プスケ。

愛人マヤ。新聞社のオーナーで彼女がいたからトゥルグニーはあんな発言(ファシズム断固反対、ヒトラー批判)も出来たりした。

時折現れる亡き母の幻影。

新しい若い秘書の登場。

フィンランド人のメイド。

彼の愛すべき大型犬たち。

今更かもしれないが、あの当時の北欧諸国には勢力関係、お国差別みたいなものがあって、私が見て感じたのによると、スウェーデン>ノルウェー>フィンランド、だろうか。デンマークは出てこなかったけど。

このトゥルグニーの妻プスケは、彼に愛人がいることもなんだけど、自分がノルウェー人であることにも引け目を感じているんです。

そしてこの愛人マヤってのがまたエグい。新聞社のオーナーで、夫が社長なんだけど、婿養子なもんだから彼女に強く言えない。また、この夫アクセルはトゥルグニーと友達で、妻が友達と不倫してるのもわかっていたりする。

マヤ役の女優さんがスウェーデン映画を見てたらよく出てくる人なんだけど、まぁ美人ではないし、どっちかというとふてぶてしさ全開のマダムを演じているんですなぁ。彼の妻そっちのけで、社交界でもしゃしゃり出て。

しかし、トゥルグニーの創作意欲を後押ししてくれるのが彼女の存在で、妻のプスケはそれに心を痛めて、病んでしまって、亡くなるんですなぁ。いいのかよ、トゥルグニー。

彼のナチス、ヒトラーへの辛辣な批判も戦争が始まるとともに翳りを見せ始めて、周りも庇いきれなくなって。しかし彼は死ぬまで自分の信念を曲げることはなく、最期までヒトラーの死を願っていた。

「ヒトラーに屈しなかった国王」のホーコン国王を演じたイェスパー・クリステンセンがこのトゥルグニー・セーゲルステットを演じる。今、北欧映画界"枯れ専"で一番アツイのが、イェスパー・クリステンセンなので(笑)、是非彼にも注目してほしい。(個人的見解です…)

全体的に主題としては、少しとっ散らかった感じがしないでもないけど(セーゲルステットを英雄的存在と捉えたいのか、こういう側面があるという意外性を打ち出したかったのか、はたまた女達の戦いや彼を取り巻く時代の行く末を描きたかったのか)、個人的にはあの当時の北欧情勢をまた違う角度から垣間見ることができて、興味深かった。

何より、こんな男がいたんだと。

↑トゥルグニー・セーゲルステット本人写真。

長くかかってしまいましたが、やっと今年のEUフィルムデーズのレビューも終わりです。一本だけあまりにも寝すぎて感想書けないのがありましたが(チェコアニメの「アロイス・ネーベル」です…)、ヨーロッパ諸国の佳作ばかりが上映されるイベントです。是非見に行ける機会のある方には、行ってみてほしい…。

個人的に京都の観客層は年齢層が高く、若い人がその存在をあまり知らないのかなぁと感じているので、私のレビューをチラッとでも見て、来年行ってみたいなぁと思ってくださる方がいるととても嬉しいです。

2018年71本目。EUフィルムデーズ、京都文化博物館にて。

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