見出し画像

マジで幸せってナニ?と思う。

世界で一番の幸せ」オーストリア🇦🇹

今までもジャンキーやらアル中の親がいる子供が主人公の映画は、幾度となく見てきているけど、ここまで母子2人の結びつきが強いのに、見えない隔たりのある関係も初めてだったかもしれない。

元気で想像力豊かな7歳のアドリアンは、母親ヘルガの献身的な愛を一身に受け、ザルツブルク郊外で幸せな生活を送っていた。実はヘルガはドラッグ中毒で、息子との生活を守るためにその事実をひた隠しにしていた。ところがある日、ドラッグディーラー、"グリーク"が彼らのアパートで不審死を遂げ、警察沙汰となってしまう。ヘルガは、最愛の息子を失わないために今度こそきっぱりとドラッグを断つ必要に迫られる。監督自らの回想にもとづく実話。(オーストリア文化フォーラムの映画紹介ページより転記、一部追記)

息子アドリアンは母ヘルガのことが大好きだ。こんなにも息子に愛されて、慕われているのに、母は何から逃げてクスリに手を出していたんだろう。クスリに手を出すことは、「逃げる」ことじゃないんだろうか。まず、そう思った。

アドリアンには継父のギュンター(籍は入れていない模様)がいて、そのギュンターやヘルガのヤク仲間達にも可愛がられている。野外キャンプみたいなシーンがあって、みーんな幸せで、アドリアンももちろん楽しそうで、でもオトナたちはそこでラリってるのだ。

夜空はあんなにも星の輝きに満ちていて、川辺で明かりを灯しながら、夜を明かす非日常的なシーンで、アドリアンは大人たちと一緒で、幸せそうなのに、当の大人たちは、それこそ別世界へ「旅立って」いる。

まぁ警察沙汰になってからは展開読めると思うけど、アドリアンとヘルガは引き離されるんです。何度もヤクを止めると言い張るヘルガは、結局その魔の手から逃れられなくて、仲間のうちの一人が「改心」したのをキッカケに、その施設に自ら飛び込んでいく。

アドリアンからしたら、母は自分から離れて行ったという失望感で一杯になるんです。彼女がそう決意するのには、アドリアンに重大な事故が起こるんだけども。そうまでしないと決意できなかった彼女は、やっぱり弱い。

監督は自分が子供の頃に抱いたあらゆる気持ちをこの作品にぶつけたと同時に(もちろん、怒りや裏切られた気持ちもあると思う)、それでもママ、僕はあの頃幸せだったんだ!と言っているかのようでした。それがこのタイトルに込められた意味なんだと。

きっと一番救われたのは母ヘルガだったんじゃないかな…。たしか映画の終わりに、彼らのその後が書かれていたと思うけど、忘れちゃった。

めっちゃくちゃスンバラシイ作品!とは思えなかったけど、この親子の愛はホンモノで、母が好きでないと作れないよねと思ったのは確かです。

親がヤクをやってるから、とカンタンに親子の間を引き裂くんじゃなくて、なんかもっとやり方はないのかな、とも思うし、でもヘルガのような親は稀有で、ほとんどのヤク中の親は自分本位で子どものことは二の次だから、自治体や警察もそういう風に対処せざるを得ないのかなとか、色々考えさせられました。まぁ彼女も十分自分本位だったけどね。

とりあえず、愛には満ちあふれていた作品。

2018年68本目。EUフィルムデーズ、京都文化博物館にて。

#映画 #cinema #シネマ #感想 #レビュー #オーストリア #世界で一番の幸せ #EUフィルムデーズ #note映画部

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?