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【cinema】金子文子と朴烈

関西で見逃して、GW中、帰省している広島で、行ったことのない映画館(横川シネマという)のスケジュールを何気なく覗いてみたら、上映している!ということで観てきた。

私はなぜか大正デモクラシーとかアナーキズムとかあの頃の主義思想にここ最近になり、関心が湧き始めた。中高生の頃に歴史で勉強しても何にも思わなかったのに、何ででしょうね。

そういえば、去年「菊とギロチン」を見てからかもしれない。アレはアレで、フィクションで、あの時代を生きた女相撲力士達とアナーキスト達が出会っていたら、というストーリーだったけど、私はアレを見て、圧倒された。感想は書けなかったけど、いい映画だったなと今でも思う。こうやって、私の中で「よかったな」という薄ぼんやりとした印象を残した映画がどんどん蓄積されていく。

で、この映画だ。金子文子と朴烈。

多分最初に惹かれたのは、朴烈役のイ・ジェフンの眼差しだったと思う。この精悍で、挑戦的な目つきの彼の生き様を知りたいと思ったのだ。

犬ころ。朴の犬ころの詩は、一瞬で金子文子の心を鷲掴みにした。私があの時代に生きていたとして、詩を読んで心を奪われるなんてこと、あるだろうか。出来るものなら奪われてみたい。そんな生き方、してみたい。映画を見ながら、そう思った。

この映画は、韓国人の監督により、ほぼ韓国人キャストで撮られている。日本国政府の面々もそうだ。朴烈や朝鮮人アナーキストの話す言葉はそのものとして、リアリティに溢れている。けれど、日本人を演じるのが日本人でないワケだから、ほんの少し、ほんの少しだけ、日本語に違和感を感じる。でも、だからなのか、台詞の一つひとつが、逆に上ずってなくて、観客である私は、何と言えばいいか、ゆっくりと咀嚼しながら見ていたように思う。

かと言って、台詞をしかと覚えているわけではないのだけど。決して、早口でもなく、わざとらしくゆっくりとでもなく、片言とも違う。でも私たち日本人が日常話す感覚とは微かにズレている感じが、とても響いたのだ。

映画の内容にあんまり関係ないですね。

見ていたら、そりゃ二人の肩を持ちたくなるよ。私は自分は右でも左でもないと思っていて、まぁそれはどっちつかずの中途半端な思想の持ち主なのかもしれないけど、おかしいもんはおかしい、正しいことは正しいと言えるようになりたい。映画を見ていたら、無茶苦茶してるのは、どう考えても当時の日本政府ですわ。天皇万歳の大義名分だけを果たすために、そこまでせねばならんのかと。

ちょうど見たのが、平成最後の…やら、令和最初の…やらの報道で溢れかえっていて、めちゃくちゃ考えさせられた。渋谷や道頓堀など全国各地でで大はしゃぎして、新元号を祝ってた方々の「平和」なことよ。

今から100年ほど前の日本では絶対的だった思想を覆そうと闘ってきた人々がいて、彼らが無茶やってきたのもわかるし、そうでもしないと誰も見向きもしなかったあの時代。そんな時代を駆け抜いた二人の男女の姿が描かれている。

思想の違いで線引きなんかしたくなくて、私は彼らの生き様に敬意を表したい。たとえ学がなくても、自ら動き、己の信ずる道を進もうと自信に満ち足りた金子文子の姿に圧倒されたし、そんな彼女をパートナーとして信頼し、共闘した朴烈は、とにかく格好良かった。

久々にnoteに感想を書きました。本当は書きたくて書きたくて、うずうずしているのに、うまく書けなくて、そんな作品が結構たまっている。でもこの映画のことは書いておきたかった。いい映画だったな、今見たことに価値があったなと心から思うから。

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