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水の中にたゆたう感じと空を飛んで下を見下ろせる感じがする映画。

仕事帰りの2本目はこちらでした。どちらかと言うと、これが見たくて仕方なかったのだ。家に帰ったら日にち変わる寸前じゃないか。大丈夫なのか?やれる。次の日も頑張る。いつもとは違った気合いの入れ具合で臨みました…。ネタバレしないように書くのは難しいけど、頑張ります。

ルイの9番目の人生

少年ルイ・ドラックスは、大変な難産の末にこの世に生を受けてから、毎年のように必ず事故にあい、そのたびに生死の境をさまよってきた。そして9歳の誕生日に崖から転落したルイは、ついに意識不明の重体になってしまう。担当医のパスカルは必死にルイを救おうとするが、両親やパスカルなど周辺の人々の身に、不可解な出来事が次々と起こり……。(映画.comより転記)

主人公のルイがこまっしゃくれていて、なんだい、コイツって子なんです。そりゃ友達いないよね、カウンセラーの先生も困っちゃうよってな具合に変に斜めから物事を見ている。ホントに9才?って言いたくなるような。

彼の目は冷めていて、寂しげでどこか遠くを見つめている。心ここに在らずで、常に何かを探し求めているように思う。親の愛情は惜しみなく受けているというのに。

彼の現実世界はすごく狭い。だけど、彼は誰よりも果てしない世界を求めて漂っているように感じる。彼のナレーションで進む物語自体が、昏睡状態に陥っている彼の魂とともに浮遊し、俯瞰しているように感じるのです。

それは、水の中で息を止めて深い所まで潜っていって、でも途中から流れに身を任せてたゆたう感じと、大空を深呼吸して飛びながら、下の世界を見下ろす感じ。うまく言えないけれど、その両極端を感じられる。

ストーリーも一筋縄ではいかなくて、おお、こうきたか、なるほどね、うんうん、という展開。伏線は限りなくあって、私は途中から何となく勘付いてしまったけれど、それでもこの映画の描く世界観はあんまり無い感じで、子供の目を通してみる少しくぐもった感じとその反対の澄んだ空気感があるなぁって。

にしてもね、男ってさって思うよね。昏睡状態にあるルイの主治医の薄っぺらさが気になって、気になって。もう最後までそう行くんかいってツッコミたくなる。もはやビョーキ。だから余計にルイの父親のラストでの姿に泣けてきて。私は彼が一度たりとも暴力的な男性には見えなくて。やっぱりねって。

色々書いてるけど、本当に大切なことは書き忘れているんじゃないかと思えるレビューだな。

この話に教訓めいたものは何一つとしてなくて、見たままに、感じるままに、映画の持つ世界観に身を任せてほしい。誰が正しいとか間違ってるとか一概には言えなくて、ルイはだから言いたいことを言葉にはせず、心に秘めたまま育ったんだなって思います。

個人的な見解ですが、カナダ映画はなかなか鋭いところに切り込んでくるものが多いです。それは英語圏のものでも、フランス語圏のものでも同様に。いわゆる本流(アメリカやフランス本国)から外れたと言ったら語弊があるけれど、面白い!と唸らせられるものはカナダ映画かなって。クサヴィエ・ドランにしてもドゥニ・ヴィルヌーヴにしてもアトム・エゴヤンにしても。

2018年9本目。大阪ステーションシティシネマにて。

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